汲み取り式トイレの古い家は売れる?水洗化の義務・助成金と現状売却の比較

この記事の要点
- 汲み取り式トイレの家も売却はでき、買主が個人か業者か投資家かでトイレへの評価が大きく変わる
- 公共下水道の処理区域内にある汲み取り便所は、下水の処理開始日から3年以内に水洗便所へ改造することが下水道法で定められている
- 東京都区部の水洗便所助成金は、生活保護受給世帯または世帯全員が住民税非課税の方が対象で、令和8年度の限度額は54万円
- 水洗化の工事や解体は、費用を価格に上乗せできない場合があるため、現状のままの査定額と並べて比べてから決める
こんな方に読んでほしい記事です
- 相続した古い家のトイレが汲み取り式のままで、このまま売れるのか分からない
- 水洗化の工事をしてから売るべきか、現状のまま売るべきかを数字で比べたい
- 下水道の義務や東京都の助成が、自分の家に当てはまるのかを知りたい
汲み取り式トイレの家も、売却はできます。ただし、買主が住宅ローンを使う一般の個人か、土地として使う業者か、賃貸に出す投資家かで、トイレへの見方が大きく変わります。水洗化の工事をしてから売るか、現状のまま売るかは、下水道の処理区域内かどうかと、工事費の見込みを調べてから決めるのが基本です。
公共下水道の処理区域内にある汲み取り便所は、下水の処理を開始すべき日から3年以内に水洗便所へ改造することが、下水道法で定められています。東京都区部では、条件を満たす場合に水洗化の助成金もあります。この記事では、3つの売り方を、費用と手取りの数字で比べます。

汲み取り式の家は、誰が、どこを見て買うのか
一般の個人が自分で住む目的で買うなら、トイレは購入の判断に直結します。住宅ローンの審査では、水洗でないこと自体が理由で断られるとは限りませんが、築年数や建物の状態とあわせて評価されます。汲み取り式のまま一般の買主に売るのは、現実には買主の数が限られます。
一方で、土地として買う業者は、建物を壊して建て直す前提のため、トイレの状態は評価に影響しにくくなります。古い戸建てを安く買って手を入れ、賃貸に出す投資家にとっては、水洗化の工事費を価格から差し引いて検討する材料になります。売り先の想定によって、水洗化に意味があるかどうかが変わるのは、このためです。
東京都区部では、下水道の整備は進んでいますが、路地の奥や私道に面した古い長屋など、宅地内の排水設備が整っていない家が残る場合があります。そうした家では、トイレだけでなく、排水の経路そのものが売却の論点になります。
まず調べたいのは、下水道の処理区域内かどうか
水洗化の費用も、義務の有無も、最初に分かれ目になるのは、その家が公共下水道の処理区域内にあるかどうかです。東京都下水道局の案内では、処理区域内にくみ取り便所がある建築物は、下水の処理を開始すべき日から3年以内に水洗便所に改造しなければならないとされています。窓口は、最寄りの下水道事務所の排水設備担当です。
処理区域内なのに汲み取りのままの家は、本来は改造が必要な状態で、買主に説明する内容も増えます。反対に、区域外で浄化槽を使っている場合は、別の整理になります。次の図で、最初の確認を整理しました。
売る前の最初の確認
家は、公共下水道の処理区域内にあるか?
