共有持分の売却|同意なしで売る方法と相場、2023年民法改正の新制度

この記事の要点
- 自分の共有持分だけなら他の共有者の同意なしで売却できるが、家や土地全体の売却には共有者全員の同意が必要
- 業者による持分の買取価格に公的な基準はなく、業界では按分額の3〜7割程度という幅のある目安が言われている
- 遺産分割前の相続による共有は原則として共有物分割請求ができず、相続開始から10年を過ぎると例外的に可能になる
- 2023年4月施行の改正民法で、裁判所の決定により所在等不明共有者の持分を取得したり、全体を第三者に売ったりできるようになった
こんな方に読んでほしい記事です
- 兄弟や親族と共有名義の家・土地があり、自分の持分だけでも手放したい
- 共有者の1人が反対している、または連絡が取れず、全体を売る話が進まない
- 持分を売るといくらになるのか、親族との関係や税金がどうなるか知りたい
自分の共有持分だけであれば、他の共有者の同意がなくても売却できます。持分は自分の財産であり、民法206条が定める所有者の「処分する権利」が及ぶからです。一方で、家や土地全体を売るには、共有者全員の同意が必要です。
注意したいのは、持分だけを売ると、価格が「全体の価格×持分割合」より大きく下がりやすいことと、遺産分割が終わっていない相続の共有では、使える手続きが通常の共有と違うことです。この記事では、持分を手放す方法の比べ方、価格の計算例、2023年4月の民法改正で使えるようになった新しい制度、税金と親族間売買の落とし穴まで、状況別に整理しました。

共有不動産で「1人でできること」と「全員の同意がいること」
共有不動産では、何をするかによって必要な同意の範囲が民法で決まっています。2023年4月1日施行の改正で、管理のルールが一部変わりました。まずはこの区分を押さえておくと、自分にどの選択肢があるのかが見えてきます。
共有不動産で必要な同意
| 行為 | 例 | 必要な同意 |
|---|---|---|
| 保存行為 | 雨漏りの修繕 | 各共有者が単独で |
| 管理行為 | 3年以内の建物賃貸 | 持分の過半数 |
| 軽微な変更 | 外壁の塗り直しなど | 持分の過半数 |
| 変更・全体の売却 | 建て替え・売却 | 共有者全員 |
| 自分の持分の売却 | 持分の譲渡 | 同意は不要 |
※民法251条・252条・206条をもとにした整理です。形状や効用を著しく変えない変更が「軽微な変更」に当たります。
改正前は、建物の外壁を塗り直すような工事でも全員の同意が必要と解釈される余地があり、共有者の1人が反対すると修繕すら進まないことがありました。改正後の民法251条1項では、形状や効用の著しい変更を伴わないものは「変更」から除かれ、持分の過半数で決められるようになっています。
賃貸も、建物なら3年、土地なら5年(樹木の植栽や伐採を目的とする山林は10年)を超えない短期の賃貸借であれば、持分の過半数で決められると民法252条4項に明記されました。それ以上の期間の賃貸や、全体の売却、建て替えは、今も全員の同意が必要です。
共有者が住んでいる場合も、家全体を使う権利は全員にある
民法249条により、各共有者は、持分に応じて家全体を使うことができます。持分が3分の1の人も、家の一部ではなく全体に権利を持っているわけです。そのため、共有者の1人が住み続けている場合、他の共有者が「出て行ってほしい」と求めても、すぐに明け渡しが認められるとは限りません。
その代わりに、改正後の249条2項では、自分の持分を超えて使っている共有者は、別に合意がない限り、他の共有者にその分の対価を払う義務を負うとされました。住んでいる共有者に家賃相当の支払いを求めることは、話し合いの材料の一つになります。
共有持分を手放す5つの方法を比べる
共有状態から抜ける方法は、大きく5つあります。価格、手間、共有者との関係への影響がそれぞれ違うため、自分が何を優先したいかで選びます。
1. 共有者全員で、家や土地全体を売る
全員が売却に賛成しているなら、全体を一般の市場で売り、代金を持分に応じて分けるのが、価格の面では最も有利です。持分だけでは使い道が限られますが、全体なら普通の不動産として買主を探せるからです。代表者を決めて窓口を一本にすると、遠方の共有者がいても進めやすくなります。
2. 他の共有者に買い取ってもらう
他の共有者にとっては、持分が増えるほど自由に使える範囲が広がるため、交渉の余地があります。共有者が2人だけなら、買い取った人が単独の所有者になります。相手に資金がなければ成立しない点と、親族間で時価より著しく安く売ると、差額が贈与とみなされるおそれがある点に注意が必要です(後の見出しで説明します)。
3. 持分を扱う買取業者に売る
