私道に面した家は売れる?持分・通行掘削承諾の確認ポイントと対処法

この記事の要点
- 私道に面した家も売却できるが、道路の種類・私道の持分・通行掘削の承諾の3点が書類で説明できるかで難しさが決まる
- 位置指定道路と2項道路では建て替え時の扱いが異なり、前面道路の種類は役所の建築関係の窓口で確認できる
- 令和5年4月1日施行の民法213条の2により、承諾が得られない場合も通知と償金を前提に水道・ガスの設備を設置できる場合があるが、通行の権利は別の規定で判断される
- 承諾書は署名者が現在の登記名義人か、将来の所有者に引き継がれる文言があるかの確認が必要で、承諾が取れない場合は現状のまま買取に出す選択肢もある
こんな方に読んでほしい記事です
- 前の道が私道で、売却のときに「通行・掘削の承諾書が要る」と言われた
- 登記を見たら、自分の家に私道の持分があるのかないのか分からない
- 隣の所有者が承諾書に署名してくれない、または連絡がつかない
私道に面した家は、売ることができます。ただし、前の道の種類と、その道に対する自分の権利(持分)が分からないまま売りに出すと、買主の融資審査や契約の直前で止まることがあります。最初に確かめるのは、道路の種類、私道の持分の有無、通行・掘削の承諾の有無の3点です。
この記事では、読者の方が実際に抱きやすい疑問を順番に取り上げ、確認の方法、承諾が得られないときの法律上の考え方、費用の目安、売り先ごとの違いまでを整理します。道路と接道の基本は再建築不可と接道義務のコラム、再建築できない家の売却全般は再建築不可物件の売却のコラムにもまとめています。

Q. 私道に面した家は、そもそも売れるのですか
売れます。私道に面した家は、都市部の住宅地ではごく普通に取引されています。購入した方が毎日その道を通って暮らしている物件も多く、私道であること自体が売却の妨げになるわけではありません。
売れにくくなるのは、買主が将来の不安を持つ場合です。具体的には、建て替えの許可が下りるのか、水道やガスの管を入れ替える工事ができるのか、道の所有者から通行を止められないか、という3つです。住宅ローンを使う買主の場合、金融機関によっては、これらを確認する書類として承諾書の提出を求められることがあります。
つまり、私道に面した家の売却は「道の権利関係を、書類で説明できるか」で難しさが決まります。持分があり、道路の種類も建築基準法上の道路であれば、普通の家と大きく変わりません。持分がなく承諾書もない、または共有者の所在が分からないといった場合に、売却の難度が上がります。
前の私道の、持分や通行・掘削の承諾は確認できている?
Q. 自分の家の前の道が、どの種類の私道なのか、どう調べますか
私道と一口に言っても、建築基準法上の位置づけが異なります。主なものは、道路位置指定を受けた「位置指定道路」と、幅4m未満でも道路とみなされる「2項道路」です。このほか、建築基準法上の道路に当たらない通路もあります。
調べる窓口は、市区町村の建築指導課(東京23区では区役所の建築関係の担当課)です。道路の種類を記した図面や台帳を閲覧でき、窓口で「前面道路の種類を教えてください」と住所を伝えれば確認できます。東京都の建築指導のサイトでも、道路の種類の説明が公開されています。
私道の主な種類と特徴
| 位置指定道路 | 2項道路 | |
|---|---|---|
| 幅員 | 4m以上 | 4m未満もある |
| 指定の方法 | 行政が位置を指定 | 昭和25年当時から存在 |
| 建て替え時 | そのまま接道できる | 中心から2mまで後退 |
※建築基準法42条の整理です。個別の道は自治体に確認が必要です。
位置指定道路は、土地の所有者が築造した幅4m以上の道について、行政が位置を指定したものです。2項道路は、建築基準法が適用された時点で既に建物が並んでいた幅4m未満の道で、建て替えのときに道の中心線から2mの位置まで敷地を後退させる(セットバック)ことが求められます。
種類が分かると、売却の注意点も絞れます。2項道路であれば、後退させた部分の扱いと、買主が建て替えるときの有効な敷地面積を説明できるようにしておく必要があります。位置指定道路であれば、道の所有者が誰か、維持管理の取り決めがあるかが主な論点になります。