※処理区域の確認は、下水道局の窓口や台帳で行います。
公共ますの位置も、売却前に確かめておきたい点です。家の敷地内に公共ますがあれば、宅内の配管をつなぐだけで済みますが、前面の私道に公共ますがある場合や、隣地を通して配管する必要がある場合は、通過の承諾が要ります。工事費が増えるだけでなく、承諾が得られないと工事ができないこともあります。
水洗化の工事費と、東京都の助成金のしくみ
水洗化の工事費は、便器の交換だけで済む場合と、配管や屋外の工事まで必要な場合とで、大きく変わります。リフォーム業者の解説では、30万円台から100万円を超える例まで幅があるとされています。実際の金額は、現地の確認と見積りでしか分かりません。
東京都区部には、水洗便所助成金の制度があります。東京都下水道局によると、対象は生活保護を受けている方、または世帯全員が住民税非課税の方のうち、申請要件を満たす方で、令和8年度の助成限度額は54万円です。工事に着手する前の申請が必要で、浄化槽の撤去工事や家屋の新築工事は対象外です。
この助成金は、売却のための工事にも使える、とは限りません。対象者の条件や、区が別に設けている制度の有無は、最寄りの下水道事務所と区の窓口で確認してください。相続した家を売る場合は、相続人の課税状況で対象かどうかが決まるため、工事の契約をする前に、必ず確かめてください。
売却を決めてから工事をすると、損をしやすい
水洗化の工事をしたあとで売却を決めると、工事費を価格に上乗せできないことがあります。買主は、水洗化された家よりも、土地や建物の立地・広さで価格を判断するためです。工事をする前に、水洗化した場合の査定額と、現状の査定額の両方を、不動産会社から出してもらってください。
現状のまま・水洗化・解体の3つを比べる
汲み取り式の家を売る方法は、大きく3つに分けられます。どれが向くかは、建物の傷み具合と、売り主が負担できる費用、売りたい時期で決まります。
3つの売り方の比較
| 現状のまま | 水洗化して | 解体して更地 | |
|---|---|---|---|
| 先の出費 | なし | 工事費 | 解体費 |
| 買主 | 業者・投資家 | 個人も対象 | 建築する人 |
| 期間 | 短め | 工事分が延びる | 解体分が延びる |
| 注意点 | 価格は低め | 回収できない例 | 税が上がる |
※一般的な整理です。物件ごとに結論は変わります。
解体して更地にすると、固定資産税の住宅用地の特例が外れ、税額が上がる場合があります。特例は毎年1月1日の土地の状況で判定されるため、年内に解体して年明けまでに売れないと、翌年度の税額が上がります。解体では、便槽(汲み取りの槽)の撤去や埋め戻しも必要になるため、見積りの項目を確認してください。
手取りで比べると、差は小さい。決め手は期間と確実さ
次の数字は仮の例です。更地としての価値を2,000万円とした土地に、古い汲み取り式の家が建っているとします。現状のままだと、買主が解体費や水洗化費を見込んで、1,750万円で決まったと仮定します。水洗化して売る場合は工事費100万円、解体して更地で売る場合は解体費150万円と、更地期間の税負担20万円を引いています。
手取りの目安(仮の例)
※税引前・仲介手数料前の仮の数字です。売価は買主の評価で変わります。
3つの差は、最大でも80万円ほどで、売れるまでの期間や、工事の見積りが外れる可能性を考えると、決定的とは言えません。水洗化の工事や解体は、見積りより費用がかかる場合や、工事の期間中に買主が現れない場合があります。先に費用を出して価格が上がらなければ、その分は戻ってきません。
一方で、現状のまま売るなら、費用を先に出す必要がなく、売れなかった場合の損失もありません。時間をかけられるなら、水洗化や解体を比べる余地がありますが、遠方に住んでいる、相続の期限がある、といった事情があるなら、現状のまま売る方法から検討するのが安全です。
汲み取り式の家も、現状のままでご相談ください
MAIVERSEは中央区東日本橋に事務所を構え、中央区・墨田区・江戸川区・台東区・江東区の城東エリアに特化した買取会社です。宅地建物取引士が直接ご相談に対応し、弁護士・司法書士・税理士とも連携しています。相続した空き家の売却では、遺産分割協議・相続登記にかかる費用を当社が負担します。
