木造住宅密集地域の家を売るには?4つの売り方と不燃化特区の助成

木造住宅密集地域の家を売るには?4つの売り方と不燃化特区の助成

この記事の要点

  • 木造住宅密集地域の家は、敷地が幅4m以上の道路に2m以上接しているかどうかで、建て替えの可否と向いている売り方が分かれる
  • 東京都の新たな防火規制の区域では、建て替える建物は原則として準耐火建築物以上にする必要があり、建築費が上がりやすい
  • 不燃化特区で古い住宅を壊した後の土地は固定資産税・都市計画税の8割が最長5年度分減免されるが、土地を売って持ち主が変わると減免は終わる
  • 解体の助成はどの区でも工事前の申請が前提で、売却予定でも対象になるかは区ごとに確認が必要

こんな方に読んでほしい記事です

  • 細い路地の奥や古い木造の家が並ぶ一角に、実家や相続した家がある
  • 建て替えにくい土地と言われ、そのまま売るか解体するかで迷っている
  • 不燃化特区の助成や税の減免が、売るときにも使えるのか知りたい

木造住宅密集地域(古い木造の家が狭い道沿いに建て込んでいる地域。略して木密地域)の家も、売ることはできます。ただ、同じ木密地域でも、敷地が幅4m以上の道路に2m以上接しているか、建て替えに助成が出る地区か、といった条件で、向いている売り方と手元に残る金額が大きく変わります。

この記事では、そのまま仲介で売る、そのまま買取業者に売る、解体して更地で売る、建て替えてから売るという4つの選択肢を、手間・期間・費用の面から比べます。東京都の不燃化特区の助成や固定資産税の減免が売却とどう関わるかも整理し、最後に「こんな人はこちら」で選び方を振り分けます。

接道できる土地とできない土地、売り方の違い
図解:接道できる土地とできない土地、売り方の違いタップで拡大

木密地域の家が売りにくいと言われる理由

木密地域は、戦後の復興や高度成長期に、道路や公園が整わないまま住宅が建て込んでできた市街地です。東京都は、こうした地域に共通する課題として、狭い敷地や道路に接していない敷地が多いこと、幅の狭い道路や行き止まりの道が多いこと、古い木造の建物が多いことを挙げています。

売るときに買主が気にするのも、この3つです。家を建て替えられるか、工事の車両が入れるか、隣の家と近すぎて工事や防火の制約が大きくないか、という点が価格と売れるまでの期間に直接響きます。

道が狭く、接道の条件を満たさない敷地がある

建築基準法では、家を建てる敷地は原則として幅4m以上の道路に2m以上接していなければなりません。これを接道義務(家を建てる土地が道路に接していなければならないルール)といいます。木密地域には、幅2m前後の路地の奥にあって接道義務を満たさない敷地があり、その場合は今の家を壊すと同じ場所に新しい家を建てられない、いわゆる再建築不可になります。

幅4m未満でも、昔から家が建ち並んでいた道で、特定行政庁(建築の許可を出す役所)が指定したものは、2項道路(建築基準法42条2項の道路)として扱われます。この場合は建て替えができますが、道路の中心から2m下がった線まで敷地を後退させるセットバックが必要で、後退した部分には建物も塀も建てられません。

建物が古く、建て替えにも費用がかかる

木密地域の家は築40年、50年を超える木造が多く、1981年6月より前の旧耐震基準で建てられたものも少なくありません。買主の多くは、住む前に大きな改修をするか、建て替えることを前提に価格を考えます。

さらに東京都では、木密地域の多くに新たな防火規制(東京都建築安全条例7条の3に基づく区域)がかけられています。この区域では、原則としてすべての建物を準耐火建築物以上の性能にする必要があり、延べ面積500平方メートルを超えるか4階以上の建物は耐火建築物等にしなければなりません。建て替える場合の建築費が、規制のない地域より高くなりやすいのはこのためです。

境界や権利が入り組んでいることが多い

古い市街地では、隣家との境界が確定していない、私道を近所の人と共有している、土地を借りて家を建てている(借地)といった事情がよく見られます。こうした事情は売れないことの理由にはなりませんが、買主に説明する資料をそろえるのに時間がかかります。

東京都の木密対策を知ると、売り方の選択肢が増える

東京都は「防災都市づくり推進計画」で、地震のときに火災が広がる危険が高い木密地域を整備地域に指定しています。東京都が公表している不燃化特区の位置図では、整備地域は28地域・約6,500ヘクタールと示されています(区域は計画の見直しで変わることがあります)。目標は、燃えにくい建物や空地の割合を示す不燃領域率を70%まで高めることです。

