借地権の相続|地主の承諾・名義変更料は不要?手続き・費用・税金と売却

この記事の要点
- 相続人が借地権を相続するときは地主の承諾は不要で、名義変更料(承諾料)を支払う法律上の義務もない
- 相続人以外への特定遺贈や第三者への売却は譲渡にあたり、地主の承諾か裁判所の許可が必要になる
- 借地上の建物の相続登記は2024年4月から義務で、登録免許税は固定資産税評価額の0.4%
- 空き家の3,000万円特別控除や小規模宅地等の特例は、要件を満たせば借地権(土地の上に存する権利)にも使える
こんな方に読んでほしい記事です
- 親が借地の上に建てた家を相続することになった
- 地主から名義変更料や契約の書き換えを求められて戸惑っている
- 住む予定のない借地の家を、どう手放せばよいか知りたい
借地権を相続人が相続するときは、地主の承諾はいりません。名義変更料(承諾料)も、法律上は払う義務がありません。相続は亡くなった人の権利と義務をまとめて引き継ぐもので、地主の承諾が必要な「譲渡」には当たらないためです。
一方で、相続した借地権を第三者に売るときや、相続人以外の人に特定の財産として遺言で渡すときは、地主の承諾が必要です。この記事では、借地権の種類の見分け方から、相続登記の費用、相続税の評価、住まない場合の手放し方と税金まで、相続した方からよく受ける質問の順に答えていきます。

Q. まず、相続する借地権はどの種類?
借地権には、契約した時期や内容によっていくつかの種類があり、相続した後の選択肢が変わります。契約書の日付と、「定期借地」という言葉が入っているかを最初に確認してください。
借地権の種類と相続後の違い
| 旧法の借地権 | 普通借地権 | 一般定期借地権 | |
|---|---|---|---|
| 契約の時期 | 1992年7月以前 | 1992年8月以降 | 1992年8月以降 |
| 存続期間 | 旧借地法による | 30年以上 | 50年以上 |
| 更新 | 更新後も旧法が続く | 更新あり | 更新なし |
| 相続後の注意 | 書き換えに慎重に | 更新時期を確認 | 残り期間で価値が決まる |
※借地借家法(1992年8月1日施行)とその附則によります。旧法の存続期間は建物の構造などで異なります。
1992年8月に借地借家法が施行される前に始まった借地契約は、附則により、更新されても旧借地法のルールが続きます。住宅の借地で今も多いのはこの「旧法の借地権」で、借りる側の立場が比較的強いのが特徴です。
施行後に結ばれた普通借地権は、最初の存続期間が30年以上で、更新後は最初の更新が20年、その後は10年です。一般定期借地権は50年以上の期間を定める代わりに更新がなく、期間が終われば原則として建物を取り壊して土地を返します。残りの期間が短い定期借地権は売却が難しくなるため、相続の段階で残り年数を確認しておく必要があります。
地代を払っていないなら、借地権ではないかもしれない
親の土地に子が家を建て、地代を払っていなかったというケースもよくあります。このように地代のやり取りがない(または固定資産税程度しか払っていない)貸し借りは「使用貸借」と呼ばれ、国税庁の取扱いでは、相続税の評価で借地権としての価値はゼロとされます。地代を払っていたかどうかで扱いが大きく変わるため、通帳の記録などで確かめてください。
Q. 借地権を相続するのに、地主の承諾や名義変更料はいる?
いりません。民法612条は、借りている土地の権利を他人に譲ったり又貸ししたりするときに貸主の承諾を求めていますが、相続はこの「譲渡」に含まれません。地主に断られたから相続できない、ということはありません。
ただ、地主との関係はこの先も続きます。法律上の義務ではありませんが、相続が起きたことと、今後の地代の支払い名義や連絡先は早めに伝えておくと、後の売却や建て替えの相談がしやすくなります。
「名義変更料を払ってほしい」と言われたら
相続人が借地権を引き継ぐ場面で、地主から名義変更料を求められることがあります。支払う義務はありませんが、断り方によっては関係が悪くなり、将来の売却の承諾が得にくくなる心配もあります。
契約書を新しく作り直したいと言われた場合も、すぐに署名するのは避けてください。旧法の借地権を、新しい定期借地権の契約に切り替えるような内容になっていると、更新がなくなり、借りる側に大きく不利になります。書き換えた結果、条件がどう変わるのか、専門家に見てもらってから判断するのが安全です。
遺産分割が終わるまで、地代は誰が払う?
