ハザードマップの浸水想定区域でも家は売れる?重要事項説明と売る前の確認

この記事の要点
- 2020年8月28日から、不動産の売買・賃貸の重要事項説明で、水害ハザードマップ上の物件の位置を示すことが義務になった
- 対象は市区町村が作る洪水・雨水出水(内水)・高潮の3種類で、区域外の物件でも位置を説明する
- 浸水想定区域の家の値下がり幅に公的な基準はなく、想定される浸水の深さ・期間と過去の被害の有無で受け止め方が変わる
- 過去の浸水を知りながら告げなかった場合、契約不適合責任の免責特約があっても売主は責任を免れない(民法572条)
こんな方に読んでほしい記事です
- 売りたい家が、区のハザードマップで浸水が想定される区域に入っている
- 重要事項説明でハザードマップを説明すると、値下げされるのではと心配している
- 過去に床下浸水などがあり、どこまで買主に伝えるべきか迷っている
ハザードマップの浸水想定区域に入っている家も売ることはできます。2020年8月28日から、不動産の売買では水害ハザードマップでの物件の位置を説明することが義務になりましたが、区域に入っていることを理由に取引ができなくなるわけではありません。価格への影響は、区域に入っているかどうかよりも、想定される浸水の深さや続く期間、過去に実際に浸水したか、建物がどこまで備えているかで変わります。
この記事では、売る前に売主が確かめておきたいことを、ハザードマップの見方、過去の浸水の伝え方、建物の状態、売り方の選び方の順に整理し、最後にチェックリストにまとめます。

ハザードマップの区域だと、売却で何が変わるのか
宅地建物取引業法施行規則の改正で、2020年8月28日から、不動産会社は売買や賃貸の契約の前に行う重要事項説明(契約の前に宅地建物取引士が物件の大事な情報を説明する手続き)で、水害ハザードマップ上の物件の位置を示すことが義務になりました。対象は、水防法に基づいて市区町村が作る洪水・雨水出水(内水)・高潮の3種類のハザードマップです。
国土交通省は、物件が浸水想定区域の外にあっても、「区域外だから水害の心配はない」と買主が誤解しないよう配慮することを求めています。つまり、区域に入っている家だけが特別扱いされるのではなく、すべての取引でハザードマップが示されるようになったということです。土砂災害警戒区域や津波災害警戒区域に入っているかどうかも、以前から説明する事項になっています。
売主の側から見ると、「区域に入っていることを隠して売る」ことはもうできません。逆に言えば、買主はハザードマップを見たうえで買うかどうかを決めるので、売主が先に情報を整理しておけば、説明の場で慌てずに済みます。
価格への影響は、何で決まるのか
浸水想定区域の家がどのくらい安くなるかについて、国や公的機関が示した一律の基準はありません。業界の解説では「区域に入っているだけでは大きくは下がらず、実際に浸水した物件は下がりやすい」とする見方が多く見られますが、地域の相場や物件の状態によって差があります。
価格に響きやすい事情
| 区域外 | 区域内・被害なし | 過去に浸水あり | |
|---|---|---|---|
| 重要事項説明 | 位置を説明 | 位置と想定を説明 | 位置と想定を説明 |
| 売主が伝えること | 特になし | 知っている事実 | 被害の時期・範囲・修理 |
| 買主の受け止め | 影響は小さい | 浸水の深さ次第 | 修理の状態を重視 |
※一般的な傾向です。地域の相場や建物の状態によって変わります。
買主が気にするのは「深さ」と「続く期間」
同じ浸水想定区域でも、想定される浸水の深さが0.5m未満なのか、3mを超えるのかで、買主の受け止め方はまったく違います。床下にとどまる深さなら備えようがありますが、1階が水につかる深さなら、家財の置き方や避難の方法まで考える必要があるからです。
浸水が続く期間も見られます。たとえば東京東部の海抜ゼロメートル地帯(地面の高さが満潮時の海面より低い土地)を含む墨田区・江東区・足立区・葛飾区・江戸川区は、5区共同で大規模水害のハザードマップを作り、広い範囲で浸水が長く続くおそれを示しています。こうした地域では、マンションの上の階か、戸建ての1階かでも評価が分かれます。
火災保険の水災の保険料にも地域差が出ている
損害保険料率算出機構は2023年6月、住宅向けの火災保険の水災の料率を、建物がある市区町村ごとに5つの区分に分けると発表しました。最も低い区分と最も高い区分の差は約1.2倍で、多くの保険会社が2024年10月の保険料の改定でこの考え方を取り入れています。
買主は、住宅ローンを組む際に火災保険に入るため、水災の補償を付けるといくらになるかを気にします。売主が今の保険の内容と保険料を示せると、買主は購入後の負担を具体的に見積もれます。
確認1:3種類のハザードマップで、自宅の位置を確かめる
最初にやることは、区や市が出している3種類のハザードマップで、自宅がどこに入っているかを確かめることです。重要事項説明で使われるのも、この市区町村のハザードマップの最新版です。
