中央区の地区計画で同じ規模に建て替えられない?既存不適格の家の売り方と確かめ方

中央区の地区計画で同じ規模に建て替えられない?既存不適格の家の売り方と確かめ方

この記事の要点

  • 既存不適格は建てた当時は適法だった建物で、違法ではなく、今のまま使うことも売ることもできるが、取り壊して建て直すときは現行の基準に合わせる必要がある
  • 前面道路が12m未満の場合、容積率は道路の幅に係数(0.4や0.6など)を掛けた数値と指定容積率の小さい方になり、細い道に接する家は建て直すと延べ床面積が減ることがある
  • 中央区では区内の約8割で16の地区計画が定められており、地区計画の区域で建築や増築をする場合は工事着手の30日前までに届出が必要である
  • 中央区には高度地区の指定がなく、建て替えの可否は地区計画の内容と敷地ごとの条件を区の建築課で確認する必要がある

こんな方に読んでほしい記事です

  • 中央区の古い家を売ろうとして、「今と同じ大きさでは建て替えられない」と言われた
  • それが違法建築なのか、再建築不可なのか、別の話なのかを区別したい
  • 区役所で何を、どの窓口で確かめれば建て替えの可否が分かるのか知りたい

中央区の古い建物について「建て替えると今より小さくなる」と言われた場合、多くは違法建築でも再建築不可でもなく、既存不適格(建てた当時は適法だったが、その後のルール変更で今の基準に合わなくなった状態)に当たります。今ある建物をそのまま使うことも、そのまま売ることもできます。現行の基準に合わせる必要が出るのは、取り壊して建て直すときや、大きな増築・改築をするときです。

中央区は、区の公式サイトによると区内の約8割の区域に16の地区計画(街ごとに建物の高さや壁面の位置などを定めるルール)が定められています。道路の幅で決まる容積率のような全国共通のルールに、地区ごとのルールが重なるため、建て替えで何が変わるかは敷地ごとに確かめるしかありません。この記事では、建て替えの大きさを決める仕組み、中央区の地区計画の位置づけ、役所での確かめ方、売り方の選び方を、疑問の順に整理します。

同じ規模で建てられない3つの原因
図解:同じ規模で建てられない3つの原因タップで拡大

Q. 「同じ大きさでは建てられない」と言われました。違法建築なのでしょうか

違法とは限りません。建築基準法3条2項は、法律や条例の規定が施行・適用された時点で、すでに建っている建物がその規定に合っていなくても、その規定を当てはめないと定めています。つまり、古い建物が今の基準に合っていないこと自体は、違法ではありません。これが既存不適格です。

一方、同法3条3項は、その後に増築、改築、大規模の修繕・模様替えをする場合には現行の規定を当てはめる、と定めています。「今は問題なくても、建て直すときは今のルールで」という仕組みです。取り壊して新しい建物を建てる場合は、新築として現行の規定がすべて当てはまります。

よく混同される3つの状態を、次の表で整理しました。

3つの状態の違い

既存不適格 再建築不可 違反建築
状態 当時は適法。後の改正で不適合 敷地が接道義務を満たさない 建築時から法令に違反
今の建物 そのまま使える 使える 是正指導の対象になりうる
建て直し 現行基準に合わせれば可 原則できない 是正が前提
売却時 重要事項として説明 買主が限られる 融資・告知に注意

※一般的な整理です。実際の扱いは建物ごとに異なります。

既存不適格が問題にするのは、建物の大きさや形が今の基準に収まるかどうかです。土地に建築できるかどうかは別の話で、道路に2m以上接していない敷地は、既存不適格かどうかにかかわらず建て直せません。再建築不可の判定は接道義務の仕組みと判定手順のコラム、建築当時から基準に合っていない建物の売り方は違反建築の売却のコラムにまとめています。

Q. 同じ規模で建てられなくなるのは、何が変わったからですか

建てた時から今までの間に、建物の大きさを決める物差しが変わったり、敷地の条件が変わったりしたためです。主な原因は、道路の幅、建ぺい率・高さなどの基準、地区計画の3つです。地区計画は次の節で詳しく説明するので、ここでは全国共通の2つを先に見ます。

道路の幅で、使える容積率が下がることがある

容積率(敷地面積に対する延べ床面積の割合)は、用途地域ごとの指定容積率が上限ですが、前面道路の幅が12m未満の場合は、道路の幅(m)に係数(0.4または0.6など、用途地域や特定行政庁の指定で決まる)を掛けた数値と比べて、小さい方が上限になります(建築基準法52条2項)。前面道路が4mなら、係数0.6の場合は4×0.6=240%までです。

