違反建築の家を売却するには|建蔽率・容積率オーバー、検査済証なし、増築の売り方

この記事の要点
- 違反建築の建物の売買を禁じる規定はなく売却はできるが、買主の住宅ローンが使いにくいため買い手が限られる
- 建築当時は適法で法改正などにより基準に合わなくなった既存不適格建築物は、建築基準法3条2項により違法ではない
- 国土交通省のガイドラインによると検査済証のない建物は平成11年以前では半数以上を占め、検査済証がないだけで違反建築とは決まらない
- 契約不適合責任を負わない特約を結んでも、売主が知りながら告げなかった事実の責任は免れない(民法572条)
こんな方に読んでほしい記事です
- 査定で「建蔽率・容積率オーバーなので扱いにくい」と言われた
- 親が昔、確認を取らずに部屋や車庫を増築したらしく、売れるのか不安
- 検査済証が見つからず、違反建築なのかどうかも分からない
違反建築の家も売却できます。建築基準法に違反した建物の売買を禁じる規定はなく、実際に取引もされています。ただ、買主が住宅ローンを使いにくく、建て替えると今より小さな家しか建たないことが多いため、普通の家と同じ売り方ではうまくいきません。
売り方を決める前に確かめたいのは、何が、どれだけ、いつから基準に合っていないのかです。建蔽率・容積率の超過なのか、確認を取らない増築なのか、検査済証がないだけなのかで、是正の方法も買い手も変わります。違反ではなく既存不適格(建てた当時は適法だった建物)だと分かることもあります。この記事では、確かめ方、数字での計算例、違反の種類別の売り方、告知と契約の注意点を順に説明します。

違反建築でも売れるが、放置すると行政処分の対象になりうる
建築基準法9条は、法令に違反した建物について、特定行政庁(建築の許認可を行う自治体)が所有者や管理者などに対し、除却、改築、使用禁止などの是正措置を命じることができると定めています。命令の前には、措置の内容と理由を書いた通知書が届き、意見書を出す機会が与えられます。
この命令に従わない場合、同法98条で3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象になります。実際には、命令の前に行政指導が行われるのが一般的で、売却を考えている段階でいきなり処分されることは多くありません。それでも、違反の状態は所有者が変わっても建物に残ります。買主はこの点を価格に織り込むため、売主の側で違反の中身を説明できるかどうかが、売れるかどうかを左右します。
「違反建築」と「再建築不可」は別の問題
違反建築は建物そのものが基準に合っていない状態で、再建築不可は土地が道路に接していないなどの理由で建て替えができない状態です。両方が重なっている家もあります。土地側の問題が中心なら再建築不可の家の売り方や43条2項の許可・認定のコラムを、この記事では建物側の問題を扱います。
違反か、既存不適格か|建てた時期と増築の時期で分かれる
建築基準法3条2項は、法令の施行や改正の際にすでに建っていた建物が新しい規定に合わない場合、その規定は適用しないと定めています。これが既存不適格建築物で、違法ではありません。用途地域の変更で容積率が下がった、道路の扱いが変わったといった理由で、今の基準をオーバーしている家は珍しくありません。
一方、建てた時点ですでに基準を超えていた家や、後から確認を取らずに増築して基準を超えた家は違反建築です。判断の入口は次の図のとおりです。
建てた当時(増築した場合はその当時)の図面と基準では、建蔽率・容積率などの範囲に収まっていた?
