中央区の防火地域・準防火地域にある古い木造|建て替え費用と売る判断

この記事の要点
- 防火地域では階数3以上または延べ面積100㎡超で耐火建築物が必要になり、2階以下かつ100㎡以下なら準耐火建築物以上で建てられる(建築基準法施行令136条の2)
- 準防火地域では地階を除く4階以上または延べ面積1,500㎡超で耐火建築物、3階建てや500㎡超は準耐火建築物以上、500㎡以下の2階建ては外壁・軒裏の防火構造などで足りる
- 東京都の「新たな防火規制」の指定区域に中央区はなく、敷地が防火地域か準防火地域かは中央区都市計画情報等閲覧システムで調べられる
- 防火地域・準防火地域では増築が10㎡以内でも建築確認が必要で、建て替える・直す・売るの判断は、建て替え後の規模と費用で分かれる
こんな方に読んでほしい記事です
- 中央区にある古い木造の家が防火地域か準防火地域にあり、建て替えると費用が高くなると聞いて不安に思っている
- 建て替える、直して使う、今のまま売る、のどれにするかを決める前に、制限の中身を条文のレベルで知りたい
- 建築費が上がる分が、売るときの価格にどう響くのかを知りたい
防火地域・準防火地域にある古い木造住宅も、建て替えることも、売ることもできます。ただし建て替える場合は、建物の階数と延べ面積(各階の床面積の合計)で必要な構造が決まり、条件によっては木造のままでは足りず、建築費が大きく上がります。
中央区では、区が独自に上乗せした防火の規制を探すより、国の建築基準法と、都市計画で定められた地域の区分を確かめることが先です。東京都が木造密集地域に準耐火建築物以上を求める「新たな防火規制」の指定区域は、東京都都市整備局の一覧で中央区は「なし」と表示されています。確かめる対象は、敷地が防火地域と準防火地域のどちらか、そして建て替えた後の規模の2つです。
この記事では、制限の中身を条文から表に整理し、建築費の差の計算例、直して使う場合の注意、売る場合の考え方を順に書きます。再建築そのものができるかという接道義務の話は、接道義務の仕組みと判定手順のコラムで別にまとめています。中央区全体の売却のご相談は、中央区の不動産売却のご案内からお問い合わせいただけます。

階数と広さで、建物に求められる構造が決まる
防火地域と準防火地域は、火災が燃え広がりやすい市街地を守るために、都市計画で定められる地域です。建築基準法61条は、この地域内の建物について、隣家からの火が及びやすい外壁の窓や戸に防火設備を付けること、壁・柱・床などを火災に耐える性能にすることを求めています。屋根も62条で、火の粉で燃え広がりにくい構造にする決まりです。
性能の水準は、建築基準法施行令136条の2に、建物の規模ごとに書かれています。条文を読み解くと、次の表のようになります。
防火・準防火地域の制限一覧
| 建物の規模 | 防火地域 | 準防火地域 |
|---|---|---|
| 2階以下・100㎡以下 | 準耐火建築物以上 | 外壁・軒裏を防火構造に |
| 2階以下・100㎡超500㎡以下 | 耐火建築物 | 外壁・軒裏を防火構造に |
| 2階以下・500㎡超1,500㎡以下 | 耐火建築物 | 準耐火建築物以上 |
| 3階建て(1,500㎡以下) | 耐火建築物 | 準耐火建築物以上 |
| 4階以上、または1,500㎡超 | 耐火建築物 | 耐火建築物 |
※施行令136条の2の内容を一般住宅向けに要約したものです。耐火・準耐火と同等以上の延焼防止性能を持つ建物でも足りる書き方になっており、窓や戸の防火設備は別に必要です。
耐火建築物は、火災が終わるまで倒壊や延焼を防ぐ性能を持つ建物で、鉄筋コンクリート造や鉄骨造が一般的です。準耐火建築物は、それより低い、一定時間の火災に耐える建物です。木造でも、国土交通大臣の認定を受けた耐火構造の仕様や、準耐火構造の仕様であれば、この区分に入ります。
古い木造の2階建てを、同じ程度の規模で建て替えるなら、防火地域でも延べ面積が100㎡以下であれば準耐火建築物で足ります。準防火地域なら、500㎡以下の2階建てに求められるのは、外壁と軒裏の防火構造などです。差が大きくなるのは、3階建てにする、100㎡を超える広さにするといった場面です。
数字の読み方で迷いやすい3点
1つ目は、階数の数え方です。条文は準防火地域について「地階を除く階数」と書いていますが、防火地域の「階数が3以上」にはその書き方がありません。地下室や半地下のある家を建て替える場合は、数え方を設計者や確認検査機関に確かめてください。
