孤独死があった家の売却|価格は何割下がる?告知・特殊清掃・相続放棄の順番

孤独死があった家の売却|特殊清掃・告知・価格への影響と進め方

この記事の要点

  • 孤独死があった家も売却できるが、相続放棄をするかどうかを家財の処分や片付けより先に決める必要がある
  • 国土交通省のガイドラインでは、自然死は原則として告知不要だが、特殊清掃や大規模リフォームをした場合は告知の対象になる
  • ガイドラインの「概ね3年で告知不要」は賃貸取引の目安で、売買には同様の期間の目安は示されていない
  • 業界団体が国の検討会に示した実務例では、中古マンションで発見までに日数を要した自然死は10%程度の減額とされている

こんな方に読んでほしい記事です

  • 一人暮らしの親や親族が自宅で亡くなり、発見までに日数がたっていた
  • 特殊清掃が必要と言われたが、片付けと売却、相続放棄の順番が分からない
  • 価格がどのくらい下がるのか、買主に何をどこまで伝えるのか知りたい

孤独死があった家も売却できます。売却までの段取りで気をつけたいのは、相続放棄をするかどうかを片付けより先に決めることと、特殊清掃をしたかどうかで買主への告知の必要性が変わることの2点です。

国土交通省のガイドラインでは、自宅での自然死は原則として告知しなくてよいとされています。ただし、発見が遅れて特殊清掃(体液や臭いを取り除く専門の清掃)や大がかりなリフォームが必要になった場合は、告知の対象になります。価格への影響は、業界団体が国の検討会に示した資料で「発見までに日数を要した自然死で10%程度の減額」という実務の例があります。この記事では、発見直後から売却の契約までを5つのステップに分けて、順番に説明します。

孤独死の家、仲介と買取どちらが向く?
図解:孤独死の家、仲介と買取どちらが向く?タップで拡大

自宅で亡くなる一人暮らしの方は年間7万人を超える

警察庁の資料によると、令和6年に警察が取り扱った遺体のうち、自宅で亡くなった一人暮らしの方は76,020人でした。そのうち65歳以上が58,044人と、約4分の3を占めています。

死亡から発見までの日数(令和6年)

0〜1日28,756人
2〜3日15,421人
4〜7日9,987人
8〜14日7,515人
15〜30日7,396人
31日以上6,945人

※警察庁「警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者(令和6年)」をもとに作成。31日以上は31〜90日、91〜180日、181〜365日、366日以上の合計です。

死亡から8日以上たって見つかった方は、合わせて21,856人います。季節や部屋の状況にもよりますが、日数がたつほど床や壁に汚れや臭いが残りやすく、特殊清掃が必要になる場面が増えます。決して珍しいことではなく、同じ悩みを抱える家族は毎年数多くいるということです。

孤独死があった家を売るまでの全体の流れ

孤独死の後は、警察や役所の手続き、相続の判断、清掃、売却と、性質の違う手続きが一度に押し寄せます。先に全体の順番を見ておくと、どこで誰に相談すればよいかが分かりやすくなります。

発見から売却までの流れ

  1. 警察の確認・死亡届死亡届は死亡を知った日から7日以内
  2. 相続放棄をするか決める原則として3か月以内。片付けより先に
  3. 特殊清掃・遺品整理どこまでやるかは売り方と合わせて決める
  4. 告知する内容を整理時期・場所・死因・特殊清掃の有無
  5. 売り方を決めて契約相続登記を済ませ、告知書に正確に書く

※相続人の人数や遺言の有無によって、順番が前後することがあります。

ステップ1:発見直後は、警察の確認と相続人の確認から

自宅で亡くなっているのが見つかった場合、医師に看取られた死亡でなければ、警察が死亡の状況を確認します。この間、部屋に入れないことや、遺体の引き取りまで日数がかかることもあります。

死亡届は、戸籍法により、死亡の事実を知った日から7日以内に、医師の死亡診断書または死体検案書を添えて提出します。葬儀社が提出を代行してくれることも多いので、まずは葬儀の段取りと並行して進めてください。

遠方に住んでいる場合は、警察から連絡を受けて初めて事態を知ることも少なくありません。家の鍵を誰が預かっているのか、部屋の状況を誰が確認したのかを、この段階でメモに残しておいてください。後で告知の内容を整理するときに、発見の日や状況を確かめる手がかりになります。

あわせて確認したいのが、誰が相続人になるかです。子どもがいない方や、親族と長く疎遠だった方の場合、兄弟姉妹や甥・姪が相続人になることもあります。相続人が誰か分からないままでは、家の売却も清掃の発注も決められません。

