町工場を売るときの確認10項目|土壌汚染・建物・借地の落とし穴

町工場を売るときの確認10項目|土壌汚染・建物・借地の落とし穴

この記事の要点

  • 町工場は、事業ごと譲渡する、売って借りて続ける、廃業して不動産として売る、の3通りで必要な準備が変わる
  • 有害物質使用特定施設の使用をやめたときは、土壌汚染対策法により土地の所有者に土壌汚染状況調査をする義務が生じる
  • 東京都の環境確保条例第116条は、切削油や研削油などを使う工場を廃止・建替えするときの調査と報告を求めている
  • 取得費が分からない場合は売却額の5%を取得費にでき、所有期間が5年超の長期譲渡の税率は合計約20.315%

こんな方に読んでほしい記事です

  • 墨田区・江東区・江戸川区などで町工場の土地建物を持っていて、廃業や代替わりを考えている
  • 親から工場を相続したが、機械や建物が残ったままで、何から手をつけるか分からない
  • 土壌汚染や古い建物のことが気になり、売却の前に確認すべき点を整理したい

町工場は、土地と建物だけを不動産として売ることも、事業ごと譲り渡すことも、操業を続けながら売ることもできます。どれを選ぶかで、必要な調査と手取りが変わります。そのため売り出す前に、土壌汚染、建物、権利、お金の4つを順に確かめておく必要があります。

この記事は、町工場の土地建物を売る前に確認したい10項目を、チェックリストの形で整理したものです。事業の譲渡(M&Aや従業員への承継)は別の専門家の領域なので、ここでは不動産として売る場合を中心に扱います。

売る前に確かめる4つの分野
図解:売る前に確かめる4つの分野タップで拡大

町工場の売り方は3通りある。最初に決めるのは「事業をどうするか」

町工場の売却は、事業をどうするかで3つに分かれます。事業を続けたいのか、やめるのかを決めないと、不動産会社に相談しても話が噛み合いません。

町工場の3つの売り方

事業ごと譲渡 売って借りる 廃業して売る
事業 続く 続く やめる
相談先 M&A・承継の専門家 不動産会社 不動産会社
主な課題 買い手探し 賃料の負担 機械の撤去

※一般的な整理です。契約の形や税の扱いは個別に確認が必要です。

「売って借りる」は、工場を売って買主の物件にしたうえで、そのまま借りて操業を続ける方法(セールアンドリースバック)です。まとまった資金を得ながら事業を続けられますが、毎月の賃料と契約期間の確認が欠かせません。

廃業して売る場合は、機械や設備、在庫を片づける作業が売却の前に加わります。工場の中の物をどう処分するかは、確認4以降で扱います。

確認1〜3:土壌汚染は、売る前に一番確かめたいこと

工場の土地を売るうえで、買主がもっとも気にするのが土壌汚染です。切削油や溶剤、めっきに使う薬品など、工場では有害な物質を使うことがあり、長年の操業のあいだに地面へしみ込んでいる場合があります。

確認1:土地の使われ方の履歴を調べる

自分の代で使っていなくても、前の持ち主や先代が使っていた可能性があります。古い住宅地図、登記簿、親族や近所の人の話をもとに、何の工場だったのか、どんな薬品や油を使っていたかを書き出してください。

確認2:法律上の調査義務が生じるか確かめる

土壌汚染対策法では、有害物質使用特定施設(水質汚濁防止法で定められた、有害な物質を使う施設)の使用をやめたとき、土地の所有者などに土壌汚染状況調査をする義務があります。引き続き工場として使うなど、人の健康に影響が出るおそれのない使い方を続ける場合は、都道府県などに申請して確認を受けると、調査が一時的に猶予される仕組みもあります。

この法律は2003年2月15日に施行されました。また、3,000㎡以上の土地の形質変更(掘る、盛るなどの工事)をするときは届出が必要で、操業中の工場や調査が猶予されている敷地では、この面積が900㎡以上になります。

確認3:東京都の条例で、さらに調べる必要がないか確認する

東京都では、土壌汚染対策法とは別に、環境確保条例(都民の健康と安全を確保する環境に関する条例)が土壌汚染対策を定めています。同条例の第116条では、切削油や研削油など、有害物質を含む油を使う工場を廃止したり建て替えたりするとき、土壌汚染の有無を調べて報告するよう求めています。

法律と条例のどちらに当たるかは、使っていた物質、施設の種類、敷地の広さで変わります。町工場は面積が小さいことが多く、法律の調査義務の対象外でも、条例の対象になる場合があります。

切削油・めっき・溶剤などを使っていた工場跡?

