江戸川区の長屋を売る前に|建て替えの可否・除却助成・手取りの目安

江戸川区の長屋を売る前に|建て替えの可否・除却助成・手取りの目安

この記事の要点

  • 長屋の1戸は、建物の登記と土地の持ち方に問題がなければ、隣の住戸の同意なしに現状のまま売ることができる
  • 売りにくさの原因は、自分の敷地だけで建て替えられるか、住宅ローンが使えるか、隣の住戸の状態の3点にある
  • 平井二丁目付近は不燃化特区で、江戸川区が老朽建築物の除却や建替えに助成を設けているが、対象や期限は契約前に区の窓口で確認が必要
  • 取得費が不明な相続の長屋を700万円で売る仮の例では、仲介手数料33万円、税額約128万円を引いて手元に約539万円が残る

こんな方に読んでほしい記事です

  • 江戸川区で、隣の家と壁がつながった長屋(連棟住宅)を相続した、または持っている
  • 「建て替えられない」「ローンが通らない」と言われ、どう売ればいいか分からない
  • 貸している長屋や、空いたままの長屋を手放すか、持ち続けるかで迷っている

江戸川区の長屋は、隣の住戸の同意がなくても、そのままの状態で売ることができます。売れにくくなる原因は「長屋だから」ではなく、建て替えができるか、住宅ローンが使えるか、隣の住戸の状態はどうかの3点にあります。この3点を先に切り分けると、売り先と手取りの見通しが立ちます。

この記事では、平井・小松川のように木造の古い建物が多い地域の事情と、除却(建物を取り壊すこと)への助成、売った後に手元へ残る金額の計算例を整理します。墨田区の長屋については墨田区の長屋の売却のコラムで書いているので、この記事では江戸川区ならではの点と、貸している長屋の売り方に重点を置きます。

長屋の1戸を手放す前の4ステップ
図解:長屋の1戸を手放す前の4ステップタップで拡大

江戸川区の古い長屋が、建て替えにくくなる背景

江戸川区の中でも、平井や小松川の一帯には、細い路地に木造の古い建物が建て込んだ地域があります。東京都は平井二丁目付近を不燃化特区(燃えにくいまちへの建て替えを集中的に進める地区)とし、江戸川区が老朽建築物の除却や建替えに助成を設けています。区は西小松川町の周辺でも、密集住宅市街地(古い木造が密集した市街地)の整備を進めています。

こうした地域の長屋は、昔の道幅のまま建てられていることが多く、今の基準では同じ形に建て替えられない場合があります。建築基準法では、敷地が幅4m以上の道路に2m以上接していなければ新築できません(接道義務)。そのうえで東京都建築安全条例が、長屋の各戸の出入口の位置や、道路へ通じる通路の幅を定めています。

長屋の1戸だけを買った人は、解体して新築しようとしても、自分の敷地だけでは条件を満たせないことがあります。買主はこの点を気にするため、価格や売れるまでの期間に影響が出やすくなります。

自分の住戸の敷地だけで、建て替えられる?

YES更地にして売る、建て替えて売るという選択肢が広がる。除却助成の対象かも確認する
NO解体しても建てられない。現状のまま売る方法と、隣家との協力を先に検討する

建て替えられるかどうかは、前面の路地が建築基準法上の道路かどうか、敷地が道路に何m接しているかで決まります。江戸川区役所の建築指導の窓口で確認でき、同じ町内でも一軒ごとに結果が違うため、近所の話をそのまま当てはめないでください。再建築不可の家全般の考え方は、再建築不可物件の売却のコラムにまとめています。

不燃化特区の除却助成は、売る前にどう確かめるか

平井二丁目付近のような不燃化特区では、古い建物を取り壊すときの費用の一部に助成が出る仕組みがあります。更地にしたあとで売ることを考えている方にとっては、解体費の負担を軽くできる可能性があります。

ただし、助成の対象になる建物の古さ、金額、申請の期限、工事の契約前に申請が必要かどうかは、年度や制度の改正で変わります。この記事の執筆時点で、助成金額や期限を確認できた資料はありません。数字を決めつけず、解体業者と契約する前に江戸川区の担当窓口へ問い合わせてください。