ステップ2:片付けの前に、相続放棄をするか決める

孤独死の家で特に気をつけたいのが、このステップです。亡くなった方に借金があるかもしれない場合や、家の価値より負担の方が大きそうな場合は、相続放棄(相続人としての権利も義務も引き継がない手続き)を考えることになります。

相続放棄は、原則として自分が相続人になったことを知った日から3か月以内に、家庭裁判所に申し立てます。財産の調査に時間がかかるときは、家庭裁判所に期間を延ばしてもらう手続きもあります。

片付けてよいこと、待つべきこと

民法921条では、相続人が相続財産の全部または一部を「処分」したときは、相続を承認したものとみなされます。ただし、財産の価値を保つための「保存行為」は例外とされています。

実務上の目安として、臭いや害虫が広がらないようにする応急的な対応、窓や鍵の戸締まり、腐る食品の廃棄などは、保存のための行為と考えられることが多いものです。一方で、家財を売る、まとめて捨てる、価値のある遺品を持ち帰るといった行為は「処分」とみなされるおそれがあります。

放棄を迷っているうちは、処分を急がない
どこまでが保存行為に当たるかは、物の価値や状況で判断が分かれます。相続放棄の可能性があるなら、清掃業者や遺品整理業者を呼ぶ前に弁護士や司法書士に相談してください。費用を誰の財布から払うかも、判断に影響することがあります。

なお、2023年4月の民法改正で、相続放棄をした人の管理の責任は、放棄の時点でその家を現に占有している場合に限られることが明確になりました。離れて暮らしていた子が放棄した場合と、同居していた家族が放棄した場合とでは、扱いが異なることになります。

相続人全員が放棄したら、家はどうなるか

相続人が全員放棄すると、家を引き継ぐ人がいなくなります。この場合は、債権者などの利害関係人の申立てにより、家庭裁判所が「相続財産清算人」を選び、その人が家の管理や売却、債務の清算を進めます。

放棄すれば家のことから完全に離れられるとは限らない点と、清算人の選任にも費用と時間がかかる点は、知っておいた方がよいでしょう。家に一定の価値がある場合は、相続して売却した方が、結果として手元にお金が残ることもあります。

相続して売る方向に決まったら、建物と土地の相続登記を進めます。相続登記は2024年4月から義務になっており、売却の契約や決済の前に名義を相続人に移しておく必要があります。

ステップ3:特殊清掃と遺品整理は、売り方と合わせて決める

発見までに日数がたっていた場合、床や壁、場合によっては床下まで汚れや臭いが残ります。特殊清掃は、こうした汚れと臭いを取り除く作業です。費用と工期は、部屋の広さや汚れの範囲、季節によって大きく変わり、床材や下地の交換まで必要になると膨らみます。

清掃業者に頼むときに確かめたいこと

見積もりを取るときは、金額だけでなく作業の範囲を確かめます。汚れた床材をどこまで剥がすのか、消臭はどんな方法で何日かけるのか、家財の搬出は含まれるのか、といった点です。範囲があいまいなまま頼むと、後から追加の費用が出てくることがあります。

作業後には、作業の内容と範囲が分かる報告書や、作業前後の写真をもらっておくことをおすすめします。売却のときに買主へ「どこを、どのように直したか」を説明する根拠になり、告知書を書くときにも役立ちます。

加入している火災保険や家財の保険に、汚損や清掃費用を補償する特約が付いていることもあります。補償の範囲は保険会社や契約によって違うため、清掃を頼む前に保険証券を確認し、保険会社に問い合わせてみてください。

どこまで手を入れてから売るか

きれいにリフォームしてから仲介で売る方法もあれば、清掃だけして現状のまま売る方法、清掃前の段階で買取業者に相談する方法もあります。

どこまで手を入れて売るか

リフォーム後に仲介 清掃のみで売る 清掃前に買取相談
先に出るお金 清掃+改装費 清掃費 相談先と調整
売主の手間 業者手配が多い 清掃の手配のみ 少ない
売れるまで 長くなりやすい 買主次第 早く決まりやすい
向いている家 立地がよく築浅 汚損が一部屋のみ 遠方・古家・荷物多

※一般的な傾向です。清掃前でも臭いや衛生面の対策が必要な場合があります。

リフォームまで済ませれば見た目は整いますが、告知が必要な事実は消えません。改装費をかけても、その分が売却価格に上乗せされるとは限らない点は押さえておきたいところです。

マンションの場合に追加で確認すること

マンションの場合は、管理会社や管理組合への連絡も早めに行います。体液が床下に染みると、下の階の天井や共用の配管に影響が出ることがあります。売却前に確かめておかないと、売却後に問題が見つかって話がこじれるおそれがあります。

また、管理会社が事実を把握している場合、買主側の不動産会社が管理会社に問い合わせることもあります。国交省のガイドラインでも、管理業者から提供される情報の範囲は、管理委託契約や管理規約で決まると説明されています。隠しておけると考えず、最初から正確に伝える前提で進める方が安全です。

ステップ4:告知が必要な範囲を、国交省ガイドラインで整理する

国土交通省は2021年10月に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました。不動産会社が取引の相手に、過去の人の死をどこまで伝えるかの目安を示したものです。孤独死に関わる部分を整理すると、次のようになります。

自然死や家の中の事故死で、特殊清掃や大規模リフォームはしていない?