道の所有関係は、法務局で土地の全部事項証明書(登記簿)を取って確かめます。私道の土地が1筆(ひとつの土地)で複数人の共有になっている「共有型」と、道を区画ごとに分けて各家が自分の部分を持つ「分筆型」があり、家の前の道がどちらなのかで確認すべき書類が変わります。
Q. 持分がない、または共有者がいる場合、何が問題になりますか
持分とは、私道の土地を所有する権利の割合のことです。持分がある場合は、その道の所有者の1人として通行や掘削ができます。持分がない場合は、他人の土地を通って公道に出ることになるため、通行や掘削について所有者の承諾が必要かどうかが問題になります。
共有型の私道では、持分を持つ共有者が複数いるため、売却や工事の承諾を得る相手も複数になります。分筆型では、家の前に他人の私道の土地が続いていて、そこを通らないと公道に出られない形になることがあります。
状況ごとの確認先
- 01持分あり・共有型共有者全員の承諾書を求められることがある。連絡先の確認が先
- 02持分なし・他人の私道道の所有者から通行・掘削の承諾書を取ることを検討する
- 03持分あり・分筆型自分の部分を所有していれば、先の部分の所有者の承諾が論点
私道の所有者が分からない、連絡がつかない、あるいは相続が重なって所有者が増えているというケースもあります。このとき、承諾書は「署名してもらえるかどうか」だけでなく「誰に署名してもらうのか」を確定させる作業から始まります。相続人の調査は、司法書士が戸籍を追って行います。
もうひとつ、持分の売買に関する落とし穴があります。家と一緒に私道の持分も売る契約をしたのに、持分の所有権移転の登記を忘れる、あるいは契約書の対象物件に持分を書き忘れる、という行き違いです。後から私道の持分だけが元の所有者の名義に残ってしまい、買主との間で争いになることがあります。売買契約書と登記の対象に、私道の持分が含まれているかを確認してください。
Q. 通行・掘削承諾書には、何を書いてもらえばよいですか
通行・掘削承諾書は、私道の所有者が、その道を通行することと、水道・ガス・排水の管を埋める工事のために道を掘ることを認める書面です。口約束では、所有者が変わったときや、金融機関の審査で確認が取れず、使えない場合があります。
書面に入れる項目を整理すると、次の5点になります。なお、書式は不動産会社や司法書士が用意するのが一般的で、金融機関ごとに求める記載が異なることがあります。
承諾書の確認項目
- 署名者は登記上の所有者か登記簿の名義人と一致するか。共有なら全員分
- 通行の範囲と無償かどうか人と車の通行、有償・無償を明記する
- 掘削の範囲給水・排水・ガスなど、工事の対象を書く
- 将来の所有者への引継ぎ買主や相続人にも承諾が及ぶ旨を入れる
- 印鑑証明書の添付署名と実印を押し、印鑑証明書を付ける
特に見落とされやすいのが、4番目の「将来の所有者への引継ぎ」です。承諾書は、署名した人と売主の間の約束にとどまります。私道の所有者が売却や相続で代わったとき、新しい所有者が当然に拘束されるとは限りません。引継ぎの文言を入れても、完全に防げるわけではない点は、買主に説明しておくべきです。
2つめの落とし穴は、署名者の確認です。親の代に書いてもらった承諾書の所有者が、すでに亡くなっていたり、土地を手放していたりすることがあります。承諾書の日付と、登記簿の現在の名義人を見比べて、署名者が今の所有者かどうかを確かめます。
Q. 承諾書をもらえない場合、法律上は通行や工事ができないのですか
承諾書が得られない場合でも、法律上は、通行や設備の設置が一切できなくなるとは限りません。民法には、他の土地を通る権利や、設備を設ける権利が定められています。ただし、これらは「承諾書がなくても自由にできる」という意味ではなく、条件や手続き、償金(対価)の支払いがあります。
通行について:公道に出るための通行権