2つ目は、延べ面積の線引きです。防火地域の100㎡は、1㎡でも超えれば耐火建築物の側に入ります。増築や間取りの変更で床面積が増える計画は、先にこの線を超えるかどうかを見ておく必要があります。
3つ目は、窓や戸の防火設備が必要な範囲です。建築基準法2条6号の「延焼のおそれのある部分」は、隣地境界線や道路の中心線から、1階は3m以下、2階以上は5m以下にある部分を指します。間口が狭く隣家と近い敷地では、多くの窓がこの範囲に入るため、サッシや玄関ドアの仕様で費用が変わります。
敷地が2つの地域にまたがる場合
建築基準法65条では、建物が防火地域と準防火地域にまたがる場合、その全体に防火地域の規定が適用されます。防火壁で区画されていて、防火地域の外にある部分に限り、準防火地域の規定で足りるとされています。
境の近くに敷地がある場合は、地図の上で線がどこを通るかで規制が変わります。「うちの敷地はどちら側か」を、あとで説明する閲覧システムで確かめておくと、設計の相談がスムーズに進みます。
中央区で、自分の敷地の区分を調べる方法
中央区は、「中央区都市計画情報等閲覧システム」を公開しています。調べたい地点の地図上に矢印を合わせて「矢印地点の情報を確認」を押すと、用途地域、容積率、建ぺい率、防火地域・準防火地域の別、地区計画、建築基準法上の道路種別などが表示されます。
注意点は、表示される内容が「参考図」とされていることです。中央区は都市計画図について、都市計画の内容を証明するものではなく、地図作成上の誤差があること、作成後に内容が変わっている場合があることを案内しています。敷地が地域の境に近い場合や、設計に使う場合は、窓口で確認する必要があります。
建て替え前に確認する順番
- 敷地の区分を調べる閲覧システムで防火・準防火の別と用途地域を見る
- 道路と接道を確かめる建築基準法上の道路種別を窓口で確認する
- 今の建物の書類を探す確認済証・検査済証・図面・増築の記録
- 建て替え後の規模を決める階数と延べ面積を上の表に当てはめる
- 構造別に見積もりを取る準耐火・耐火の仕様で施工会社に依頼する
※一軒ごとに条件が違うため、最終的な判断は建築士や確認検査機関への確認が必要です。
相談先は、課によって分かれています。防火・準防火地域や用途地域は都市計画課の都市計画係、建築基準法上の道路の種別は建築課の建築調整係、全体の入口は建築関係総合窓口とされています。最初の電話で「防火地域か準防火地域かを知りたい」と伝えれば、担当が案内されます。
もう1つ、確かめておきたいのが地区計画です。中央区は、区内の約8割の区域に16の地区で地区計画を定めていると案内しています。地区計画では、地区ごとに建物の用途や高さ、壁の位置などの制限が加わることがあり、防火の区分とは別に、一軒ごとに役所で確認が必要です。
古い木造を建て替えると、建築費はどこで変わるか
建築基準法には、建てたときは適法だった建物が、後の法改正で今の基準に合わなくなった場合でも、そのまま使い続けてよいという仕組みがあります(既存不適格)。違法ではないので、現状のまま住み続けることも、売ることもできます。
ただし、建物を壊して新築する場合は、新しい建物に現行の基準がすべて当てはまります。古い家が建っていたときの制限ではなく、建て替えの時点の防火地域・準防火地域のルールで計画を立てる必要があります。
規模の線引きで、建築費が変わる計算例
例として、敷地55㎡(約16.6坪)、建ぺい率80%の地域にある古い木造家屋を、防火地域で建て替える場合を考えます。建築面積は最大44㎡で、2階建てなら延べ面積88㎡、3階建てなら132㎡です。
2階建ての88㎡なら、100㎡以下なので準耐火建築物で足り、木造で建てられます。3階建ての132㎡にすると、防火地域では耐火建築物が必要になり、鉄骨造やRC造(鉄筋コンクリート造)、または認定を受けた耐火仕様の木造が候補になります。
建築費の概算の比べ方(例)
※国税庁の「地域別・構造別の工事費用表(令和8年分用)」の東京都の数値(木造24.0万円、鉄骨造41.2万円、RC造46.0万円/㎡)に延べ面積をかけた概算です。災害時の損失額を計算するための表で、実際の見積ではありません。木造の耐火仕様の上乗せ、解体費、設計監理費、外構は含みません。
同じ132㎡でも、一般的な木造の単価で計算した約3,168万円に対し、鉄骨造では約2,270万円、RC造では約2,900万円多くなります。もちろん、実際には木造でも耐火仕様にすれば単価が上がるため、差はこの図より小さくなる場合があります。それでも、規模が線を越えたときに、建築費の水準が一段変わることは変わりません。