注意したいのは、既存不適格の家でも、その後に増築すると話が変わることです。同法3条3項は、改正後に着手した増築などには原則として現行の規定が適用されると定めており、一定の範囲で緩和する規定はあるものの、確認を取らずに増築していれば違反の問題が出てきます。「古い家だから既存不適格」と決めつけず、建築当時と増築当時の両方の記録を見る必要があります。
建蔽率・容積率以外の違反にも目を向ける
査定で指摘されるのは建蔽率・容積率の超過が多いものの、違反はそれだけではありません。道路斜線や北側斜線などの高さの制限を超えている、準防火地域で求められる防火の仕様を満たさずに増築している、用途地域で認められない使い方に変えている、といった例もあります。
高さや防火の違反は、面積の超過と違って取り壊す範囲が大きくなりやすく、是正の費用も読みにくくなります。どの規定に合っていないのかを一つずつ書き出しておくと、買主への説明でも、是正の見積もりを取るときにも話がぶれません。
検査済証がない家は、違反建築とは限らない
建物は、工事が終わったあとに完了検査を受け、検査済証の交付を受けることになっています。しかし、昔はこの検査を受けないまま使われている建物が多くありました。国土交通省のガイドラインは、検査済証の交付を受けていない建物が平成11年以前では半数以上を占めていたと書いています。
完了検査率の推移
※国土交通省「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」(平成26年7月)掲載の、特定行政庁(建築主事)の完了検査率(検査済証交付件数÷確認件数)から抜粋。
平成10年度は、特定行政庁が確認した建物のうち、検査済証まで受けたのは38%でした。つまり、平成の初めごろまでに建った家で検査済証がないのは、むしろ普通のことです。検査済証がないことだけで違反建築とは決まりません。
ただし、検査を受けていない以上、確認を受けた図面どおりに建てられたかは証明できません。同じガイドラインは、国の研究会の報告書を引いて、中古住宅の取引で金融機関が融資の判断に検査済証を求める場合が多いと指摘しています。違反がなくても、検査済証がないこと自体が買主のローンや価格に影響するということです。
検査済証を紛失しただけなら、台帳で記録を確かめられる
検査済証を受けていたのに書類をなくしただけなら、区役所の建築課で台帳記載事項証明書を取ると、確認や検査の記録を確かめられることがあります。江東区の案内では、手数料は1件300円、請求は窓口のみで、住居表示ではなく建築当時の地番と建築主名を調べておく必要があるとされています。
記録がなければ、建築士による法適合状況調査という方法も
国交省は平成26年に、検査済証のない建物について、指定確認検査機関などが図面と現地を照合して法適合状況を調べる方法をガイドラインで示しました。このガイドラインは令和7年4月1日に「既存建築物の現況調査ガイドライン」に統合されています。
調査の報告書は検査済証とみなされるものではありません。それでも、確認済証の図面と現地を照合した結果が書面になるため、買主や金融機関に説明する材料になります。確認済証もない場合は、建築士に現状の図面(復元図面)を作ってもらうところから始まります。
建蔽率・容積率オーバーを数字で確かめる
建蔽率は敷地面積に対する建築面積(建物を真上から見た面積)の割合、容積率は敷地面積に対する延べ面積(各階の床面積の合計)の割合です。上限は用途地域ごとの指定値で決まりますが、容積率には前面道路の幅による上限も重なります。
建築基準法52条2項により、前面道路の幅が12m未満なら、道路の幅のメートル数に、住居系の用途地域では原則10分の4、その他の地域では原則10分の6をかけた数値も上限になります。指定容積率と比べて、小さい方が実際の上限です。
計算例:敷地80㎡、前面道路4mの家
第一種住居地域で、指定建蔽率60%・指定容積率200%、前面道路の幅4mの敷地80㎡を例にします。建築面積の上限は80㎡×60%=48㎡です。容積率は、道路の幅による上限が4×0.4=160%で、指定の200%より小さいため160%が上限となり、延べ面積は128㎡までです。
新築時は1階48㎡・2階48㎡の延べ96㎡で、建蔽率60%・容積率120%と基準内だったとします。その後、1階に確認を取らずに10㎡の部屋を増築すると、建築面積は58㎡で建蔽率72.5%となり、上限を10㎡超えます。さらに3階部分を30㎡増築すると延べ136㎡、容積率170%です。指定の200%だけを見れば余裕があるように見えますが、道路の幅で計算した160%を8㎡超えています。
このように、指定値だけ見て「まだ大丈夫」と思っていた家が、道路幅を入れると超えていることがあります。反対に、角地として特定行政庁が指定する敷地や、防火地域・準防火地域で一定の耐火性能を持つ建物は、同法53条3項で建蔽率に10%が加算されるため、計算し直すと違反ではなかったという場合もあります。ガレージや一定の地下室には延べ面積に算入しない扱いもあるため、自分で結論を出さず、建築士や不動産会社に計算してもらうのが確実です。
無確認の増築と、2025年4月からのリフォームの扱い