相続人が複数いる場合、遺産分割で引き継ぐ人が決まるまでは、借地権は相続人全員で共有している状態になります。この間の地代の支払いも、相続人全員に関わる義務です。
実際には、代表の1人が立て替えて払い、遺産分割のときに精算する形が多く見られます。誰も払わないまま数か月が過ぎると、地主から見れば滞納と変わりません。話し合いがまとまる前でも、支払いだけは続けておくのが無難です。
Q. 相続人ではない人に、遺言で借地権を渡すことはできる?
できますが、相続人以外の人に借地権を特定の財産として遺贈する(遺言で贈る)場合は、地主の承諾が必要です。法律上は借地権の「譲渡」と同じ扱いになるためです。たとえば、同居して介護をしてくれた長男の妻に遺したい、といったケースがこれに当たります。
受け取る人が法定相続人で、相続として引き継ぐなら承諾はいりません。一方、相続人以外への特定遺贈なら、地主の承諾か、承諾に代わる裁判所の許可が必要です。財産の全部や割合を遺贈する「包括遺贈」の扱いは考え方が分かれるため、遺言を作る段階で専門家に確認してください。
地主が承諾しない場合は、借地借家法19条に基づいて、裁判所に承諾に代わる許可を求める手続き(借地非訟)があります。ただし時間も費用もかかるため、遺言を書く段階で地主と話しておくか、相続人に相続させる形にできないかを先に検討する方が現実的です。
たとえば長男の妻に報いたい場合でも、借地権そのものは長男に相続させ、別の預貯金を妻に遺贈するといった分け方なら、地主の承諾の問題は生じません。受け取る側の負担が少ない形を、遺言を作る前に司法書士や弁護士と一緒に考えておくと安心です。
Q. 相続したあと、何をどの順番で進めればいい?
借地権そのものは土地の登記に記録されていないことが多く、実務上の手続きは「借地の上の建物」の名義変更が中心になります。おおまかな順番は次のとおりです。
借地の家を相続した後の流れ
- 契約書と地代の状況を確認契約開始日・期間・地代・特約を見ておく
- 相続人と遺産分割協議誰が借地権と建物を引き継ぐか決める
- 建物の相続登記取得を知った日から3年以内が期限
- 地主へ連絡相続した人の名前と地代の支払い方法を伝える
※遺言がある場合や相続人が1人の場合は、遺産分割協議を省けることがあります。
建物の相続登記は、2024年4月1日から義務になりました。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければならず、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。それより前に相続した建物も、2027年3月31日までに登記が必要です。
義務の対象は建物の所有権の登記です。借地権が土地に賃借権として登記されている珍しいケースでは、その移転の登記もあわせて行うのが一般的です。
登記にかかる費用の目安
相続登記には登録免許税がかかります。相続による建物の所有権の移転は、固定資産税評価額の1000分の4(0.4%)です。たとえば建物の評価額が500万円なら、2万円になります。借地権(賃借権)が登記されていて相続で移す場合は、1000分の2(0.2%)です。
このほか、戸籍謄本などの取得費用と、司法書士に頼む場合はその報酬がかかります。報酬は依頼内容によって違うため、事前に見積もりを取ってください。
話し合いがまとまらないときの「相続人申告登記」
遺産分割がまとまらず期限に間に合いそうにないときは、「相続人申告登記」という簡易な手続きがあります。法務局に自分が相続人であることを申し出るもので、登録免許税はかからず、オンラインでも申し出ができます。
ただし、申し出た人だけが義務を果たしたことになり、建物を売るときには別に相続登記が必要です。また、遺産分割が成立した後は、その日から3年以内に分割の内容に沿った登記をする必要があります。
あわせて、2026年4月からは住所や氏名が変わったときの変更登記も義務になりました。相続した後に引っ越した場合は、変わった日から2年以内に変更登記をしないと、5万円以下の過料の対象になります。相続全体の段取りは相続の流れのページにまとめています。
Q. 相続税では、借地権はいくらと評価される?
相続税では、借地権も財産として評価されます。国税庁の説明では、普通借地権の価額は「その土地を自分のものとして使う場合の評価額(自用地としての価額)」に、地域ごとに決まった借地権割合をかけて計算します。借地権割合は、路線価図にAからGまでの記号で示されています。
相続税評価の計算例
※借地権割合60%(路線価図の記号D)の場合の計算例です。実際の評価は土地の形や契約内容で変わります。
路線価図の記号は、Aが90%、Bが80%と10%刻みで下がり、Gが30%です。上の例では、自用地としての価額5,000万円に借地権割合60%をかけて、借地権は3,000万円と評価されます。地主側の底地(貸している土地)は、自用地としての価額に「1−借地権割合」をかけるため、2,000万円という計算になります。
注意したいのは、この評価額がそのまま売れる値段ではないことです。借地権は地主の承諾がないと売れず、住宅ローンも使いにくいため、市場で実際に付く価格は相続税の評価額を下回ることが多いとされています。「評価額が3,000万円だから3,000万円で売れる」とは考えない方が安全です。
定期借地権は計算の仕方が違う
定期借地権は、借地権割合をかける方法ではなく、借りる側が受けている経済的な利益と、残りの存続期間をもとに評価します。残りの期間が短いほど評価は下がります。一時使用の借地権も、普通借地権とは別の方法で評価されます。
小規模宅地等の特例は借地権にも使える
亡くなった方が住んでいた土地の評価を最大80%減らせる「小規模宅地等の特例」は、国税庁の説明で、対象の宅地等に「土地の上に存する権利」も含まれるとされています。借地権でも、同居していた家族が相続するなどの要件を満たせば、330㎡までの部分で使える可能性があります。要件は細かいため、相続税の申告が必要になりそうなら、税理士に早めに相談してください。