民法210条は、他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者に、囲んでいる土地を通る権利を認めています。通る場所と方法は、通行する人に必要で、かつ他の土地の損害が最も少ないものを選ぶ必要があります(民法211条)。通行する人は、通る土地の損害に対して償金を支払うのが原則です。
また、最高裁判所の平成12年1月27日の判決は、建築基準法42条2項の道路(2項道路)について、日常生活に不可欠な通行をしている人は、道の所有者の妨害行為の排除を求める権利を持つ、という考え方を示しました。同じ判決は、未舗装で徒歩や二輪車が通ってきた道に、駐車のために車を通したいという請求は認めませんでした。通行の目的や、これまでの使われ方によって結論が変わる点に注意が必要です。
水道・ガスについて:ライフライン設備の設置権
令和5年(2023年)4月1日に施行された改正民法で、新たに213条の2が設けられました。他の土地に設備を設置したり、他人の設備を使用したりしなければ、電気・ガス・水道水の供給などを受けられないとき、必要な範囲で設備を設置・使用できる、という規定です。
民法213条の2の主なルール
- 01事前に通知する目的・場所・方法を、土地の所有者と使っている人に知らせる
- 02損害が最も少ない方法設置や使用の場所・方法は、他の土地の損害が最小になるものを選ぶ
- 03償金・費用の負担設置で生じた損害の償金、他人の設備を使う場合は利益に応じた費用負担がある
ここで押さえたいのは、この権利は「承諾書が不要になった」という意味ではない、という点です。承諾書は、あらかじめ書面で認めてもらう合意です。一方、213条の2は、合意が得られない場合に備えた法律上の権利で、通知の手続きと償金の支払いが前提になります。実際に争いになれば、必要性や場所・方法が問われます。
また、この規定は水道やガスなどの設備に関するもので、通行そのものを認める規定ではありません。通行については、先に挙げた囲繞地通行権や、道路としての使われ方によって判断が分かれます。通行と掘削は別の問題として、それぞれ確認する必要があります。
法律上の権利があっても、売却の場面では別の問題が残ります
民法の権利は、争いになってから裁判や話し合いで確認していくものです。買主から見れば、書面がない状態は「将来、争いになる可能性」として残ります。通行・掘削の可否は一軒ごとに事情が異なるため、弁護士や司法書士への確認をおすすめします。
Q. 承諾を取るのに、費用はどれくらいかかりますか
承諾書をもらう際の費用に、法律で決まった金額はありません。所有者に謝礼として承諾料や署名料を支払う例もあれば、近隣の付き合いで無償のことも多く、地域や相手方の事情で大きく変わります。承諾料の相場として一律の数字を示すことは難しいため、ここでは、費用の内訳の考え方を仮の数字で示します。
承諾取得の費用(仮の例)
※仮の数字です。所有者の人数や相続の状況、依頼先で大きく変わります。
この例では、承諾料そのものより、所有者の調査にかかる費用のほうが大きくなる場合を示しました。私道の所有者が亡くなっていて、相続人が数人から十数人に広がっていると、戸籍の収集だけで時間と報酬が積み上がります。人数が増えるほど、1人でも署名が得られない可能性も高まります。
承諾が得られない場合や、費用が売却額に見合わない場合は、承諾書がない状態で売るという選択肢もあります。その場合は、買主に状況を正確に伝えたうえで、価格に反映する形になります。数字の幅は物件によって異なり、確実な相場はありません。複数の会社から査定を取り、承諾書がある場合とない場合の差を並べて見るのが現実的です。
私道に接する土地の固定資産税については、道が公共の用に供されている場合など、非課税として扱われることがあるとされています。私道の持分に課税されているかどうかは、毎年の納税通知書の課税明細で確かめられます。扱いは自治体ごとに異なるため、市区町村の資産税の担当課に確認してください。
Q. 私道に面した家は、誰に売るのがよいですか
承諾書の有無や持分の状況によって、売り先の向き不向きが変わります。大まかな選択肢は、不動産会社の仲介で一般の買主に売る方法、買取業者に買い取ってもらう方法、私道の所有者や隣地の方に買ってもらう方法です。