共有者と話し合えない、話し合っても決まらない場合の現実的な選択肢です。同意が不要なので、売主の意思だけで比較的早く現金化できます。買い取った業者は、その後、他の共有者と持分の売買や全体の売却について交渉することになります。価格は他の方法より低くなりやすく、業者によって共有者への接し方も違います。
4. 裁判所に共有物分割を求める
話し合いで分け方が決まらないときは、民法258条に基づいて、裁判所に共有物の分割を請求できます。改正後の条文では、土地を分ける「現物分割」のほか、共有者の1人が他の共有者の持分を取得してお金を払う「賠償分割」が明記され、どちらもできない場合や価値が大きく下がるおそれがある場合は競売が命じられます。弁護士に依頼するのが一般的で、解決まで長くかかることがあります。
5. 持分を放棄する
民法255条により、共有者が持分を放棄すると、その持分は他の共有者のものになります。お金は受け取れませんが、固定資産税や管理の負担から抜けたいときの選択肢になります。ただし、登記は他の共有者と一緒に申請する必要があり、受け取った側に贈与税がかかる場合もあるため、事前に相手と話をしておく必要があります。
持分を売るといくらになる?計算例と業界の目安
持分だけを買った人は、単独では家を建て替えたり、全体を売ったりできません。他の共有者との交渉や、裁判所の手続きにかかる時間と費用も、買主が引き受けることになります。そのため、業者が持分を買い取る価格は、全体の価格を持分割合で按分した額より低くなるのが一般的です。
持分1/3の価格の計算例
※全体の時価を3,000万円と仮定し、業界で言われる目安(按分額の3〜7割程度)を当てはめた計算例です。公的な基準はなく、実際の価格は個別の査定で決まります。
持分の買取価格について、公的に決まった基準はありません。業者のサイトでは「按分額の半分から3分の1程度」「市場価格の5〜7割程度」など、幅をもった目安が紹介されており、これは業界で言われる目安にとどまります。上の例でいえば、全体の時価3,000万円の家の持分3分の1は、按分すると1,000万円ですが、業者に売ると数百万円の差が出ることがあるわけです。
価格を左右する4つの要素
1つ目は持分の割合です。過半数の持分があれば短期の賃貸など管理の決定ができるため、使い道が広がります。2つ目は共有者の人数と関係で、共有者が少なく、話し合いができる関係であるほど、買主にとってのリスクは小さくなります。
3つ目は、誰が住んでいるかです。共有者が住み続けている家は、買主が使える見込みが立ちにくくなります。4つ目は不動産そのものの条件で、再建築不可や老朽化など全体として売りにくい物件は、持分の価格も下がります。複数の業者に査定を頼み、価格だけでなく、その根拠を説明してもらうと比べやすくなります。
遺産分割前の「相続した共有」は、売り方が少し違う
親が亡くなり、兄弟で実家を相続したものの遺産分割がまとまっていない。この状態の共有は「遺産共有」と呼ばれ、売買などで生じた通常の共有とは扱いが異なります。ここを取り違えると、選べるはずのない手続きを前提に話を進めてしまうことになります。
遺産分割前は、原則として共有物分割請求ができない
民法258条の2では、遺産分割をすべき共有については、共有物分割請求ではなく、遺産分割(家庭裁判所の調停や審判を含む)で分けることが原則とされています。例外として、相続開始から10年を過ぎると、共有物分割請求の中で遺産共有の持分も一緒に分けられるようになりました。ただし、相続人が期限内に異議を申し出た場合は除かれます。
法定相続分で登記すれば、持分として売れる
遺産分割前でも、自分の持分を売ることはできます。そのためには、まず法定相続分(民法で決まった相続の割合)どおりの相続登記をして、自分の持分を登記簿に載せる必要があります。法務局の案内では、法定相続分による相続登記は、相続人の1人が保存行為として全員のために申請することもできます。
2024年4月からは相続登記が義務になり、不動産を取得したことを知った日から3年以内の申請が求められています。持分を売るかどうかにかかわらず、名義の整理は早めに進めておく方が後の選択肢が広がります。
「相続分の譲渡」は1か月以内に取り戻されることがある
不動産の持分ではなく、遺産全体に対する自分の取り分(相続分)をまとめて第三者に譲る方法もあります。ただし民法905条により、遺産分割前に相続分が第三者に譲られた場合、他の相続人は1か月以内であれば、その価額と費用を払って取り戻すことができます。相続分を売る場合は、この仕組みがあることを知っておいてください。
共有者が行方不明・誰か分からないときは、2023年の新制度を使う
相続を何代も放置した結果、共有者が十数人に増え、誰がどこにいるのか分からない。そんな場合のために、2023年4月1日施行の改正民法で、裁判所の手続きを使って所在等不明共有者(誰か、またはどこにいるか分からない共有者)の持分を整理する制度ができました。
相手が誰か、またはどこにいるのか調べても分からない共有者がいる?