契約前に確認したい順番
先に解体工事を始めてしまうと、助成の対象外になるおそれがあります。見積書を取ったら、契約や着工の前に、区の窓口で「この建物と工事が対象か」を確かめてください。

また、長屋の自分の住戸だけを解体すると、隣の住戸の壁がむき出しになります。補強や防水の費用を誰が負担するか、工事中の傷みをどう扱うかを、隣の持ち主と書面で取り決めておく必要があります。助成の対象になるのは自分の住戸の除却部分だけで、隣家の補修費は別に考える場合が多くなります。

貸している長屋、空いている長屋で買主が見るところ

江戸川区の長屋は、もともと貸家として建てられたものも多く、今も入居者がいる、または空いたままのものがあります。売るときに買主が見る点は、住んでいる家とは少し違います。

入居者がいる場合

入居者がいるまま売ることもできます。この場合は、居住用というより収益物件(家賃収入を目的に買う物件)として見られます。賃貸借契約書、家賃の入金記録、敷金の預かり額、修繕の履歴をそろえておくと、価格の根拠を説明しやすくなります。

入居者に立ち退いてもらってから売る場合は、立退料が必要になることがあります。借地借家法では、貸主が契約の更新を拒むには正当な事由が必要とされています。立退料の額は事情で大きく変わるため、先に弁護士か不動産会社に相談してください。

空き家のままの場合

空いたままの長屋で一番困るのは、隣の住戸への影響です。雨漏りやシロアリ、草木の繁茂が、つながった隣の住戸に及ぶことがあります。売る時点で傷みが分かっているなら、査定の前に買取業者へ伝えておくと、あとで価格の話がこじれません。

空き家の固定資産税は、住宅用地の特例(住宅が建っている土地の税額を軽くする仕組み)があるため、取り壊して更地にすると上がります。解体するかどうかは、売却の見通しが立ってから決めても遅くありません。放置した場合の負担は空き家・訳アリ物件を放置するリスクのページで案内しています。

売り先ごとの違いと、手元に残る金額の計算例

長屋の1戸の売り先は、隣の住戸の持ち主、現金で買う個人や投資家、長屋を扱う買取業者、長屋全体をまとめて買う人の4つです。住宅ローンが使いにくいため、一般の買主に仲介で売る場合は、買い手が現金で買える人に絞られます。

売り先ごとの違い

隣の持ち主 個人・投資家 買取業者
価格 条件が合えば高め 相場に近い 低めになりやすい
期間 相手次第 数か月以上 短い
現状のまま 可 要相談 可

※一般的な傾向です。物件ごとに大きく異なります。

手元に残る金額は、売却価格から仲介手数料と税金を引いて考えます。次の計算は、相続した長屋で購入時の資料がなく、所有期間が5年を超えている場合の仮の例です。

手取りの計算例(仮)

売却価格700万円
仲介手数料33万円
譲渡所得税約128万円
手元に残る額約539万円

※価格・費用は仮の数字です。空き家特例などで税額は変わります。

国税庁の説明では、譲渡所得は「売却金額から取得費と譲渡費用を引いた額」で、取得費が分からない場合は売却額の5%を取得費にできます。この例では700万円の5%の35万円を取得費とし、仲介手数料33万円を譲渡費用とすると、譲渡所得は632万円です。所有期間が5年を超える場合の税率は、所得税15%、復興特別所得税、住民税5%の合計で約20.315%なので、税額はおよそ128万円になります。

相続した家の所有期間は、亡くなった方の取得時期から数えます。仲介手数料は、800万円以下の物件なら2024年7月から上限が税込33万円までとなる特例があり、この例ではその額を使いました。ただし条件を満たせば、被相続人の居住用家屋を売ったときの3,000万円特別控除が使える場合もあります。区分所有の登記がされている長屋は対象外になることがあるため、税理士に確認してください。

隣の住戸・長屋全体との話し合いは、この順番で進める

長屋は、隣の住戸の持ち主との関係が売却の進めやすさを左右します。話を始めるときは、価格の交渉より先に、売るつもりであることと、検討する気があるかを聞くところから入ると角が立ちません。