売り先ごとの違い
| 仲介 | 買取 | 隣地・私道所有者 | |
|---|---|---|---|
| 承諾書 | 用意が必要な場合が多い | 現状で相談できる | 不要になる場合がある |
| 期間 | 数か月以上 | 短め | 相手次第 |
| 価格 | 高くなる余地 | 仲介より低め | 条件が合えば |
※一般的な目安です。物件ごとに異なります。
仲介で一般の買主を探す場合、承諾書が整っていると、融資を使う買主にも説明しやすくなります。一方で、承諾書の取得に時間がかかると、売り出しが遅れる、あるいは買主が決まっても引渡しの期限に間に合わない、という状況が生まれます。
買取は、承諾書が整っていない状況でも、物件を現状のまま見てもらえる点が特徴です。買取業者は、私道の状況を踏まえて、自社で再販売する際の手間や費用を見込んで価格を決めます。提示された価格が仲介より低いのは、その見込みが含まれるためです。
私道の所有者や、隣地の方に買ってもらう方法は、見落とされがちです。たとえば、持分のない家を、道の所有者が買う場合は、承諾の問題が自然に解消します。ただし、相手が必ず買ってくれるとは限らず、価格の話し合いもあるため、不動産会社を間に入れて進めることをおすすめします。
私道の権利関係が整理できていない家も、現状のままご相談ください
MAIVERSEは中央区東日本橋に事務所を構え、中央区・墨田区・江戸川区・台東区・江東区の城東エリアに特化した買取会社です。宅地建物取引士が直接ご相談に対応し、弁護士・司法書士・税理士とも連携しています。私道の持分や承諾書の状況を一緒に整理し、売却の道筋をご提案します。相続した空き家の場合は、遺産分割協議から相続登記・売却完了までの手続き費用を当社が全額負担しています。
私道に面した家を売る前に、先に確認しておきたい4つのこと
ここまでの内容を、売却前の確認事項にまとめます。次の4つが確認できれば、どの売り先に、どの順番で相談するかが決まります。
- 前面道路の種類(位置指定道路・2項道路など)を、役所の窓口で確認した
- 登記簿で、私道の持分の有無と、道の所有者の名義を確認した
- 通行・掘削の承諾書があるか、あれば署名者が今の所有者かを確かめた
- 売買契約書の対象に、私道の持分が含まれているかを確認した
確認の順番や、売却の準備全体は売却前の準備のページで案内しています。権利関係に不安がある物件の売却の流れは、訳アリ物件の売却の流れのページで確認できます。個別の状況については、訳アリ物件の無料相談会で受け付けています。
参考資料(2026年10月確認)
よくある質問
- Q私道の持分がないと、家は売れませんか?
- A持分がなくても売ることはできます。ただし買主が不安を持ちやすく、融資審査で通行・掘削の承諾書を求められることがあるため、承諾書を取るか、現状のまま買い取る会社に相談する方法が現実的です。
- Q私道の所有者に、通行や掘削のお金を請求されることはありますか?
- A法律で決まった金額はなく、謝礼や承諾料を求められる場合も、無償で書面に署名してもらえる場合もあります。金額に納得できないときは、不動産会社や弁護士を通じて、条件を整理してから話し合う方が安全です。
- Q昔もらった通行承諾書は、今も使えますか?
- A署名した方が今も私道の所有者かどうかで変わります。所有者が代わっていたり亡くなっていたりすると、承諾書が新しい所有者に及ぶとは限らないため、登記簿の名義と日付を見比べて確認し、必要なら取り直します。
- Q私道の持分を、家とは別に売ることはできますか?
- A持分だけを売る取引自体は可能ですが、買い手が限られます。家の売却と一緒に持分を移す契約にしておくのが一般的で、契約書の対象物件に持分が入っているか、登記の対象に含めるかを必ず確認してください。
- Q私道の舗装や補修の費用は、誰が負担しますか?
- A共有型では持分を持つ人どうしの話し合いで分担するのが一般的です。自治体によっては私道の舗装などに助成制度を設けている場合があるため、市区町村の道路担当課に確認してください。


