築古マンションの修繕積立金不足|一時金の前に売る判断と中央区の確認先

築古マンションの修繕積立金不足|一時金の前に売る判断と中央区の確認先

この記事の要点

  • 修繕積立金が計画より不足しているマンションは36.6%(国土交通省・令和5年度調査)で、築古ほど値上げや一時金への合意が難しくなりやすい
  • 一時金の予定は議案書・議事録・管理会社の資料を通じて買主側にも伝わるため、「通知前に売れば負担を避けられる」とは限らず、値引き幅と契約上の負担者で手取りが決まる
  • 売る前には、長期修繕計画、積立金の残高、総会議事録、借入、滞納、修繕履歴の6点を管理組合の書類で確認する
  • 中央区には計画修繕調査費助成(築8年以上、費用の3分の1)やマンション管理士の無料派遣(年度内5回まで)があり、2026年4月施行の改正区分所有法で建替え決議の要件も一部緩和された

こんな方に読んでほしい記事です

  • 築40年前後の中央区のマンションを持っていて、修繕積立金の値上げや一時金の話が出ている(出そうだ)
  • 一時金が決まる前に売るべきか、決まってからでも売れるのかを、手取りで考えたい
  • 管理組合に何を聞けばよいか、中央区で使える相談先や制度を知りたい

築古マンションの修繕積立金が足りないとき、一時金の通知が届く前に売れば得になるとは限りません。買主側の不動産会社は管理組合の書類を読み、予定されている一時金や値上げを前提に価格の話をするため、「知られないうちに売る」ことは現実にはできないからです。差がつくのは、書類を先に読み、一時金の額を自分で見積もり、売る場合と持つ場合を手取りで比べたかどうかです。

この記事では、築40年前後の中央区のマンションを念頭に、管理組合の書類で確認すること、売る時期ごとの違い、手取りの計算例、区が用意している相談の制度を順に整理します。マンション売却そのもののご相談は、中央区のマンション売却のご相談はこちらからお受けしています。

積立金不足、売る前に見る4点
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築古マンションの修繕積立金が足りなくなる仕組み

国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」では、計画上の積立額に対して現在の積立額が不足しているマンションが36.6%で、前回の平成30年度調査より1.8ポイント増えました。長期修繕計画(将来の修繕工事の時期と費用を見積もった計画)に基づいて積立金を決めているのは59.8%です。計画があっても足りなくなることがあり、不足は特別な管理組合だけの話ではありません。

築年数が進むと、状況は厳しくなりやすくなります。同じ調査で、1984年以前に完成したマンションは世帯主が70歳以上の割合が55.9%で、全体の25.9%を大きく上回りました。年金収入で暮らす住民が増えると、積立金の値上げや一時金への合意が取りにくくなり、工事を先送りするうちに劣化が進んで費用がさらに膨らむ、という流れに入りやすくなります。

分譲当初の積立金が低く設定されている

分譲当初は購入者の負担を抑えるため、積立金を低く始めて段階的に上げる「段階増額積立方式」を採ったマンションが多くあります。上げ幅が計画どおりに決まらなかったり、工事費が見積もりより上がったりすると、築30〜40年の時点で不足が表に出てきます。

国土交通省は2024年6月にガイドラインを改定し、段階増額方式でも、均等に積み立てた場合の月額を基準に、初期額は0.6倍以上、最終額は1.1倍以内を目安として示しました。あわせて、将来にわたって安定した積立てを確保するには均等積立方式が望ましいとしています。築古マンションでは、この目安から外れた計画がそのまま残っていないかが見どころです。

一時金は、足りない分を組合員が後から払う仕組み

一時金は、工事費に対して積立金の残高が足りないときに、組合員から追加で集めるお金です。金融機関からの借入で賄う方法もありますが、借入の返済は将来の積立金から払うことになり、毎月の負担が長く続きます。国のガイドラインも、一時金や借入を前提にする方式は将来の負担増を前提にしているため、注意が必要としています。

一時金が決まるまでの流れと、売るタイミングの3つの区切り

一時金は、ある日突然決まるわけではありません。計画の見直しから徴収まで、おおまかには次の順に進みます。

一時金が決まるまでの流れ

  1. 長期修繕計画の見直し工事費と積立残高を再計算する
  2. 見積もりと理事会の検討不足額と1戸あたりの額が見えてくる
  3. 総会の議案書が届く一時金や値上げの案が組合員に示される
  4. 総会で決議額と徴収の時期が決まる
  5. 徴収・工事納付期限までに各戸が支払う