YES原則として告知しなくてよい。ただし買主から聞かれたら事実を答える
NO(特殊清掃などをした)告知の対象。発覚した時期・場所・死因・特殊清掃をした旨を伝える

ガイドラインの判断の軸は「死後何日で見つかったか」ではなく、「長期間放置されたことなどで特殊清掃や大規模リフォームが行われたか」です。日数だけで線を引くことはできないので、清掃の有無と範囲を正確に把握しておくことが出発点になります。

「3年たてば告知不要」は売買には当てはまらない

ガイドラインには、事案の発覚から概ね3年がたてば原則として告げなくてよいという目安もありますが、これは賃貸の取引についての考え方です。売買については同じような期間の目安は示されていないため、「3年たったから言わなくてよい」とは考えないでください。

また、隣の住戸や、ふだん使わない共用部分で起きた死については、売買でも原則として告げなくてよいとされています。反対に、買主から尋ねられた場合や、社会的な影響が大きく買主が把握しておくべき特別な事情がある場合は、伝える必要があります。

建物を解体して更地で売る場合

「建物を取り壊せば告知はいらない」と書く記事もありますが、ガイドラインは、人の死が生じた建物が取り壊された場合の土地取引の扱いを、現時点では対象としていないと明記しています。つまり、国の基準ではどちらとも決まっていません。

業界団体が国の検討会に示した資料でも、事件・事故があった建物を取り壊した土地の売買について、価格に反映させているものの、減額の幅は建物が残っている場合より小さいという実務の例が紹介されています。解体すれば影響は小さくなりやすい一方で、伝えずに売ってよいとまでは言えないため、事実は伝えておく方が安全です。

売主として押さえておきたいこと

このガイドラインは不動産会社の対応の目安を示したもので、売主個人の責任をすべて決めるものではありません。不動産会社は売主に告知書への記入を求めることで調査を行うため、売主が事実を書かなければ、買主には伝わりません。買主が買取業者の場合でも、知っている事実は同じように伝えておくことが、契約後のトラブルを防ぐ一番の近道です。

告知する場合も、亡くなった方の氏名や年齢、家族構成、発見時の具体的な状況まで伝える必要はありません。ガイドラインでも、亡くなった方や遺族の名誉と生活の平穏に十分配慮するよう求めています。

孤独死があった家の価格は、どのくらい下がるか

孤独死が価格にどう響くかについて、公的に決まった基準はありません。参考になるのは、国交省の検討会で全日本不動産協会の理事が示した、業界の実務の例です(2020年2月)。中古マンションの売買では、自然死で発見までに日数を要した場合に「10%程度減額」とされています。

同じ資料では、自殺は30%程度、発見までに日数を要した自殺は50%程度、殺人など深刻な事件は50%程度の減額が例として挙げられています。孤独死でも、自然死か、自殺など別の死因かで影響が大きく変わることが分かります。

民間の不動産会社のサイトでは「1〜3割程度下がる」といった目安もよく見かけますが、出典が示されていないものも少なくありません。数字は一つの目安として受け止め、物件ごとに査定を受けて比べてください。

価格を左右する4つの要素

1つ目は、発見までの期間と汚れの範囲です。特殊清掃が一部屋で済んだのか、床下や隣の部屋まで及んだのかで、買主の受け止め方は変わります。2つ目は、清掃や改装でどこまで回復しているかで、作業報告書があると説明がしやすくなります。

3つ目は、建物を使い続けるか、土地として売るかです。駅に近く土地としての需要が高い場所では、建物を取り壊して土地として売る前提になり、影響が小さく収まることもあります。4つ目は、立地や築年数など物件そのものの条件で、もともと需要の強い物件ほど、心理的な抵抗があっても買い手は見つかりやすくなります。

ステップ5:売り方を決め、告知書には分かる範囲で正確に書く

売却の契約では、売主が知っている物件の状態を「告知書(物件状況等報告書)」に書きます。孤独死の事実を伏せて売り、後から買主が知った場合、契約の解除や損害賠償を求められるおそれがあります。分かることは正確に、分からないことは「不明」と書くのが基本です。