整備地域の中でも特に重点的に整備する地区が、不燃化特区(不燃化推進特定整備地区)です。不燃化特区では、区が古い建物の解体や燃えにくい建物への建て替えに助成を出し、東京都が固定資産税・都市計画税を減免する仕組みがあります。2025年3月の計画の基本方針の改定で、不燃化特区と特定整備路線(燃え広がりを止める役目をもつ都市計画道路)の取組は5年間延長されました。

城東エリアの不燃化特区の例

台東区では、谷中二・三・五丁目地区が2014年4月1日に不燃化特区の指定を受けています。区のホームページによると、老朽建築物の除却費(上限300万円、2026年4月から拡充)、建築設計・工事監理費(上限150万円)、床面積に応じた建築工事費の助成、建築士・弁護士・税理士などの専門家派遣が用意されています。谷中二・三・五丁目と根岸三・四・五丁目には新たな防火規制もかかっています。

江東区では、北砂三・四・五丁目地区(北砂三丁目と五丁目は一部)が不燃化特区で、老朽建築物の除却費、建て替えの設計費・監理費、耐火性能を高める工事費、住み替えの費用の一部などを助成しています。区の案内では、制度は2031年3月まで延長されています。助成の金額や条件は区ごとに違い、年度で変わることもあるため、使う前に必ず区の窓口で最新の内容を確かめてください。

台東区で古い家の売却を考えている方は、台東区の不動産売却・買取のページでも地域ごとのご相談を受け付けています。

売り方を選ぶ前に、再建築できるかを確かめる

4つの売り方のどれが向くかは、まず「今の家を壊したあと、同じ敷地に家を建てられるか」で大きく分かれます。建て替えられる土地なら、買主は一般の個人まで広がります。建て替えられない土地なら、買主は買取業者や隣地の所有者などに限られやすくなります。

敷地が建築基準法の道路に2m以上接している?

YES建て替え可能。セットバックの有無と面積を確認し、4つの売り方すべてを比べられる
NO原則として再建築不可。解体や建て替えは慎重に考え、そのまま売る方法を中心に比べる

確かめ方は、区役所の建築の窓口で、敷地の前の道が建築基準法上の道路か、何項の道路か、道路の幅と敷地が接している長さを聞くのが確実です。多くの区は道路の種類を示す図面を窓口やインターネットで公開しています。法務局で公図と地積測量図を取ると、接している長さの見当もつきます。

接道していない敷地でも、周りに広い空地があるなど一定の条件を満たし、区の許可を受ければ建て替えられる場合があります(建築基準法43条2項)。この判断は一軒ごとに違うため、許可の見込みは役所で確認が必要です。接道義務の考え方は再建築不可と接道義務の解説で詳しくまとめています。

4つの売り方を、手間・期間・費用で比べる

木密地域の家の売り方は、大きく分けて4つあります。どれが正解というものはなく、建て替えられる土地かどうか、売主がどこまで手間と費用をかけられるか、いつまでに売りたいかで選び方が変わります。

木密地域の家の売り方比較

売主の手間 先に出る費用 向いている家
そのまま仲介 内覧・説明の対応 ほぼなし 接道し立地がよい
そのまま買取 少ない ほぼなし 再建築不可・傷みが大きい
解体して更地 解体の手配 解体費 接道し建物が使えない
建て替えて売る 設計・工事の管理 建築費まで 資金と時間に余裕

※一般的な傾向です。実際の向き不向きは敷地の条件や相場によって変わります。

そのまま仲介で売る

不動産会社に仲介を頼み、一般の買主を探す方法です。敷地が道路にきちんと接し、駅に近いなど立地がよければ、古家付きの土地として、建て替えたい個人に売れる見込みがあります。売主が費用を先に出す必要がほとんどないのも利点です。

一方、再建築不可の敷地や、路地の奥で工事の車両が入れない敷地では、住宅ローンが組みにくいこともあり、買主が見つかるまで時間がかかる場合があります。売れるまでの間も、固定資産税や空き家の管理の負担は続きます。

そのまま買取業者に売る

建物も中の荷物もそのままで、買取業者に買ってもらう方法です。価格は仲介で一般の買主に売れた場合より低めになりやすい一方、買主を探す期間がなく、現金化までが早いのが特徴です。再建築不可、雨漏りやシロアリがある、境界がはっきりしないといった事情をまとめて引き受けてもらえる点も、木密地域の家では大きな意味をもちます。

解体して更地で売る

建物を解体し、更地にしてから売る方法です。古い建物の傷みを気にする買主が減り、建て替えたい人には土地の状態が分かりやすくなります。ただし、木密地域では重機が入れず手作業が増えるなど、解体費が一般的な目安より高くなることがあります。

注意したいのは、再建築不可の敷地では解体しても家が建てられないことです。建物があるうちは住宅用地の特例で土地の固定資産税が軽くなっていますが、更地にするとこの特例が外れ、税額が上がります。売れるまでの期間が長引くと、その分の負担が増えます。