※一般的な流れです。管理組合ごとに順序や期間は異なります。

売主から見ると、この流れのどこにいるかで選べることが変わります。区切りは、①計画の見直し・検討中、②議案書が出てから決議まで、③決議後から徴収までの3つです。

①の段階では、買主側が目にする資料に一時金の記載はまだありません。ただし、長期修繕計画には次の大規模修繕の時期と費用が載っているため、計画を読める買主や不動産会社には、数年内の負担の見込みが分かります。

②と③の段階になると、議案書や総会議事録に金額が書かれ、管理会社が作る資料にも反映されます。この時点で売る場合は、一時金を誰が負担するのかを契約で決めることになり、価格交渉の中心もそこに移ります。

売る前に管理組合の書類で確かめる6つのこと

区分所有者は、管理規約や総会の議事録の閲覧を求められます。管理会社に頼むか、理事長(理事会)を通じて、次の6つを見せてもらってください。

1. 長期修繕計画の作成時期と、次の大規模修繕の年

計画がいつ作られ、いつ見直されたかを確認します。国の管理計画認定制度では、7年以内に作成または見直しがされていることが基準の一つで、これより古い計画は工事費が実態に合っていない場合があります。次の大規模修繕の年と、その総額も控えておきます。

2. 修繕積立金の残高と、直近の収支報告

次の工事の見積額に対して、残高がいくら足りないかを確かめます。不足額を戸数で割れば、1戸あたりの一時金の目安が見えてきます。専有面積に応じた配分の場合は、自分の持分で計算し直してください。

3. 過去3〜5年分の総会議事録

議事録には、値上げや一時金が議題に出たか、反対意見が多かったか、工事が先送りになっていないかが残っています。「検討を続ける」とだけ書かれた議題が毎年続いている場合は、負担が先送りされている可能性があります。

4. 借入の有無と返済の予定

過去の工事で借入をしている場合、その返済が積立金から続いています。残りの返済期間と年間の返済額が分かれば、積立金が実質的にいくら工事に回せているかが見えてきます。

5. 滞納の状況

管理費や修繕積立金の滞納が多いと、計画どおりの工事ができなくなり、ほかの組合員に追加の負担が回ってくることがあります。滞納に適切に対処されているかは、国の認定基準にも挙がっている項目です。

6. 修繕の履歴と、耐震診断・建て替え検討の有無

外壁、屋上防水、給排水管などの工事がいつ行われたかが分かる履歴を確認します。昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた旧耐震のマンションなら、耐震診断をしたか、建て替えや改修の検討が始まっているかも、将来の負担を左右します。

書類が出てこないときは
理事会が書類を整理していない、管理会社が古い資料しか持っていない、といった状況そのものが、管理の水準を知る手がかりになります。買主側も同じ質問をするため、売る前に分かる範囲で整理しておくと、価格の話が具体的になります。

一時金の前に売るのと後に売るのは、手取りでどう違うか

数字で見ないと、判断がつきにくい論点です。次の仮定で、今後3年間に「追加で出ていくお金」を比べてみます。

仮定は、専有面積55㎡で売却希望価格3,000万円、現在の修繕積立金は月9,000円です。管理組合は2年後の総会で、1戸あたり120万円の一時金と、積立金を月14,000円に上げる案を出す見込みとします。いずれも説明のための数字で、実際の額は管理組合ごとに大きく異なります。

3年間の追加負担の計算例

売らずに3年持つ約132万円
決議前に売る(値引き半額)約60万円
決議後に売る(売主負担)約120万円

※仮定の数字です。値引き額・負担者は買主との交渉と契約で決まります。譲渡所得税・仲介手数料は含めていません。

売らずに持つ場合は、一時金120万円に、積立金の値上げ分(月5,000円×12か月×2年=12万円)を足した約132万円が、3年間の追加負担です。決議前に売る場合は、買主が一時金の予定を見込んで価格交渉をするため、仮に一時金の半分を値引きしたとして、約60万円の負担相当になります。

決議後に売る場合は、一時金を売主が負担する契約なら約120万円、買主が負担する契約なら、その分の値引きを求められるのが一般的です。つまり、決議前に売れば必ず軽くなるのではなく、値引きの幅がどこまで膨らむかで結果が変わります。

持ち続けた場合の見方
一時金を払って工事が終われば、建物の状態が良くなり、次の売却のときに有利に働くこともあります。また、すでに納めた修繕積立金は、多くの管理規約では売却しても返還されません。単純な損得ではなく、自分が何年住むか、工事後に売り直す余裕があるかを合わせて考えてください。