告知書を書く前に、次の情報を手元にそろえておくと、不動産会社とのやり取りがスムーズになります。

  • 亡くなっているのが見つかった日(分かる範囲で亡くなった時期)
  • 亡くなった場所(どの部屋か、浴室か、など)
  • 死因(警察などから聞いた内容。不明ならその旨)
  • 特殊清掃やリフォームをした範囲と、業者の作業報告書

どの売り方を選ぶかは、ステップ3の表と合わせて考えます。仲介で一般の買主を探すと、告知の内容を気にして検討から外れる人もいるため、売れるまでに時間がかかる傾向があります。訳アリ物件を扱う買取業者なら、告知の内容を前提に価格を出すため、契約後のトラブルを避けやすくなります。売却全体の段取りは訳アリ物件の売却の流れにまとめています。

清掃が済んでいない家も、まずは状況をお聞かせください
MAIVERSEでは宅地建物取引士が直接ご相談に対応し、相続放棄や相続登記の判断が必要な場面では弁護士・司法書士・税理士と連携します。相続した空き家の売却では、遺産分割協議から相続登記・売却完了までの手続き費用を当社が全額負担しています。江東区大島7丁目では、ゴミ屋敷状態の再建築不可戸建を買い取りました。

孤独死の家の売却で、急がなくてよいことと急ぐべきこと

身内が孤独死したという事実だけでもつらいなか、家のことまで一度に決めるのは大変です。順番を整理すると、急ぐべきことはそれほど多くありません。

急ぐべきなのは、死亡届の提出と、相続放棄をするかどうかの判断です。どちらも期限があり、後から取り返しがつきにくい手続きです。臭いや衛生面で近隣に影響が出ている場合の応急的な対応も、早めに専門家と相談して進めてください。

清掃や片付けで人の出入りが増える前に、両隣や管理会社に一言伝えておくことも、早めにしておきたいことの一つです。事情を細かく話す必要はなく、「しばらく作業でご迷惑をおかけします」と伝えるだけでも受け止め方は変わります。

反対に、リフォームの発注や家財の処分、売却先の決定は急がなくて構いません。相続の方向性が決まってから、複数の売り方を比べて決めても遅くはありません。相続人が複数いて話し合いが進みにくいときは、相続トラブルのリスク診断で状況を整理してみるのも一つの方法です。

家の状態を見せるのがつらい、遠方で何度も足を運べないといった事情も含めて、訳アリ物件の無料相談会でご相談いただけます。

参考資料(2026年10月確認)

よくある質問

Q死後何日で見つかると、告知が必要になりますか?
A国交省のガイドラインは日数で線を引いておらず、長期間放置されたことなどで特殊清掃や大規模リフォームが行われたかどうかで判断します。発見が早く特殊清掃をしていなくても、買主から聞かれた場合は事実を答える必要があります。
Q売却から何年たてば、孤独死を伝えなくてよくなりますか?
Aガイドラインの「概ね3年」は賃貸の取引の目安で、売買には期間の目安が示されていません。年数がたっても、特殊清掃などを行った事実は伝えておく方が安全です。
Q特殊清掃の費用は誰が払うのですか?
A持ち家の場合は、家を相続する相続人が負担するのが一般的です。相続放棄を考えている場合は、費用の支払いや業者への依頼が相続の承認とみなされないか、事前に弁護士や司法書士に確認してください。
Q孤独死を伝えずに売ったら、どうなりますか?
A後から買主が事実を知った場合、契約の解除や損害賠償を求められるおそれがあります。分かっている事実は告知書に正確に書き、不明な点は不明と書いておくことがトラブルを防ぐ基本です。
Q臭いが残ったままでも買い取ってもらえますか?
A訳アリ物件を扱う買取業者であれば、臭いが残った状態でも相談できることがあります。近隣への影響が出ている場合は、売却の相談と並行して応急的な消臭や換気の対応を検討してください。
Q賃貸に出していた部屋で入居者が孤独死しました。売却に影響しますか?
Aオーナーとして所有する部屋を売る場合も、同じガイドラインの考え方で告知の要否を判断します。特殊清掃をした場合は告知の対象になるため、清掃の記録や入居者の保証会社とのやり取りを残しておいてください。

監修

三好 舞代表取締役/宅地建物取引士

株式会社MAIVERSE代表取締役。宅地建物取引士。中央区・墨田区・江戸川区・台東区・江東区の城東エリアで空き家・訳アリ物件の買取に携わり、再建築不可・借地権・相続空き家などのご相談に直接対応している。弁護士・司法書士・税理士と連携し、相続不動産の売却をワンストップで支援。