たとえば、敷地50㎡、指定容積率が400%と仮定します。前面道路が4mで係数0.6なら、上限は240%で延べ床面積は最大120㎡です。今の建物が延べ床面積140㎡あれば、建て直すと20㎡ほど小さくなります。道路が6mなら、6×0.6=360%で最大180㎡となり、140㎡の建物は同じ規模で建て直せます。

道路幅で変わる延べ床面積

今の建物(仮定)140㎡
道路6m・係数0.6最大180㎡
道路4m・係数0.6最大120㎡
道路4m・係数0.4最大80㎡

※敷地50㎡、指定容積率400%と仮定した計算例です。建ぺい率や斜線制限などは考慮していません。

前面道路が4m未満の細い道(2項道路)なら、道路の中心線から2mまで敷地を後退(セットバック)させる必要があり、後退した部分は敷地面積に数えられません。敷地が減ると、同じ容積率でも延べ床面積は小さくなります。道路が広がったから建て替えやすくなる、とは限らず、細い道に接していると、建築当時より不利になることがあります。

建ぺい率・高さ・斜線の基準も、建築当時とは違う

建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)、道路や隣地の側から斜めに高さを抑える斜線制限、防火に関する規制なども、時代とともに改正や見直しが行われてきました。建築当時の基準では収まっていた3階建てや、敷地いっぱいに建てた家が、今の基準では建てられないことがあります。

こうした差は、建築士が現行の基準で建てられる最大の大きさを試算する「ボリュームチェック」で、数字として確認できます。売主が自分で細かく計算する必要はなく、「どの規定が原因で、何㎡ほど小さくなるのか」を把握しておけば、買主や買取業者との話がかみ合います。

Q. 中央区の地区計画では、建て替えについて何が決まっているのですか

中央区の地区計画は、「街並み誘導型」と「高度利用型」の2種類で、建物の高さ、壁面の位置、容積率などの制限が地区の特性に応じて定められています(区の公式サイトによる)。区の説明では、昭和63年に区が定住人口の回復対策に取り組み始め、平成9年7月に日本橋問屋街から築地にかけてのエリアで街並み誘導型の地区計画を導入し、令和元年7月に用途別容積型を廃止して高度利用型を導入した、という経緯です。

区のサイトで確認できる地区は、次のとおりです。日本橋・東京駅前地区と銀座地区は、地区計画に高度利用地区が加わります。「第2ゾーン」と呼ばれるエリアは、日本橋問屋街、人形町・浜町河岸、日本橋兜町・茅場町一丁目、新川・茅場町、京橋、築地の6地区です。月島地区は、佃二・三丁目、月島一〜四丁目、勝どき一・二丁目、勝どき三丁目、勝どき四丁目の8地区に分かれています。

人形町や浜町の古い建物をお持ちなら、人形町・浜町エリアの売却相談、月島・佃・勝どきの物件なら月島・佃エリアの売却相談のページも、あわせてご覧ください。

地区計画は、制限であり、緩和の仕組みでもある

「地区計画があるから建て替えが厳しい」とは限りません。区の案内では、道路の幅による容積率の制限や斜線制限の緩和を受けるには、区の認定が必要とされています。つまり、地区計画が定める壁面の位置や高さなどの条件を満たす計画なら、全国共通のルールより大きく建てられる場合があるということです。

反対に、壁面を後退させる、高さを抑える、といった条件が敷地の広さに対して重い場合、今の建物と同じ規模では建てられないこともあります。どちらに働くかは、地区ごと、敷地の形や接する道路の幅ごとに違います。区は運用基準も公表しており、たとえば幅員の異なる2つ以上の道路に接するL型の敷地では、広い方の道路の幅を高さと容積率に使う、という取扱いがあります。こうした細かな扱いは、一軒ごとに区で確認が必要です。

建て替え・増築の前に、30日前までの届出が必要

地区整備計画などが定められた区域では、建築物の新築、増築、改築、移転や、一定の工作物の建設、用途の変更をする場合、都市計画法58条の2に基づく届出が必要です。区の案内では、工事に着手する30日前まで、かつ建築確認の申請より前に出す必要があり、期日を過ぎた届出は受け付けられないとされています。

この届出は、建物を建てる側(買主や、買取後に建て替える会社)が行う手続きで、売買そのものが届出の対象として挙げられているわけではありません。ただ、買主が「建て替えたい」と考える場合には、売主の側でも、届出の対象になる地区かどうかを知っておくと説明がしやすくなります。