YES売却前に、土壌の調査が必要かを東京都や区の担当窓口に確認する
NO使用履歴の資料を残し、買主から聞かれたときに説明できるようにしておく

調査の結果、基準を超える汚染が見つかっても、売却できなくなるわけではありません。汚染を取り除く、封じ込める、買主が把握したうえで価格に反映する、といった選択肢があります。ただし、費用は規模で大きく変わります。調査の前に、複数の専門業者から見積もりを取ってください。

確認4〜6:建物は「そのまま使えるか」「壊すといくらかかるか」で見られる

工場の建物は、住宅と違って、そのまま次の工場として使う買主が少ないのが実情です。多くの場合、買主は解体して更地にすることを前提に価格を決めます。

確認4:建物の登記と図面が実態に合っているか

町工場は、事務所や倉庫の増築を重ねていることが多く、登記の面積や構造と実際の建物が合っていない場合があります。未登記の増築部分があれば、売る前に表題登記や変更登記を済ませる必要があります。

確認5:解体時に石綿(アスベスト)の調査が必要になる

古い建物を解体するときは、石綿(アスベスト)が使われていないかを事前に調べる必要があります。屋根材や外壁材、断熱材に使われている例があり、含まれていれば解体費用が上がります。

調査の結果は買主にも関わるため、売却の前に調べておくと、価格の話し合いが進めやすくなります。

確認6:用途地域と今の建物の関係を調べる

用途地域(都市計画で決められた、建てられる建物の種類の区分)によっては、今ある工場と同じ規模では建て直せない場合があります。住居系の用途地域に変わった地域では、買主はマンションや戸建てを建てる用地として見ることが多くなります。

この点で、周囲の状況が価格に響きます。住宅と工場が混在する地域では、騒音や振動の苦情の履歴があるかも、買主が気にする点です。

工場跡地を売るまでの流れ

  1. 使用履歴の整理何を使っていたか、いつ廃止したかを書き出す
  2. 土壌・石綿の確認調査が必要かを窓口と専門業者に確認する
  3. 登記・測量の整理建物の登記と境界を実態に合わせる
  4. 機械・在庫の処分残す物と撤去する物を決める
  5. 売り先を決める現状のまま売るか、更地にするかを比べる

確認7〜8:土地の権利と境界は、小さな町工場ほど後回しになりやすい

確認7:借地・共有・抵当権が付いていないか

下町の町工場は、先代が地主から土地を借りて建てた借地のものや、きょうだいで共有しているものが少なくありません。借地なら地主の承諾が要り、共有なら共有者全員の合意が要ります。借地の売り方は借地権付き建物の売却のコラムで、共有の場合は共有持分の売却のコラムでまとめています。

土地に銀行の抵当権が付いている場合は、売買代金で完済して抹消する手続きが必要です。事業の借入が残っていないか、金融機関の残高を確認してください。

確認8:境界と、隣地との関係を整理する

町工場の敷地は、隣の工場や住宅と境界がはっきりしていなかったり、屋根や配管が越境していたりすることがあります。買主は、境界が確定していない土地を敬遠しやすく、測量と境界の確認が売却の条件になる場合があります。

測量は、土地家屋調査士に依頼して境界を確定します。隣地の持ち主の立ち会いが必要で、期間も数か月かかることがあるため、売却を決めた早い段階で動くと間に合います。

確認9〜10:お金と、人に関わること

確認9:売却益に税金がかかる。個人と法人で計算が違う

個人名義の工場を売ったときの譲渡所得は、国税庁の説明では、売却金額から取得費と譲渡費用を引いた額で計算します。建物の取得費は、所有期間中の減価償却費に相当する額を差し引くため、古い建物では小さくなります。取得費が分からない場合は、売却額の5%を取得費にできます。

譲渡費用には、仲介手数料、測量費、建物の取壊し費用などが含まれます。所有期間が5年を超える長期譲渡の税率は、所得税15%、復興特別所得税、住民税5%で、合計約20.315%です。法人名義の工場は、法人の所得として別の計算になるため、顧問税理士に早めに相談してください。