仲介で売るか、買取で売るか。汲み取り式の家での違い
仲介は、不動産会社が買主を探す方法です。一般の個人に売れれば価格は高く出せますが、汲み取り式の家では、内見に来た人がトイレを見て判断を変える場面もあります。売れるまでの期間が読みにくく、その間は固定資産税と管理の手間が続きます。
買取は、不動産会社が直接買う方法で、仲介手数料がかからず、現状のまま、家財が残ったままでも引き渡せる場合が多くあります。水洗化や解体を売り主が先に済ませる必要がないため、遠方に住んでいる方や、相続の期限がある方に向いています。価格は、仲介で売れた場合より低くなる傾向があるため、期間と手取りを並べて比べてください。
どちらの場合も、売却の前にトイレの便槽の汲み取りを済ませておくと、内見や引き渡しがスムーズです。汲み取りを依頼する業者は、自治体が許可した業者から選ぶ必要があるため、区の清掃担当の窓口で確認できます。
簡易水洗(水を使うが、下水道ではなく便槽にためる方式)や、単独の浄化槽が付いている家では、汲み取り式と事情が異なります。使っている設備の種類は、設置時の書類や、点検・清掃の記録から確かめられるため、相続した家では、書類が残っていないかを、先に探しておいてください。
売る前に伝えておくこと。説明と契約不適合責任
不動産会社が売買を仲介する場合、買主への重要事項説明では、水道・電気・ガスの供給施設や排水施設の整備状況を説明する必要があります(宅地建物取引業法35条)。汲み取り式であること、下水道の処理区域かどうか、公共ますの位置は、売り主が不動産会社にきちんと伝えておいてください。
売却後に、トイレや配管の不具合が見つかった場合の責任(契約不適合責任)は、売買契約で取り決めます。売り主が知っていた不具合を伝えなかった場合は、免責の特約があっても責任を免れません。知っている状態は、契約の前に書面にして伝えておくのが、後のトラブルを防ぐ近道です。
売却の準備全般は売却前の準備のページに、訳アリ物件の売却の進め方は訳アリ物件の売却の流れのページにまとめています。
汲み取り式の家を売る前に、確認したい5つのこと
工事や解体の見積りを取る前に、次の5点を確かめておくと、必要のない出費を避けられます。
- 家のある場所が、公共下水道の処理区域内かどうかを、下水道事務所で確かめた
- 公共ますの位置と、宅内の配管の経路(隣地や私道を通るか)を確かめた
- 水洗化した場合の査定額と、現状の査定額の両方を、不動産会社から出してもらった
- 助成金の対象か、区の独自制度があるかを、工事の契約の前に確かめた
- 汲み取り式であることや不具合を、売買契約の前に書面で伝える準備をした
参考資料(2026年10月確認)
よくある質問
- Q汲み取り式のままだと、住宅ローンは使えませんか?
- Aトイレが汲み取り式であること自体が、融資の可否を決めるとは限りません。金融機関は、築年数や建物の状態、再建築できるかなどを合わせて審査します。個別の判断になるため、買主が借りる予定の金融機関に事前に確認してもらうのが確実です。
- Q浄化槽が付いている家を売るときは、汲み取り式と何が違いますか?
- A浄化槽は、法定検査や保守点検の記録が残っているかが確認されます。設置の時期や使用状況によっては、交換や撤去の費用が価格に影響します。契約前に、点検の記録を売り主から買主に示せるようにしておいてください。
- Q助成金は、相続して取得した家でも使えますか?
- A対象は、生活保護を受けている方や、世帯全員が住民税非課税の方など、申請者側の条件で決まります。相続した家でも、申請者がその条件を満たせば対象になりえますが、工事の着手前に申請する必要があります。下水道事務所で、契約の前に確認してください。
- Q下水道の工事をしないまま売ったら、買主が罰せられますか?
- A水洗化の義務は、その家を所有する人に課されるものです。売買後は買主が所有者になるため、買主が改造の義務を負う形になります。売り主としては、処理区域内であることや改造が未了であることを、契約前に伝えておく必要があります。
- Q便槽の中身や、使っていないトイレの扱いはどうなりますか?
- A汲み取り式のトイレは、売却や解体の前に、汲み取り業者に便槽の処理を依頼するのが一般的です。解体する場合は、便槽の撤去や埋め戻しも必要になるため、見積りの項目に入っているかを確認してください。