隣家との話し合いの順番

  1. 登記の確認隣の建物と土地の持ち主を法務局で調べる
  2. 売る意向を伝える価格より先に、売るつもりと相談したいことを伝える
  3. 買う気があるか聞く買う場合は、価格の決め方を第三者の査定でそろえる
  4. 切り離し・補修の合意工事の内容と費用の負担を書面にする
  5. 売り先を決める隣家・買取業者・まとめ売りの条件を並べて比べる

隣の住戸の持ち主が高齢や遠方で、連絡が取りにくい場合もあります。その場合は、登記簿の住所に手紙を送る、親族を通して連絡する、といった方法があります。それでも連絡が取れないときは、隣家の承諾が不要な「現状のまま売る」道に絞って考えると、時間を無駄にしません。

長屋全体をまとめて売る方法は、全戸の持ち主がそろわないと進められませんが、普通の土地として評価されやすくなります。相続でいくつかの戸が同時に空き家になったときなどは、一度は話題にしてみる価値があります。

長屋の1戸も、登記と道路の確認からご相談いただけます
MAIVERSEは中央区・墨田区・江戸川区・台東区・江東区の城東エリアに特化した買取会社です。事務所のある東日本橋(馬喰横山駅)から、都営新宿線で江戸川区へ一本で行けます。宅地建物取引士が直接ご相談に対応し、江戸川区江戸川1丁目の再建築不可の築古戸建を買い取って再販売した実績もあります。相続した空き家の売却では、遺産分割協議・相続登記にかかる費用を当社が負担し、弁護士・司法書士・税理士とも連携しています。

江戸川区の長屋を手放す前に、今週中にそろえておきたい3つ

売ると決めていなくても、次の3つを調べておくと、判断の材料が増えます。どれも法務局や区役所で入手でき、費用は数百円から数千円程度です。

  • 01建物と土地の登記事項証明書区分建物か1棟の共有か、土地は単独か共有かを確かめる
  • 02前面の路地の種別江戸川区の窓口で、建築基準法上の道路かどうかを聞く
  • 03隣の住戸の状態空き家か、傷みはないか、持ち主に連絡が取れるかを確かめる

この3つがそろうと、仲介で買い手を探すか、買取で早く手放すか、隣家と話を進めるかの見通しが立ちます。平井・小松川・一之江・小岩など、江戸川区のエリアごとの相談は平井・小松川・船堀エリアのページや江戸川区のページでも案内しています。権利が複雑で何から手をつけるか迷うときは、訳アリ物件の無料相談会をご利用ください。

参考資料(2026年10月確認)

よくある質問

Q江戸川区の長屋を解体するとき、不燃化特区の助成は誰でも受けられますか?
A助成の対象になるのは、不燃化特区の区域内にある一定の条件を満たす建物に限られます。建物の古さ、申請の時期、契約や着工の前に申請が必要かどうかは江戸川区の窓口で確認してください。
Q長屋の1戸に入居者がいても売れますか?
A入居者がいるまま、収益物件として投資家や買取業者に売ることができます。賃貸借契約書、家賃の入金記録、敷金の預かり額をそろえておくと、価格の根拠を説明しやすくなります。
Q隣の住戸が空き家で連絡が取れない場合、売却は進められますか?
A隣家の承諾が要らない、現状のままの売却であれば進められます。切り離しや建て替えは隣家との合意が前提になるため、現状のまま買い取る業者に絞って相談すると話が早くなります。
Q相続した長屋の取得費が分かりません。税金はどう計算しますか?
A取得費が分からない、または売却額の5%未満の場合は、売却額の5%を取得費にできます(概算取得費)。所有期間は亡くなった方の取得時期から数えるため、多くの場合は長期の税率が適用されます。
Q長屋の1戸を解体して更地にすると、固定資産税はどうなりますか?
A住宅が建っている土地に適用される住宅用地の特例が外れ、土地の税額が上がります。解体するかどうかは、売却の見通しを立ててから決めても遅くありません。

監修

三好 舞代表取締役/宅地建物取引士

株式会社MAIVERSE代表取締役。宅地建物取引士。中央区・墨田区・江戸川区・台東区・江東区の城東エリアで空き家・訳アリ物件の買取に携わり、再建築不可・借地権・相続空き家などのご相談に直接対応している。弁護士・司法書士・税理士と連携し、相続不動産の売却をワンストップで支援。