図の2階建てと3階建ては床面積も違うため、単価だけの差ではありません。ここで見ていただきたいのは、「広さを求めて3階建てにすると、防火地域では構造の水準が変わる」という点です。2階建てのままで足りるのか、3階が必要なのかは、建て替えの目的から先に決めるのが現実的です。
建ぺい率の緩和と、税金の扱い
費用が増える一方で、耐火・準耐火の建物にすると得られるものもあります。建築基準法53条3項は、防火地域内の耐火建築物等と、準防火地域内の耐火建築物等・準耐火建築物等について、建ぺい率の限度を10%加えると定めています。角地などで特定行政庁が指定する敷地は、さらに10%加わります。
また、建ぺい率の限度が80%の地域では、防火地域内の耐火建築物等には建ぺい率の制限がかかりません(同条6項)。敷地が小さい場所では、建築面積を取りやすくなるのは利点です。ただし容積率や斜線制限、高さ制限は別に残るため、実際にどこまで広げられるかは設計者の確認が必要です。
税金では、新築住宅の固定資産税の減額があります。東京都主税局によると、居住部分で1戸あたり120㎡相当分までの税額が2分の1になり、期間は新たに課税される年度から3年度分で、3階建て以上の耐火・準耐火建築物は5年度分とされています。また、既存の住宅を取り壊して住宅を建て替える場合など、一定の要件を満たすときは、申告に基づいて住宅用地の特例が継続して適用されます。
建て替えずに直して使う場合に確かめること
建て替えず、今の建物を直して住み続ける、あるいは貸す場合にも、防火地域・準防火地域であることが工事の手続きに影響します。
1つ目は、増築です。防火地域・準防火地域の外では、増築部分の床面積が10㎡以内なら建築確認が不要ですが、この例外は防火地域・準防火地域には使えません(建築基準法6条2項)。防火地域・準防火地域内では、数㎡の増築でも建築確認の申請が必要になります。確認なしで増築した家の売り方は、確認申請なしの増築のコラムにまとめています。
2つ目は、大規模な修繕・模様替です。2025年4月の建築基準法の改正で、2階以上の木造住宅などでも、主要構造部(壁・柱・床・梁・屋根・階段)の過半を改修するような大規模な修繕・模様替には、建築確認が必要になりました。外壁や屋根をまとめて直す場合は、工事の範囲がこれに当たるかを、工事の前に確認検査機関か設計者に聞いてください。
3つ目は、窓や外壁、屋根を替える工事の仕様です。防火地域・準防火地域では、延焼のおそれのある部分の窓は防火設備にする必要があり、屋根も火の粉に耐える構造が求められます。見た目や断熱の改修のつもりで安価なサッシや屋根材に替えると、基準に合わなくなる場合があります。
既存不適格の建物の増築・修繕
既存不適格の建物は、増築や改築の範囲を一定の割合に収めれば、今の基準に合わせなくてよいとする緩和が建築基準法86条の7にあります。緩和の範囲は規定ごとに決まっており、どこまで使えるかは建物ごとに異なるため、一軒ごとに役所や設計者への確認が必要です。
建て替える・直す・現状で売る、3つの選択肢の比べ方
ここまでの内容を、3つの選択肢で比べると次のようになります。金額の大小よりも、「先にお金が出るか」「規制の負担を誰が負うか」の違いに注目してください。
3つの選択肢の比べ方
| 建て替える | 直して使う | 現状で売る | |
|---|---|---|---|
| 先に出る費用 | 解体・設計・建築費 | 工事の範囲で変わる | ほぼなし |
| 防火の規制 | 新基準を全面適用 | 工事内容ごとに確認 | 買主が負う |
| 手元に入る時期 | 完成後に住む・貸す | 工事後に住む・貸す | 売却後すぐ |
| 向く人 | 住み続けたい・資金がある | 当面は今の家を使う | 使う予定がない |
※一般的な傾向です。立地や建物の状態、規模によって変わります。
建て替えは、完成すれば新築の建物として長く使えますが、建築費に加えて仮住まいや解体の費用、工事中の期間が重なります。防火地域・準防火地域では、規模によって構造の水準が変わるため、見積もりの幅も大きくなります。
直して使う場合は、建て替えよりも負担が小さくなりやすい反面、工事の範囲によっては確認申請が必要になり、基準を満たす仕様に直す費用が見込まれます。今の建物の寿命と、直した後に何年使う予定かを併せて考えてください。
売る場合に、価格はどう動くか
買主が建て替えを前提に土地や家を買う場合は、その敷地で何階建て・何㎡の建物が建てられるか、その構造でいくらかかるかを見積もったうえで、価格を決めます。同じ広さの土地でも、防火地域か準防火地域か、建ぺい率や容積率がどうなっているかで、買主が出せる金額は変わります。