確認10:従業員、取引先、近隣への伝え方を決める

廃業して売る場合は、従業員の退職の手続き、取引先への通知、受注の引き継ぎが売却の前後に加わります。近隣に対しても、突然の解体工事は騒音や粉じんの苦情につながります。

工事の前に近隣へあいさつをして、期間と作業時間を伝えておくと、買主が引き継いだあとのトラブルを減らせます。

墨田区・江東区・中央区の町工場を売るとき、地域で気をつけたいこと

墨田区は古くから町工場が多い区ですが、区の産業資料でも、製造業の事業所数は長期的に減少が続いています。工場の跡地は、マンションや戸建ての用地として見られることが増えています。江東区にも、隅田川や運河沿いに小規模な工場が残る地域があります。

事務所のある東日本橋からは、両国橋を渡ってすぐ墨田区に入り、都営新宿線で馬喰横山駅から森下駅まで2駅で江東区に着きます。墨田区のページや江東区のページで、エリアごとの相談先を案内しています。

中央区の東日本橋・馬喰町周辺で、事務所や倉庫を兼ねた小さな建物の売却を考えている方は、東日本橋・馬喰町エリアのページもご覧ください。

工場の土地建物も、現状のままご相談いただけます
MAIVERSEは中央区・墨田区・江戸川区・台東区・江東区の城東エリアに特化した買取会社です。宅地建物取引士が直接ご相談に対応し、機械や荷物が残ったままの物件、権利関係が複雑な物件も、登記と現地の確認から担当します。相続した空き家の売却では、遺産分割協議から相続登記・売却完了までの手続き費用を当社が全額負担し、弁護士・司法書士・税理士とも連携しています。

町工場の売却を決める前に、手元にそろえたい書類のリスト

ここまでの10項目を確かめるときに、手元にあると助かる書類です。すべてそろっていなくても、あるものから査定の相談を始められます。

そろえたい書類のリスト

  • 土地・建物の登記事項証明書と公図
  • 建築確認済証、検査済証、増築の図面
  • 工場で使った薬品・油のリストと、廃止届などの控え
  • 借地契約書、地代の領収書、共有者の連絡先
  • 固定資産税の課税明細書と、融資の残高証明

相続した工場で書類がほとんど残っていない場合は、法務局と区役所で取れる登記事項証明書と建築計画概要書から始めてください。そこから、売る価値のある土地かどうかが見えてきます。

相続の手続きから不安があるときは、相続トラブルのリスク診断も参考にしてください。判断に迷うときは訳アリ物件の無料相談会でご相談いただけます。

参考資料(2026年10月確認)

よくある質問

Q町工場の土地を売るとき、必ず土壌汚染の調査をしなければなりませんか?
A法律上の調査義務が生じるのは、有害物質使用特定施設の使用を廃止したときなど、決まった場合です。東京都は条例で別に調査を求めることがあるため、売却前に東京都や区の担当窓口で確認してください。
Q機械や在庫が残ったままでも工場を売れますか?
A現状のままで引き取る買取業者もありますが、処分費用の分だけ価格が下がる場合があります。残す物と撤去する物を先に決め、産業廃棄物の処理は許可業者に依頼してください。
Q先代から相続した町工場の建物が未登記でした。そのまま売れますか?
A買主へ所有権を移すには、建物の表題登記と所有権保存登記が必要です。土地家屋調査士に現地を測ってもらう期間と費用を見込んでおいてください。
Q町工場の売却で、従業員や取引先にはいつ伝えればよいですか?
A決まった時期はなく、売却の見通しが立った段階で、従業員への説明を先にするのが一般的です。退職や契約の手続きの期限は、社会保険労務士や顧問の専門家に確認してください。
Q工場の跡地は、マンション用地として高く売れますか?
A用途地域や広さ、前面道路によって、買主の見方は大きく変わります。マンション用地として評価されるには、一定の広さや道路条件が必要で、小さな町工場では戸建て用地としての評価になることも多くなります。

監修

三好 舞代表取締役/宅地建物取引士

株式会社MAIVERSE代表取締役。宅地建物取引士。中央区・墨田区・江戸川区・台東区・江東区の城東エリアで空き家・訳アリ物件の買取に携わり、再建築不可・借地権・相続空き家などのご相談に直接対応している。弁護士・司法書士・税理士と連携し、相続不動産の売却をワンストップで支援。