民法262条の2では、裁判所が、共有者の請求により、所在等不明共有者の持分をその共有者に取得させる裁判をできるとされています。262条の3では、所在等不明共有者以外の共有者全員が持分の全部を特定の人に譲ることを条件に、所在等不明共有者の持分もその人に譲る権限を与える裁判ができます。後者を使えば、家や土地全体を第三者に売ることが可能になります。
手続きは不動産の所在地を管轄する地方裁判所に申し立てます。非訟事件手続法87条により、裁判所は申立てがあったことなどを公告し、3か月以上の期間を置いてから判断します。申し立てた人は、裁判所が時価相当額を考えて定めた金額を供託する必要があり、所在等不明共有者は後でその支払いを求めることができます。
相続した持分が絡むと「10年」の壁がある
所在等不明共有者の持分が相続財産で、遺産分割をすべきものであるときは、相続開始から10年を経過していないと、この制度は使えません。親が亡くなって数年の段階では、遺産分割の手続きや不在者財産管理人の選任など、別の方法を検討することになります。
このほか、所在等不明共有者がいる場合に、それ以外の共有者の同意で建物の変更などをできるようにする裁判(民法251条2項)や、管理について決める裁判(252条2項)も設けられました。どの手続きが合うかは事情によって違うため、弁護士や司法書士に相談したうえで選んでください。
共有者が住んでいる・費用を払わないときに使えるルール
共有者の1人が住んで家を使い、固定資産税は自分が全額払っている。共有の家では、こうした不公平がきっかけで売却を考える方が少なくありません。持分を売る前に、民法で使えるルールを確認しておくと、交渉の材料になります。
民法253条1項では、各共有者は持分に応じて管理の費用や負担を負うとされています。固定資産税や修繕費を立て替えている場合、他の共有者に持分に応じた分を請求できます。さらに253条2項では、共有者が1年以内にこの負担を果たさないときは、他の共有者が相当の償金を払ってその人の持分を取得できるとされています。
住んでいる共有者には、先に書いたとおり、持分を超えて使っている分の対価を求めることができます。これらは、相手に持分を買い取ってもらう、または自分が相手の持分を買い取る交渉の土台になります。立て替えた費用の記録や領収書は、持分を売る場合でも清算の根拠になるため、捨てずに残しておいてください。
持分を売ったときの税金と、親族間売買の落とし穴
持分を売って利益が出ると、譲渡所得として所得税と住民税がかかります。譲渡所得は「売った金額−(取得費+譲渡費用)」で計算します。相続した持分の取得費と取得時期は、亡くなった方が買ったときのものを引き継ぎ、相続登記の費用も取得費に含めることができます。
取得費が分からない場合は、売った金額の5%を取得費とする方法がありますが、この場合は相続人が払った登記費用を加えることはできません。売った年の1月1日時点で、亡くなった方の所有期間と合わせて5年を超えていれば長期譲渡所得となり、税率は所得税15%(ほかに復興特別所得税が所得税額の2.1%)と住民税5%です。
計算例:持分を700万円で売った場合
先の例で、持分を700万円で業者に売り、取得費が分からず概算取得費35万円、仲介手数料などの譲渡費用を仮に30万円とすると、譲渡所得は635万円です。長期譲渡所得の税率20.315%をかけると、税金は約129万円になります。相続税を払った人が、相続税の申告期限の翌日以後3年以内に売った場合は、払った相続税の一部を取得費に加えられる特例(取得費加算)で、税額が下がることがあります。
親族に安く売ると、贈与税がかかるおそれ
他の共有者である親族に持分を売る場合、「身内だから」と時価より著しく安い価格にすると、国税庁の説明では、時価と支払った額との差額が、売った人から贈与されたものとみなされます。土地や建物の時価は通常の取引価額で考えます。親族間で売買する場合は、不動産会社の査定書などで価格の根拠を残しておくと安心です。
業者に持分を売るときの流れと、確認したいこと
共有者と話し合えず、業者への売却を選ぶ場合も、いきなり契約に進むのではなく、次の順番で進めるとトラブルを避けやすくなります。
持分を業者に売る流れ
- 登記簿で名義と持分を確認相続登記が済んでいるかも見る
- 共有者に買取の意思を打診可能な範囲で。義務ではない
- 複数の業者に査定を依頼価格の根拠と買取後の方針を聞く