売主は、防火・準防火地域の別と、確認できる範囲の書類を先にそろえておくと、買主の検討が早くなります。不動産会社が買主に行う重要事項説明(契約前に物件の法令上の制限などを説明する手続き)でも、防火地域・準防火地域の別は説明の対象です。
古い建物を売る前に解体するかどうかは、慎重に考えてください。東京都主税局によると、1月1日時点で住宅が存在しない土地は住宅用地の特例の対象にならず、建物を取り壊した翌年度の土地の税額が上がることがあります。買主が建物を残して使う可能性もあるため、解体してから売るかどうかは、売り先と先に相談してから決める方が損をしにくくなります。
防火地域の古い家は、現状のままご相談いただけます
MAIVERSEは東京都中央区東日本橋に事務所があり、中央区・墨田区・江戸川区・台東区・江東区の城東エリアに特化した買取会社です。宅地建物取引士が直接ご相談に対応します。相続した空き家の売却では、遺産分割協議・相続登記にかかる費用を当社が負担しており、弁護士・司法書士・税理士とも連携しています。
売る前の準備や進め方は、売却前の準備のページに、買取の流れは買取の流れのページにまとめています。東日本橋・馬喰町に近いエリアのご相談は、東日本橋・馬喰町エリアの売却相談はこちらからどうぞ。
防火地域の古い木造を前に、今週確かめたい3つのこと
建て替えるか売るかを決めるのは、少し先でも構いません。次の3つは費用がほとんどかからず、どの選択肢でも後から役に立ちます。
1つ目は、中央区の都市計画情報等閲覧システムで、敷地の防火・準防火の別と用途地域を見て、画面の情報をPDFで保存することです。2つ目は、家の中や書類入れから、確認済証と検査済証、図面、増築や大きな修繕をしたときの書類を探すことです。見つからなくても、「ない」と分かるだけで、売るときの説明の仕方が決まります。
3つ目は、建て替えた場合に建てたい規模を、仮でも決めておくことです。2階建てで足りるのか、3階が必要なのかを決めておけば、上の表のどこに当たるかが分かり、見積もりも取りやすくなります。そのうえで、建て替える場合の見積もりと、売る場合の査定を並べて比べると、どちらの負担が重いかが見えてきます。
相続で引き継いだ家で、建物の状態や権利関係に不安がある場合は、訳アリ物件の無料相談会でもご相談いただけます。確認申請の書類がなく、増築部分の適法性が分からないといったときは、違反建築物の売却のコラムも参考にしてください。
参考資料(2026年10月確認)
よくある質問
- Q準防火地域で、木造3階建てに建て替えることはできますか?
- A延べ面積が1,500㎡以下であれば、準耐火建築物(または同等以上の延焼防止性能を持つ建物)として建てることができます。木造でも準耐火構造の仕様にすれば足りますが、外壁・窓・床などの仕様で2階建てより費用が上がるため、設計者に見積もりを取ってください。
- Q防火地域で、延べ面積が100㎡を少し超える程度でも耐火建築物にする必要がありますか?
- A条文上は、延べ面積が100㎡を超えると耐火建築物の区分に入ります。延べ面積の算定方法には細かい決まりがあるため、100㎡の近くになる計画は、設計者や確認検査機関に算定を確認してもらうのが確実です。
- Q今の古い木造が現在の基準に合っていないと、売れないのでしょうか?
- A建てたときに適法だった建物が、後の改正で今の基準に合わなくなった場合(既存不適格)は、そのまま売却できます。買主が建て替えるときに現行基準が適用される点を契約前に伝えておくと、行き違いを防げます。確認申請の書類がなかったり、確認なしで増築していたりする場合は、別途確認が必要です。
- Q耐火建築物にすれば、建ぺい率はいつでも上がりますか?
- A建ぺい率に上乗せされるのは、防火地域内の耐火建築物等や、準防火地域内の耐火建築物等・準耐火建築物等など、条文に定められた条件に当てはまる場合です。限度が80%の地域の防火地域内では制限がかからなくなりますが、容積率や斜線制限は別に残るため、広げられる面積は設計者の確認が必要です。
- Q外壁や屋根を張り替えるだけでも、建築確認が必要ですか?
- A主要構造部(壁・柱・床・梁・屋根・階段)の一種類以上について過半の改修を行うような大規模の修繕・模様替は、2025年4月の改正で小規模な木造住宅でも建築確認の対象になりました。工事の範囲が当たるかどうかは、工事の前に設計者や確認検査機関に確かめてください。