買主に何が伝わるか:重要事項説明と、契約での一時金の扱い

中古マンションの売買では、宅地建物取引業法35条と同法施行規則16条の2に基づき、買主への重要事項説明で、修繕積立金に関する規約の定めと既に積み立てられた額、管理費の額、滞納額などを説明します。これらの資料は、管理会社が作る「重要事項調査報告書」から取り寄せるのが通常で、発行費用は1通あたり数千円から2万円程度が目安とされています。

議案書や総会議事録に一時金の記載があれば、買主側の不動産会社はそこを読みます。決議前の検討段階であっても、売主が知っている事情を伝えずに売ると、あとで争いになるおそれがあります。民法572条では、免責の特約があっても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れないとされています。

売る時期ごとの違い

議案書の前 議案書〜決議 決議後
買主側の情報 計画から読み取る 議案書に金額がある 議事録で確定している
一時金の負担 交渉で決まる 契約で取り決める 契約で取り決める
価格への影響 見込みで値引き 金額分の値引き 金額分の値引き

※一般的な傾向です。管理規約と売買契約の内容で変わります。

契約書では、一時金の負担者を「総会の決議日」「納付期限」「引渡し日」のどれを基準に決めるのかを書面に残します。基準があいまいだと、引渡しの前後に決議や徴収が重なったとき、どちらが払うのかで揉めます。

滞納がある場合は、区分所有法8条により、管理組合は売主の滞納分を買主にも請求できます。そのため、引渡しまでに滞納を精算しておくのが通常です。買主が払ったあとで売主に求償することも可能ですが、手間とトラブルを避けるには売主側で先に清算しておく方が安全です。

中央区で使える区の制度と、2026年4月に変わった区分所有法

修繕積立金の問題は、個人の売却判断だけでなく、管理組合としてどう立て直すかにもつながります。中央区は、管理組合向けの支援を区のサイトにまとめています。区の制度は年度で内容が変わることがあるため、申請の前に必ず区の窓口で最新の条件を確かめてください。

管理状況の届出と、区の助言

東京都の条例により、昭和58年12月31日以前に新築された6戸以上のマンションは、管理状況を届け出る必要があります。中央区の案内では、届出の内容に応じて、区が助言や情報提供、必要に応じた個別訪問を行うとされています。築40年を超える中央区のマンションは、この対象かどうかを管理組合に確かめられます。

計画修繕調査費の助成・アドバイザー・管理士派遣

区のサイトには、築8年以上の分譲マンションを対象にした「計画修繕調査費助成」があります。建物の防水・外壁・鉄部の調査は、費用の3分の1(千円未満切り捨て)が助成され、上限は住戸数に応じて25万円・36万円・47万円です。給排水管の調査は上限16万円で、どちらも10年に1回までです。

ほかに、区内の管理組合なら同一年度に5回まで無料でマンション管理士の派遣を受けられる制度があります。築30年程度以上のマンションが建て替えと改修の比較検討書を作る場合は、東京都防災・建築まちづくりセンターの料金を全額助成する「アドバイザー制度利用助成」もあります。これらは管理組合が申し込む制度のため、区分所有者としては、理事会に活用を提案する形になります。

管理計画認定制度と、区の推進計画

国の管理計画認定制度では、長期修繕計画が総会で決議されていること、計画期間が30年以上であること、「将来の一時金の徴収を予定していない」ことなどが基準になっています。一時金に頼らない計画に作り直すことは、認定の基準に合わせて積立金を見直す動機にもなります。申請は区の窓口ではなく、マンション管理センターのオンラインの支援サービスを通じて行います。

中央区マンション管理適正化推進計画(令和5年度から令和10年度)では、令和6年度から分譲マンションの実態調査を順次行い、基準に満たない管理組合へ助言や指導をする予定とされています。区が管理状況に目を向けていることは、買主側の見方にも影響する可能性があります。

2026年4月施行の区分所有法改正で、何が変わったか

法務省民事局によると、改正区分所有法は2026年(令和8年)4月1日に施行されました。建替え決議は原則として区分所有者と議決権の各5分の4以上のままですが、耐震性や火災安全性が足りない、外壁などが剥落するおそれがある、給排水管の腐食で衛生上有害なおそれがある、バリアフリー基準に合わない、といった客観的な事由がある建物は、4分の3以上に緩和されました。

あわせて、建物を一棟まとめてリノベーションする決議、建物と敷地を一括で売る決議、建物を壊して敷地を売る決議、取り壊しだけの決議といった、建替え以外の再生の選択肢が新設されています。原則の多数決は建替えと同程度です。また、決議は原則として出席者の多数決で成立するようになり、所在が分からない所有者は、裁判所の手続きを経て決議の母数から外せるようになりました。