- 売買契約・決済代金の受領と持分の移転登記
- 翌年に確定申告利益が出た場合や特例を使う場合
※相続登記が済んでいない場合は、先に登記が必要です。
法律上、持分を売ることを他の共有者に知らせる義務はありません。ただ、親族間の共有で、ある日知らない会社から連絡が届くと、感情的な反発を招きやすくなります。共有者が買い取れない、または話し合いそのものができないと分かってから業者に売る方が、後から「なぜ相談しなかったのか」と言われることも少なくなります。
業者を選ぶときは、買い取った後に他の共有者へどう連絡し、どう交渉するのかを必ず聞いてください。売った後も親族としての関係は続くため、共有者に配慮した進め方をする業者かどうかは、価格と同じくらい大切な判断材料です。
共有者との調整が必要な物件も、まずはご相談ください
MAIVERSEでは宅地建物取引士が直接ご相談に対応し、共有物分割や所在等不明共有者の手続き、相続登記、税金の判断が必要な場面では弁護士・司法書士・税理士と連携します。相続した空き家の売却では、遺産分割協議から相続登記・売却完了までの手続き費用を当社が全額負担しています。対応エリアは中央区・墨田区・江戸川区・台東区・江東区の城東エリアに特化しています。
共有名義の家を手放す前に、書き出しておきたい4つのこと
持分を売るか、全体を売るか、共有物分割を求めるか。どの方法を選ぶにしても、次の4つを紙に書き出しておくと、専門家や不動産会社への相談が短時間で進みます。
1つ目は、共有者全員の名前と持分、連絡がつくかどうかです。登記簿で確認し、亡くなっている共有者がいれば、その相続人も含めて書き出します。2つ目は、今その家を誰が使っているかと、固定資産税や修繕費を誰がいくら払ってきたかです。
3つ目は、共有が相続によるものか、遺産分割が終わっているかです。遺産分割前なら、使える手続きが変わります。4つ目は、自分がいつまでに、どのくらいの手取りで手放したいかです。早さを優先するのか、時間がかかっても高く売りたいのかで、選ぶ方法は大きく変わります。
相続人が複数いる場合の進め方は相続人が複数いる場合のページにまとめています。相続をきっかけにした共有で、親族との話し合いに不安がある方は相続トラブルのリスク診断で状況を整理してみてください。共有持分の無料相談会でも、持分の売却についてご相談をお受けしています。
参考資料(2026年10月確認)
よくある質問
- Q共有者の1人が認知症の場合、全体を売ることはできますか?
- A本人に判断する力がないと売買の同意ができないため、家庭裁判所に成年後見人を選んでもらい、後見人が本人に代わって判断することになります。後見人は本人の利益を守る立場なので、売却が本人のためになるかが問われます。
- Q持分を売った後、元の共有者から恨まれないか心配です。
- A法律上は知らせる義務はありませんが、先に共有者へ買い取る意思があるかを確認しておくと、後の反発を和らげやすくなります。業者に売る場合は、買取後に共有者へどう連絡するのかを契約前に確認してください。
- Q共有名義の家に住んでいる兄弟に、家賃を請求できますか?
- A2023年4月施行の改正民法249条2項により、持分を超えて使っている共有者は、別の合意がない限り、他の共有者にその分の対価を払う義務を負います。金額は話し合いで決めるのが基本で、まとまらない場合は弁護士に相談してください。
- Q夫婦の共有名義の家で、離婚後に自分の持分だけ売れますか?
- A持分だけなら相手の同意なく売れますが、住宅ローンが残っている場合は金融機関との約束に反しないか確認が必要です。離婚の際の財産分与の取り決めとも関わるため、売る前に合意の内容を見直してください。
- Q持分の売却でも、マイホームの3,000万円特別控除は使えますか?
- A自分が住んでいた家の持分を売る場合は、要件を満たせば使える可能性があります。住んでいない共有者の持分には使えないなど細かい要件があるため、税務署や税理士に確認してください。
- Q共有物分割請求をされたら、拒否できますか?
- A通常の共有では、分割しない特約がある場合などを除き、各共有者はいつでも分割を請求でき、請求された側が一方的に拒むことはできません。ただし、どの方法で分けるかは裁判所が事情を考えて決めるため、自分が住み続けたい場合は、持分を買い取る形を主張する方法があります。