建て替えてから売る

売主が燃えにくい新しい家を建て、新築として売る方法です。不燃化特区なら設計費や工事費の一部に助成が出る場合があります。ただ、新たな防火規制のかかる区域では準耐火建築物以上が求められ、建築費も工事の期間もかかるため、個人の売主が選ぶことは多くありません。土地を活かして事業として取り組む人や、親族が住み続ける前提で建て替える人向けの方法と考えた方が現実的です。

現金化までの期間の目安

そのまま買取約1〜2か月
そのまま仲介約3〜6か月以上
解体して更地約4〜8か月
建て替えて売る約1年以上

※売却の相談から代金の受け取りまでの一般的な目安です。解体・建て替えは助成の申請や近隣への説明の期間を含めて考えています。物件や時期によって大きく変わります。

期間の差は、そのまま費用の差にもつながります。売れるまで空き家を持ち続けると、固定資産税、火災保険、草木の手入れや見回りの手間がかかり続けるからです。価格だけでなく、売れるまでの期間とその間の負担を含めた手取りで比べると、選び方がはっきりします。

助成と税の減免は、売る人にも使えるのか

不燃化特区の支援は、もともと「古い建物を壊して燃えにくい建物に建て替える人」を後押しするための制度です。売ることを前提にした場合、使えるもの、使い方に注意が要るものがあります。

解体の助成は、工事の前に申請が必要

老朽建築物の除却助成は、どの区でも工事に取りかかる前の申請が前提です。台東区は、工事に着手するおよそ1か月前までの申請を求めています。先に解体してしまうと助成を受けられないため、売る前に解体を考えている場合は、見積もりを取る段階で区の窓口に相談してください。

また、区によっては、解体後の土地の使い方や、建て替えの内容に条件を付けていることがあります。売却を予定していることを申請前に伝え、その使い方で助成の対象になるかを確かめておくと、後から返還を求められるような行き違いを防げます。

更地の固定資産税の減免は、売ると終わる

東京都は、不燃化特区の中で古い住宅を壊した後の土地について、固定資産税・都市計画税の8割を、壊した翌年度から最長5年度分減免しています。対象は、耐用年数の3分の2を超えた住宅を、特区の指定日から2031年3月31日までの間に壊した場合などで、区から防災上有効な空地として適正に管理されている証明を受けることが条件です。

この減免は、土地の持ち主が変わった場合、駐車場などに使った場合、建物の工事に着手した場合には終わります。つまり、解体して更地にし、その土地を売ると、減免は売った時点で途切れ、買主には引き継がれません。「減免があるから更地にしてから売れば税金の心配はない」と考えるのは誤解で、減免は更地のまましばらく持ち続ける人のための制度だと押さえておく必要があります。

助成を使って売る前の確認順

  1. 特区の区域か確かめる区の窓口や都の不燃化ポータルで地区を確認
  2. 助成の条件を聞く売却予定でも対象になるか、申請の時期
  3. 解体の見積もりを取る助成額を差し引いた自己負担を把握
  4. そのまま売る場合と比べる買取・仲介の査定と手取りで比較

※助成の内容・金額は区ごとに異なり、年度で変わることがあります。

相続した家なら、3,000万円の特別控除も関係する

親が一人で住んでいた家を相続して売る場合、条件を満たせば、売却益から最高3,000万円を差し引ける特例(被相続人の居住用財産の譲渡所得の特別控除)が使える場合があります。対象は1981年5月31日以前に建てられた家で、耐震改修をするか、解体して更地で売ることが要件の一つです。2024年1月以降の売却では、売った翌年2月15日までに買主が耐震改修や解体をした場合も対象になりました。

適用期限は2027年12月31日までの売却で、相続人が3人以上の場合は1人あたりの控除額が2,000万円になります。解体するかどうか、誰が解体するかで使えるかどうかが変わるため、税理士や税務署に事前に確認してください。

こんな人はこちら:木密地域の家の売り方の振り分け

ここまでの比較をもとに、状況ごとに向いている売り方を整理します。迷ったら、2つ以上の方法で査定や見積もりを取り、売れるまでの期間と手取りを並べて比べるのが確実です。

接道していて立地もよく、急いでいない人は、そのまま仲介で売り出し、反応を見る方法が向いています。建て替えたい個人の買主が見つかれば、高めの価格が期待できます。半年ほど反応が鈍ければ、買取の査定も取り、比べ直すとよいでしょう。

再建築不可、または路地の奥で工事が難しい敷地の人は、そのまま買取業者に売る方法を中心に考えるのが現実的です。解体すると税金が上がり、家も建てられないため、売る前に費用をかけない方が損をしにくくなります。隣の家の持ち主が敷地を広げたがっている場合は、隣地への売却も選択肢になります。