売主にとって大切なのは、これで積立金の値上げや一時金の決議が以前より通りやすくなる可能性があることです。決議が早まれば、金額が確定する時期も早まるかもしれません。なお、中央区の案内では、区内でマンション敷地売却組合の設立が認可された例が1件あり、2023年(令和5年)に解散認可されています。現在事業中の組合はありません(2026年8月掲載の区のページによる)。築古マンションの「出口」は制度上は増えましたが、実際に決議に至るまでには年単位の時間がかかります。

一時金の通知が届く前に、今月のうちに頼んでおく3つの書類

売るか持つかを決めるのは、書類がそろってからで間に合います。ただ、書類の取り寄せには数日から数週間かかることもあるため、通知が届く前に動いておくと、選べる時期が広がります。

1つ目は、最新の長期修繕計画と、直近の収支報告書です。理事長か管理会社に、閲覧を依頼します。2つ目は、直近3年分の総会議事録です。値上げや一時金の議論の経過が分かります。3つ目は、不動産会社の査定のときに、管理会社の「重要事項調査報告書」を取り寄せてもらうことです。査定額の根拠が、管理の状態まで含めたものになります。

長期修繕計画か総会の議案書に、一時金や大きな値上げの予定が載っている?

YES一時金の額を1戸あたりで見積もり、売る場合と持つ場合の手取りを並べて比べる
NO計画が7年以上見直されていなければ、見直しの予定と時期を理事会に確認する

売却の準備全体の進め方は、売却前の準備のページにまとめています。仲介で売る場合と買取の違いを確かめたい方は、買取の流れのページもあわせてご覧ください。

管理状況が気がかりな築古マンションのご相談
MAIVERSEは東日本橋に事務所がある、中央区・墨田区・江戸川区・台東区・江東区の城東エリアに特化した買取会社です。宅地建物取引士が直接ご相談に対応し、弁護士・司法書士・税理士とも連携しています。管理組合の資料をお手元にお持ちいただければ、仲介で売る場合と買い取りの場合の手取りを並べて整理します。東日本橋・馬喰町エリアの売却相談はこちら

参考資料(2026年10月確認)

よくある質問

Q修繕積立金の滞納がある部屋は、そのままでは売れませんか?
A売ること自体はできますが、区分所有法8条により滞納分は買主にも請求され得るため、引渡しまでに精算するのが通常です。売却代金から差し引いて決済で精算する方法が一般的で、金額は管理会社の資料で確認できます。
Qすでに払った修繕積立金は、売るときに戻ってきますか?
A多くの管理規約では、納めた積立金は管理組合が解散しない限り返還されません。積立金は管理組合に残って次の所有者に引き継がれる扱いが一般的です。個別の規約に別の定めがないか、規約の写しで確認してください。
Q一時金の決議がまだなのに、不動産会社には伝えるべきですか?
A理事会で見積もりや議案が検討されていることを知っているなら、伝えておくのが安全です。民法572条では、売主が知りながら告げなかった事実は、免責の特約があっても責任を免れないとされています。
Q管理組合に長期修繕計画がない場合、売却に影響しますか?
A買主側が将来の負担を見通せないため、価格交渉や住宅ローンの審査で慎重に見られる傾向があります。計画がなくても売却はできますが、管理会社に確認し、理事会に作成の予定があるかを聞いておくと説明しやすくなります。
Q管理組合の理事に頼まず、一人で調べることはできますか?
A区分所有者であれば、管理規約や総会の議事録の閲覧を求められます。管理会社に直接問い合わせる方法のほか、不動産会社に査定を頼む際に管理会社から重要事項調査報告書を取り寄せてもらう方法もあります。
Q築年数がもっと古いマンションでも、中央区の助成は使えますか?
A計画修繕調査費助成は築8年以上の分譲マンションが対象で、築年数が古いこと自体は支障になりません。ただし、助成は管理組合が申請する制度で、年度ごとに条件や額が変わることがあるため、中央区都市整備公社などの窓口で最新の内容を確認してください。

監修

三好 舞代表取締役/宅地建物取引士

株式会社MAIVERSE代表取締役。宅地建物取引士。中央区・墨田区・江戸川区・台東区・江東区の城東エリアで空き家・訳アリ物件の買取に携わり、再建築不可・借地権・相続空き家などのご相談に直接対応している。弁護士・司法書士・税理士と連携し、相続不動産の売却をワンストップで支援。