違反建築でよく見られるのは、建てた後の増築です。建築基準法6条2項は、防火地域・準防火地域の外で、増築する部分の床面積が10㎡以内なら建築確認を不要としています。裏を返すと、防火地域・準防火地域の中では、小さな増築でも確認が必要です。
都市部の住宅地では防火地域や準防火地域に指定されている場所が多く、「10㎡以内だから大丈夫」と思って増築したサンルームや物置部屋が、確認のない増築になっていることがあります。ベランダを部屋にした、車庫の上に部屋を載せたといった工事も同じで、床面積が増えれば建蔽率や容積率の計算にも響きます。
2025年4月以降は「買ってから大規模リフォーム」もハードルが上がった
2025年4月から、木造2階建ての戸建てなどで行う大規模なリフォームは、建築確認の対象になりました。国交省は、主要構造部(壁・柱・床・はり・屋根・階段)の一種以上について行う過半の改修を例に挙げています。確認をせずに工事をした建築主には、同法99条で1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が定められています。
国交省の案内には、現行法に適合していない箇所があれば別に適合させる工事が必要な場合があるとも書かれています。違反部分を残したまま、買った後に全面的に直して住むという計画は立てにくくなりました。買主がこの点を気にする分、売主が違反の内容を具体的に示せるかどうかの重みが増しています。
違反の種類別に見る、売り方の目安
違反の中身によって、是正にかかる手間と、現実的な買い手が変わります。よくある3つの型を比べます。表のうち「検査済証なし」だけは、記録を取り寄せたり適合状況を調べたりすることで、違反がないことを示せる可能性がある型です。ほかの2つは、面積や構造が実際に基準を超えているため、書類をそろえるだけでは解消しません。
違反の種類と売り方
| 建蔽率・容積率超過 | 検査済証なし | 無確認の増築 | |
|---|---|---|---|
| よくある原因 | 増築・道路幅の見落とし | 完了検査を未受検 | 防火地域内の小増築 |
| 是正の方法 | 減築・一部撤去 | 台帳確認・適合調査 | 撤去か確認の取り直し |
| 主な買い手 | 現金購入者・買取業者 | 一般の買主も候補 | 現金購入者・買取業者 |
| 先にすること | 超過面積の計算 | 記録の取り寄せ | 増築時期の特定 |
※一般的な傾向です。複数の違反が重なっている場合や、構造・防火の違反がある場合は個別の判断になります。
減築して直すか、現状のまま売るか
増築部分を取り壊す減築で基準内に戻せれば、一般の買主が住宅ローンを使える可能性が出てきます。ただし、減築にも工事費がかかり、取り壊した分だけ床面積は減ります。工事の費用と期間をかけても、売却価格の上がり幅がそれを下回ることもあります。
判断の目安は、減築後の家に、一般の買主がローンを組んででも欲しいと思う立地と状態が残るかどうかです。建物が古く、買主が建て替えや大規模な改修を前提にするような家なら、減築にお金をかけず、現状のまま違反を前提に買う相手に売った方が手元に残る金額が多いこともあります。見積もりを取り、両方の手取り額を並べてから決めてください。
是正するなら、工事の前に役所へ相談する
減築などで直す場合は、工事の前に建築士に是正の計画を立ててもらい、特定行政庁の窓口に相談するのが順序です。国交省のガイドラインも、建物の違反事実の確定や是正の指導は特定行政庁の権限であり、調査で適合を確認できない点があれば特定行政庁に相談する必要があるとしています。
自己判断で一部を壊しただけでは、基準に合ったことを証明する書類が残りません。是正の後に建築士の調査報告書などで適合状況を書面にしておけば、売却のときに「どこを、どう直したか」を買主や金融機関に示せます。工事の規模によっては、是正工事そのものに建築確認が必要になる場合もあります。
住宅ローンが使いにくいことで、買い手はどう変わるか
違反建築が売りにくい最大の理由は、買主の資金の手当てです。金融機関は担保になる建物が法令に適合しているかを重視するため、違反が分かっている建物や検査済証のない建物は、融資の対象外とされたり評価が下がったりすることが多いと言われます。扱いは金融機関ごとに違い、一律の基準が公表されているわけではありません。
ローンを使えない場合、買い手は現金で買える個人、投資家、訳アリ物件を扱う買取業者などに絞られます。仲介で一般の買主を探すと、内覧で気に入ってもらえても融資の段階で話が止まり、売り出しが長引くことがあります。売り出す前に、買主がローンを使える見込みがあるのかを不動産会社と確認しておくと、売り方の選択を誤りにくくなります。
貸して収益を得る方法もありますが、違反部分を含めた安全性や、是正を求められた場合の対応は所有者が負います。借主に違反の事実を伝える必要もあり、貸すか売るかは、修繕費や固定資産税を払い続ける負担と合わせて比べることになります。
告知と契約で揉めないために、売主がしておくこと