中央区には、高度地区の指定がありません
「中央区は高さ制限が厳しい」という説明を耳にすることがありますが、区の公式FAQでは、都市計画法に基づく高度地区の指定は区内にないとされています。高さに関する制限は、地区計画や斜線制限など、別の仕組みで決まります。最低敷地面積や壁面後退の具体的な数値は地区ごとに異なるため、この記事では書いていません。地区別の手引きで確認してください。

Q. 自分の家が当てはまるかは、どのように確かめればよいですか

順番に進めると、役所の窓口でも話が早く進みます。最初に手元の書類を集め、そのうえで区のウェブサイトで場所を確認し、窓口で個別の扱いを聞く流れです。

確かめる手順

  1. 書類を探す確認済証・検査済証・図面・固定資産税の通知書
  2. 場所を確認する用途地域・地区計画の区域に入るか
  3. 道路を確認する前面道路の幅・種類、セットバックの有無
  4. 窓口で聞く建築課の窓口に、地区のルールと扱いを確認
  5. 数字にする建築士に最大規模の試算(ボリュームチェック)を依頼

※相続した家で書類がない場合は、2から始めて構いません。

1つ目の書類は、建築確認済証と検査済証、設計図面です。見つからないときは、建築基準法93条の2により、確認申請の内容を記載した建築計画概要書を特定行政庁が閲覧に供することになっています。閲覧の場所や手続きは区に確認してください。

2つ目の場所の確認には、区の都市計画情報等閲覧システムや、用途地域(東京都決定)計画図、地区計画等の都市計画図書が使えます。ただし、用途地域の計画図について、区の公式ページには、概略を示す参考図であり都市計画の内容を証明するものではないと明記されています。境界付近など、正確な位置が必要な場合は、窓口で確認してください。

3つ目の道路は、前面道路の幅と種類によって、容積率の上限やセットバックの要否が変わります。現地で幅を測るだけでなく、その道が建築基準法上の道路かどうか、2項道路に当たるかは、区の窓口で確認します。5つ目のボリュームチェックは、1〜4の結果を建築士に渡して、現行の基準で建てられる最大の大きさを試算してもらうものです。

4つ目の窓口は、地区計画の内容と届出については都市整備部建築課指導審査係(電話03-3546-5456)、建築関係の総合的な相談は建築関係総合窓口(電話03-3546-5447)です。聞くときは、住所(地番)、建築した年、おおよその延べ床面積、前面道路の幅を伝え、「今の建物と同じ大きさで建て直せるか」「届出が必要な地区か」「緩和の認定を受けられる見込みか」の3点を確認します。口頭の回答は、日付と担当部署、内容をメモに残しておくと、後で買主や不動産会社に説明するときに役立ちます。

Q. 売るとき、価格や手間にはどのように響きますか

建て替えで小さくなる家は、買う側の見方によって価値が変わります。誰に売るかで、見られるポイントが次のように違います。

建て替えを前提に買う会社や個人は、建て直したあとの延べ床面積を基準に土地の価値を見積もります。20㎡小さくなるなら、その分が価格に織り込まれやすくなります。一方、今の建物を使い続けて貸す、あるいはリフォームして住むという買主は、今の大きさが維持できることを評価します。この場合は、建て替えの可否よりも建物の傷みや賃貸の需要が価格を左右します。

隣地の所有者が敷地を広げたいと考えている場合は、敷地が広がることで使える容積が増える可能性があり、他の買主より高い条件を出せることがあります。ただし、合筆(土地を1つにまとめる登記)後の扱いや、地区計画の条件は地区ごとに違うため、買う側と一緒に区へ確認するのが安全です。

建物を壊して更地にすると、「今の大きさ」は戻りません

「どうせ建て替えられないなら、更地にした方が売りやすいのでは」と考える方がいます。しかし、いったん取り壊すと、「今の大きさの建物がすでにある」という前提が消え、土地は現行の基準で建てる土地として評価されます。解体費の負担に加えて、建物が建っている土地に適用される固定資産税の住宅用地の特例も外れます。

特に、今の建物の延べ床面積が現行の上限より大きい場合は、建物があるうちは、その大きさのまま貸したり、手を入れて使ったりできます。壊す前に、建物付きのままの査定と更地の査定を取り、どれだけ差が出るのかを比べてください。

説明が必要な事実は、売主も把握しておく

宅地建物取引業法では、不動産会社が買主に、都市計画法や建築基準法に基づく制限を重要事項として説明することが義務づけられています。既存不適格であることは、買主の判断に影響する事実のため、仲介の場合は不動産会社が調べて説明します。売主自身は、知っていることを隠さず伝えることが、後のトラブルを避ける近道です。

住宅ローンについては、金融機関ごとに扱いが異なります。既存不適格だから一律に借りられない、とは言えませんが、担保の評価が下がる場合があります。買主がローンを使う前提で話を進める前に、買主側の金融機関に確認してもらうと安心です。

売り方の分かれ道

建て替えで小さくなる分を、価格に織り込んで売ってもよい?