接道していて建物の傷みが激しく、不燃化特区の中にある人は、解体の助成を使って更地にする方法を比べる価値があります。ただし、助成の条件と売却予定との関係、更地の減免が売ると終わることを先に確かめてください。

相続した家を、遠方に住んでいて管理できない人は、空き家の期間が長くなるほど負担が増えます。3,000万円の特別控除の要件と売却の期限を確認したうえで、早く現金化できる買取も含めて比べてください。

建て替えてから売る方法は、建築の資金と1年以上の時間をかけられる人に限られます。個人の売主にとっては負担が大きいため、まずは他の3つの方法と手取りを比べてから判断するのが安全です。

路地の奥や再建築不可の家も、現状のままご相談いただけます
MAIVERSEは中央区・墨田区・江戸川区・台東区・江東区の城東エリアに特化した買取会社で、事務所は中央区東日本橋にあります。宅地建物取引士が直接ご相談に対応し、道路の種類や接道、セットバックの有無を確認したうえで、解体せずにそのまま買い取る条件をご提示します。相続した空き家の売却では、遺産分割協議・相続登記にかかる費用を当社が負担しており、弁護士・司法書士・税理士とも連携しています。

木密地域の家を売る前に、役所と法務局で確かめる3つのこと

どの売り方を選ぶにしても、売る前に次の3つを確かめておくと、査定の精度が上がり、買主への説明もスムーズになります。どれも売主が自分で調べられ、費用もほとんどかかりません。

1つ目は、敷地の前の道路の種類と、敷地が接している長さです。区役所の建築の窓口で、建築基準法上の道路か、2項道路ならセットバックがどれくらい必要かを確認します。再建築できるかどうかが、売り方と価格を決める出発点になります。

2つ目は、不燃化特区や新たな防火規制の区域に入っているかです。区の都市整備やまちづくりの窓口で、助成の内容と申請の時期、売却予定でも対象になるかを聞いておきます。建て替えに求められる性能が分かれば、買主がどれくらいの建築費を見込むかの見当もつきます。

3つ目は、土地と建物の登記の内容です。法務局で登記事項証明書と公図、地積測量図を取り、名義が亡くなった親のままになっていないか、私道の持分があるか、借地ではないかを確かめます。相続登記が済んでいない場合は、売る前に名義を相続人に移す手続きが必要です。

この3つがそろえば、仲介と買取の査定を同じ条件で比べられます。木密地域の家は一軒ごとに事情が違うため、調べた結果を持って専門家に相談すると、遠回りせずに売り方を決められます。

参考資料(2026年10月確認)

よくある質問

Q自宅が木造住宅密集地域や不燃化特区に入っているかは、どこで調べられますか?
A東京都の不燃化ポータルサイトに整備地域や不燃化特区の位置図が掲載されています。番地単位の区域や新たな防火規制の範囲は、区のまちづくりや建築の窓口で確認すると確実です。
Q不燃化特区の家を売ると、買主は建て替えの助成を受けられますか?
A助成は建て替えや解体をする人が申請するものなので、要件を満たせば買主が申請できる場合があります。区ごとに条件が違うため、買主に引き継ぎたい場合は区の窓口で対象になるかを確認しておくと、売却時の説明材料になります。
Qセットバックが必要な土地は、売るときに価格が下がりますか?
A後退した部分には建物を建てられず、建ぺい率や容積率の計算に使う敷地面積からも外れるため、建てられる家が小さくなる分、評価に影響することがあります。後退する面積が分かっていれば買主が計画を立てやすいので、役所で道路の中心線を確認しておくと話が進めやすくなります。
Q木密地域の古い家に借家人が住んでいます。そのままでも売れますか?
A借家人が住んだままの状態で、収益物件として投資家や買取業者に売ることができます。賃貸借契約書と家賃の入金記録をそろえておくと、価格の根拠を説明しやすくなります。
Q隣の家も古く、火事や倒壊が心配です。売るときに伝える必要はありますか?
A隣の建物の状態そのものは売主の物件の欠陥ではありませんが、知っている事情で買主の判断に影響しそうなものは、伝えておく方が後のトラブルを避けられます。隣家との境界や越境物があるかどうかも、あわせて確認しておくと安心です。

監修

三好 舞代表取締役/宅地建物取引士

株式会社MAIVERSE代表取締役。宅地建物取引士。中央区・墨田区・江戸川区・台東区・江東区の城東エリアで空き家・訳アリ物件の買取に携わり、再建築不可・借地権・相続空き家などのご相談に直接対応している。弁護士・司法書士・税理士と連携し、相続不動産の売却をワンストップで支援。