違反建築の売買でトラブルになりやすいのは、契約後に違反が見つかる場面です。民法562条は、引き渡した物が契約の内容に適合しないとき、買主が修補などを請求できると定めています(契約不適合責任)。代金の減額、損害賠償、契約の解除につながることもあります。
「免責特約があるから大丈夫」とは限らない
買取業者への売却などでは、売主が契約不適合責任を負わない特約を結ぶことがあります。しかし民法572条は、そうした特約があっても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れないと定めています。知っている違反や増築の経緯は、免責の契約でも必ず伝えてください。
売却までの流れは、次のように進めると説明の漏れを防ぎやすくなります。
違反建築の家を売るまで
- 記録を集める確認済証・検査済証、台帳記載事項証明書、登記
- 違反の中身を特定超過面積、増築の時期と範囲を数字で把握
- 是正するか決める減築の見積もりと現状売却の価格を比べる
- 告知書に書く分かっている違反と不明な点を分けて記載
- 契約・引き渡し違反を前提にした条件を契約書に明記
※相続した家の場合は、売却の前に相続登記が必要です。
相続した家では、増築の経緯を知る人がいないこともあります。登記簿の床面積と今の建物の大きさを比べる、古い写真や固定資産税の課税明細書の床面積を見る、といった方法で増築の時期をある程度たどれることがあります。分からない点は「不明」と書き、推測で「違反はない」と書かないことが大切です。売却前に確かめておきたい書類は売却前の準備のページにもまとめています。
違反の内容を調べたうえで、現状のまま買い取ります
MAIVERSEは中央区・墨田区・江戸川区・台東区・江東区の城東エリアに特化し、宅地建物取引士が直接ご相談に対応しています。役所の記録や図面から違反の中身を確かめたうえで、減築などをせずに現状のまま買い取る価格をご提示します。これまでに足立区西新井5丁目の建蔽率・容積率オーバーの違反建築戸建や、墨田区八広3丁目の違反建築戸建を買い取りました。相続が絡む場合は、弁護士・司法書士・税理士と連携して進めます。
違反建築の家を売る前に、区役所で取っておきたい2つの書類
売却の相談をする前に、区役所の建築課で次の2つを取っておくと、違反の有無や中身の見当がつきやすくなります。どちらも窓口での請求が基本で、建築当時の地番や建築主名が分かると探しやすくなります。
1つ目は台帳記載事項証明書です。建築確認と検査の記録が台帳に残っていれば、確認を受けた日や番号、検査済証の交付の有無が分かります。検査済証を受けていたことが分かれば、それだけで買主の受け止め方は変わります。
2つ目は建築計画概要書の写しです。確認を受けたときの敷地面積、建築面積、延べ面積、階数などが書かれており、今の建物と比べることで、どこが後から増えたのかを見当づけられます。江東区では、建築計画概要書の写しの交付も1件300円と案内されています。
この2つと登記簿、固定資産税の課税明細書がそろえば、違反なのか既存不適格なのか、どの程度の超過なのかを相談先と具体的に話せます。書類がそろわない段階でも、訳アリ物件の無料相談会で今分かっていることからお聞きします。
参考資料(2026年10月確認)
よくある質問
- Q違反建築の家を売ったら、売主が罰せられることはありますか?
- A売買そのものを罰する規定はありません。罰則の対象になるのは、特定行政庁の是正命令に従わない場合や、確認を受けずに工事をした場合などです。ただし、違反を知りながら告げずに売ると、民事上の責任を問われるおそれがあります。
- Q違反建築の家は、解体して更地で売った方がよいですか?
- A建物を解体すれば建物の違反の問題はなくなりますが、解体費がかかり、住宅用地の固定資産税の軽減もなくなります。土地に接道などの別の問題があればそれは残るため、解体前に土地として売れるかを確かめてから決めてください。
- Q固定資産税の課税床面積と登記の床面積が違うのはなぜですか?
- A増築した部分を登記せずにいると、固定資産税の調査では課税されていても、登記簿の床面積は古いままということがあります。この差は、確認を取らない増築があったことの手がかりになるため、売却前に両方の書類を見比べておくと役立ちます。
- Q未登記の増築部分がある家は、そのまま売れますか?
- A売ること自体はできますが、買主が住宅ローンを使う場合は、増築部分の登記を求められることが一般的です。現状のまま買取業者に売る場合は、登記をどうするかを契約で決めておけば、売主が先に登記を済ませなくても進められることがあります。
- Qマンションの専有部分を改装した場合も違反建築になりますか?
- A専有部分の内装の変更は、建物全体の建蔽率や容積率には通常影響しません。一方、バルコニーを部屋に取り込むなど共用部分に関わる工事は、管理規約違反や建物全体の法令適合に関わることがあるため、管理組合への確認が必要です。
- Q違反建築の相談をしたら、役所に通報されませんか?
- A不動産会社や建築士への相談は、売却や是正の方法を検討するためのものです。ただし、是正工事や建て替えで建築確認を申請する段階では違反の状態も含めて審査されるため、計画の早い段階で事実を整理し、役所への相談の進め方も専門家と決めておくと安心です。