YES建物付きのまま仲介で売り出し、買取の査定も並べて比べる
NO隣地への打診や、緩和の認定の見込みを区で確認してから売り方を決める

NOの方は、今のまま急いで売り出すより、区での確認を先に済ませる方が、結果として条件が良くなることがあります。確認には数日から数週間かかることもあるため、売却の希望時期から逆算して動いてください。

中央区の古い建物の売却は、調査の段階からご相談いただけます
MAIVERSEは、東日本橋に事務所がある、中央区・墨田区・江戸川区・台東区・江東区の城東エリアに特化した買取会社です。宅地建物取引士が直接ご相談に対応し、今の建物の状態や建て替えの制約を踏まえた買取の可否をお伝えします。弁護士・司法書士・税理士とも連携しており、相続が絡む場合も、手続きを含めてご相談いただけます。

中央区の古い家を売る前に、役所と建築士に聞いておきたい5つのこと

ここまでの内容を、売却の準備として確かめる順に並べました。いずれも、費用をかけずに始められるものです。

  • 建築確認済証、検査済証、設計図面が手元にあるか(なければ建築計画概要書を区で確認する)
  • 家の住所が、区の地区計画の区域(日本橋・東京駅前、銀座、第2ゾーン、月島)に入っているか
  • 前面道路の幅と種類は何か。4m未満ならセットバックが必要か
  • 今の延べ床面積と、現行の基準での最大の大きさの差は何㎡か
  • 建て替え・増築をする買主に、届出や認定が必要になるか

1つ目と2つ目は、ご自身で確認しやすい項目です。3つ目から5つ目は、区の窓口と建築士の協力で数字にします。確認の結果、同じ規模では建て替えられないと分かった場合も、売れなくなるわけではありません。何が原因で何㎡減るのかを説明できれば、買主も価格を判断しやすくなります。

調べ方が分からない、遠方で現地に行けない、相続したばかりで書類がそろっていないといった場合は、訳アリ物件の売却の流れで全体の段取りを確かめたうえで、訳アリ物件の無料相談会もご利用ください。

参考資料(2026年10月確認)

よくある質問

Q家を売るだけでも、地区計画の届出は必要ですか?
A区の案内では、届出の対象は建築物の新築・増築・改築・移転、工作物の建設、用途の変更などで、売買そのものは挙げられていません。ただ、買主が建て替えや増築をする場合は、工事着手の30日前までに届出が必要になるため、買主側の計画に合わせて確認してもらってください。
Q建築確認済証や検査済証が見つかりません。何も分からないでしょうか?
A建築基準法93条の2により、確認申請の内容を記載した建築計画概要書は特定行政庁が閲覧に供することになっています。いつ建てられたか、どの規定で確認を受けたかの手がかりになるため、閲覧の場所と手続きを区の建築課に確認してください。
Q区のウェブサイトの用途地域の図を見れば、容積率はそのまま分かりますか?
A区の計画図は概略を示す参考図で、都市計画の内容を証明するものではないと区の公式ページに明記されています。境界付近の敷地や、前面道路の幅で容積率が変わる敷地では、窓口での確認が必要です。
Q隣の土地と一緒にすれば、同じ規模で建てられるようになりますか?
A敷地が広がれば使える延べ床面積が増える場合があります。ただし、道路に接する長さや、地区計画の条件によって扱いが変わるため、合筆の前に区で確認してから進めてください。
Q買主から「建て替えられますか」と聞かれたら、どう答えればよいですか?
A調べた範囲を、そのまま伝えてください。区での確認結果や建築士の試算があれば、それを根拠として示し、確認できていないことは「一軒ごとに区で確認が必要」と正直に説明する方が、後のトラブルを防げます。

監修

三好 舞代表取締役/宅地建物取引士

株式会社MAIVERSE代表取締役。宅地建物取引士。中央区・墨田区・江戸川区・台東区・江東区の城東エリアで空き家・訳アリ物件の買取に携わり、再建築不可・借地権・相続空き家などのご相談に直接対応している。弁護士・司法書士・税理士と連携し、相続不動産の売却をワンストップで支援。