3種類はそれぞれ想定が違います。洪水ハザードマップは大きな川があふれた場合、雨水出水(内水)ハザードマップは下水や水路が雨を流しきれずにあふれた場合、高潮ハザードマップは台風で海の水位が上がった場合の浸水を示します。江東区を例にすると、洪水は荒川流域の72時間総雨量632mm、内水は24時間総雨量690mm、高潮は室戸台風級の中心気圧910hPaといった、まれにしか起きない大きな規模の条件で作られています。
自宅の位置で、それぞれの浸水の深さと、浸水が続く時間を書き出しておいてください。国土地理院の「重ねるハザードマップ」を使うと、住所を入れるだけで複数のリスクを重ねて確認できます。ただし重要事項説明の基準は市区町村の最新版なので、最後は区のマップで確かめるのが確実です。
自宅のリスクを調べる順番
- 区のハザードマップを見る洪水・内水・高潮の3種類すべてを確認
- 深さと期間を書き出す浸水の深さの区分と、続く時間の目安
- 土砂・津波の区域も確認警戒区域に入っているかどうか
- 建物の高さと比べる1階の床の高さ・基礎の高さを測る
※ハザードマップは見直されることがあります。売却の時点の最新版で確認してください。
確認2:過去の浸水は、知っている範囲で正直に伝える
ハザードマップの区域とは別に、実際に浸水したことがあるかどうかは、売主が伝えるべき大事な事実です。売主は、物件状況等報告書(売主が知っている物件の状態を書く書面)に、浸水の有無や雨漏り、シロアリなどを書いて買主に渡すのが一般的です。
古い家の売買では、契約不適合責任(売った物が契約の内容と違ったときに売主が負う責任)を負わない特約を付けることがよくあります。ただし民法572条により、売主が知りながら告げなかった事実については、特約があっても責任を免れません。過去の浸水の事実を説明しなかった売主や仲介会社に、損害賠償が認められた裁判例もあります。
伝える内容は、いつ、どの程度(床下か床上か)、どこまで水が来たか、その後どう修理したかです。修理の領収書や工事の写真が残っていれば、一緒に渡すと買主の不安が和らぎます。「何十年も前のことで詳しく覚えていない」という場合も、覚えている範囲で書き、詳細は分からないと書き添えておく方が安全です。
相続した家で、過去のことが分からない場合
親から相続した家で浸水の履歴を知らない場合は、「知らない」と正直に書くことになります。近所の方に聞く、自治体の浸水実績の資料を確認するなど、分かる範囲で調べておくと、後から問題になりにくくなります。
確認3:建物の備えと、売る前に手を入れるべきか
買主は、ハザードマップの想定と建物の状態を見比べます。基礎が高い、1階の床が道路より高い、止水板(浸水を防ぐための板)を付けている、電気の設備が高い位置にあるといった備えは、伝えるだけで印象が変わります。
反対に、床下に湿気がこもっている、壁の下の方にしみがある、床がきしむといった状態は、浸水の跡と受け取られることがあります。売る前に床下の点検をしておくと、状態を正確に説明できます。
ただし、売る前に大がかりな浸水対策の工事をするのは慎重に考えてください。かさ上げや設備の移設には大きな費用がかかり、売却価格に上乗せできるとは限りません。建て替え前提の買主や買取業者にとっては、工事が評価されないこともあります。手を入れるかどうかは、売り先の見込みを立ててから決める方が損をしにくくなります。
マンションを売る場合は、建物全体の備えが見られる
マンションの上の階なら、住戸そのものが水につかる心配は小さくなります。それでも買主は、地下や1階にある電気設備、給水ポンプ、エレベーターの機械が浸水したときに、停電や断水が長引かないかを気にします。
管理組合が止水板や土のうを備えているか、電気設備を上の階に移す工事をしたか、浸水を想定した防災の取り決めがあるかは、管理会社に問い合わせると分かります。長期修繕計画に浸水対策の工事が入っていれば、それも買主への説明材料になります。逆に、過去に地下の駐車場や機械室が浸水したことがある場合は、知っている範囲で伝えておく必要があります。
値下げを求められたときに、根拠を示せるようにしておく
買主から「浸水想定区域だから」と値下げを求められることがあります。そのときに、想定される浸水の深さが床の高さより低いこと、過去に被害がないこと、火災保険の水災の補償に入っていることなどを書面で示せれば、根拠のない大幅な値下げに応じずに済みます。
周辺の同じような条件の物件がいくらで取引されているかも、交渉の材料になります。国土交通省の不動産情報ライブラリでは、近くの取引価格を地図で確認でき、同じ浸水想定区域の中の取引と比べることで、区域に入っていることが価格にどの程度反映されているかの見当がつきます。
確認4:売り方は、リスクの大きさと急ぎ具合で選ぶ
浸水想定区域の家でも、駅に近い、土地の形がよいといった条件がそろえば、仲介で一般の買主に売ることは十分にできます。一方、想定される浸水が深く、過去に被害もあり、建物も古いといった事情が重なると、一般の買主は慎重になり、売れるまでに時間がかかることがあります。
想定される浸水が深く、過去にも浸水した?
買取業者は、ハザードマップの想定や過去の浸水を前提に価格を出し、建物を直して貸す、建て替えて売るといった再生の計画を立てます。仲介より価格は低めになりやすい一方、現状のまま、早く売れるのが特徴です。相続した空き家で遠方に住んでいる場合や、建物の傷みが進んでいる場合は、空き家のまま置く期間が長くなるほど負担が増えるため、買取も比べる価値があります。
どちらの場合も、査定を受けるときにハザードマップの想定と過去の浸水の有無を先に伝えてください。後から分かって価格を見直されるより、最初に条件をそろえて比べた方が、話がこじれにくくなります。売却全体の準備は売却前の準備のページにもまとめています。
浸水が想定される地域の家も、現状のままご相談いただけます
MAIVERSEは中央区・墨田区・江戸川区・台東区・江東区の城東エリアに特化した買取会社です。宅地建物取引士が直接ご相談に対応し、ハザードマップや建物の状態を確認したうえで買取の条件をご提示します。相続した空き家の売却では、遺産分割協議から相続登記・売却完了までの手続き費用を当社が全額負担しており、弁護士・司法書士・税理士とも連携しています。
浸水想定区域の家を売る前のチェックリスト
ここまでの確認を、売る前のチェックリストにまとめます。すべてそろっていなくても査定は受けられますが、そろっているほど説明がスムーズになり、価格の交渉でも根拠を示しやすくなります。
- 区の洪水・内水・高潮の3種類のハザードマップで、自宅の位置を確認した
- それぞれの想定される浸水の深さと、浸水が続く期間を書き出した
- 土砂災害警戒区域・津波災害警戒区域に入っているかを確認した
- 過去の浸水の有無・時期・範囲・修理の内容を書き出した
- 修理の領収書や工事の写真を探した
- 基礎や1階の床の高さ、止水板などの備えを確認した
- 火災保険の水災の補償の有無と保険料を確認した
- 床下の点検をして、湿気やしみの有無を確認した
書き出した内容は、そのまま物件状況等報告書の下書きになります。江東区の物件については江東区の不動産売却・買取のページでも地域ごとの相談を受け付けています。
参考資料(2026年10月確認)
よくある質問
- Qハザードマップが改定されて、自宅が新たに浸水想定区域に入りました。売るときに不利になりますか?
- A重要事項説明では売却時点の最新のハザードマップが使われるため、新しい想定が説明されます。区域に入ったことだけで価格が大きく変わるとは限らず、想定される深さや建物の備えを合わせて示すことで、買主が判断しやすくなります。
- Qマンションの高い階でも、ハザードマップの説明はされますか?
- Aマンションでも、建物がある場所のハザードマップ上の位置は説明されます。住戸が浸水しない階でも、電気設備やエレベーターが浸水すると生活に影響するため、管理組合の浸水対策を確認しておくと買主に説明しやすくなります。
- Q床下浸水が一度だけあり、その後は何も起きていません。それでも伝える必要がありますか?
- A知っている浸水の事実は、程度にかかわらず伝えておく方が安全です。時期と範囲、その後の点検や修理の内容を添えれば、買主は今の状態を判断できます。
- Q浸水想定区域の家を解体して更地にすれば、売りやすくなりますか?
- A建物の傷みが気にならなくなる面はありますが、浸水の想定そのものは変わらず、重要事項説明でも説明されます。解体すると固定資産税の住宅用地の特例が外れるため、解体するかどうかは売り先の見込みを立ててから決めてください。
- Qハザードマップの想定と実際の浸水の記録は、どこで調べられますか?
- A想定は市区町村のハザードマップや国のハザードマップポータルサイトで確認できます。過去の浸水の記録は、自治体が浸水実績の資料を公開している場合があるため、区役所の防災や下水道の担当窓口に問い合わせてみてください。