Q. 地主に払うお金と、払わなくていいお金は?
借地をめぐっては、名前の似たお金がいくつも出てきます。相続した直後に請求されても、払う必要があるものかどうかを落ち着いて見分けることが大切です。
相続そのものにかかる名義変更料は、先に書いたとおり法律上の支払い義務はありません。一方、第三者に借地権を売るときの譲渡承諾料は、地主の承諾を得る対価として払うのが一般的で、借地権価格の1割程度が目安と言われることが多いものです。
建て替えるときの建替承諾料は更地価格の3〜5%程度、増改築の承諾料はそれより低めとする解説が多く見られますが、いずれも法律で決まった金額ではなく、地域や契約、建物の内容で変わります。更新料も、法律で一律に決められた支払い義務ではなく、契約の定めや地主との合意によって扱いが決まります。
地代は、周りの地代や税負担と比べて不相当になったとき、借地借家法11条に基づいて増額や減額を求めることができます。話し合いがまとまらない間は、借りる側は自分が相当と考える額を払えば足りるとされています。
Q. 住む予定のない借地の家は、どう手放せばいい?
相続した借地の家に誰も住まない場合、手放し方は主に3つあります。どれを選ぶかで、地主との交渉の重さと、手元に残るお金が変わります。
借地の家の手放し方
| 地主に買ってもらう | 底地と同時に売る | 買取業者に売る | |
|---|---|---|---|
| 地主の承諾 | 相手が地主なので不要 | 地主も売主になる | 承諾が必要 |
| 承諾料 | かからない | かからない | かかるのが一般的 |
| 価格の傾向 | 地主の意向次第 | 高めになりやすい | 低めになりやすい |
| まとまりやすさ | 地主に資金が必要 | 両者の合意が必要 | 交渉は業者が担う |
※一般的な傾向です。契約内容や地主の考え方によって変わります。
地主に買い取ってもらえれば承諾の問題はなくなりますが、地主側にまとまった資金が必要です。底地と借地権を一緒に第三者へ売る方法は、普通の土地として売れるため価格が上がりやすい一方、地主と売却額の分け方で合意しなければなりません。
第三者の買取業者に売る場合は、地主の譲渡承諾と承諾料が必要になるのが一般的です。地主との話し合いに慣れた業者なら、承諾の取り付けまで任せられます。承諾料の考え方は借地権付き建物の売却と地主の承諾のコラムで詳しく書いています。
売れるまでの間にかかるお金
借地の家を空き家のまま持っている間も、地代の支払いは続きます。土地の固定資産税は地主が払いますが、建物の固定資産税は建物の所有者である相続人の負担です。地代と合わせると年単位では無視できない金額になり、空き家の管理の手間も加わります。
売るときに使える税の特例
相続した空き家を売るときの「3,000万円特別控除」は、国税庁の説明で、対象の敷地等に「土地の上に存する権利」が含まれるとされています。借地の家でも、昭和56年5月31日以前に建てられた家であることや、売却代金が1億円以下であることなどの要件を満たせば使える可能性があります。
売る期限は、相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までで、特例そのものは2027年12月31日までの譲渡が対象です。相続人が3人以上いる場合は、1人あたりの控除が2,000万円になります。相続税を払った場合は、その一部を取得費に加えられる特例もあるため、売る前に税理士と使える特例を確認してください。
相続放棄という選択肢
建物が古く、地代や固定資産税の負担だけが残りそうな場合は、相続放棄も選択肢に入ります。相続放棄は、原則として相続の開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要があり、借地権だけを放棄することはできません。預貯金など他の財産もまとめて手放すことになります。
また、放棄した時点でその家を現に占有していた人は、次に管理する人に引き渡すまで、建物を保存する義務を負います(民法940条)。親と同居していた家を放棄する場合は、放棄すればすぐに関係がなくなるわけではない点に注意してください。
Q. 地主が売却を承諾してくれないときは?
まずは理由を聞くことから始めます。「知らない人に貸したくない」「地代の値上げを話したい」「本当は自分が買い戻したい」など、地主の本音によって打つ手が変わるためです。
話し合いで解決しない場合は、借地借家法19条により、裁判所に地主の承諾に代わる許可を申し立てる方法があります。裁判所は、借地権の残りの期間やこれまでの経緯、譲渡の必要性などを考えたうえで許可するかを決め、地主への金銭の支払いを条件にすることもあります。東京地方裁判所では民事第22部が借地非訟を担当し、専門家で構成する鑑定委員会の意見を聴いて判断する流れが案内されています。
また、裁判所に申し立てがあると、地主は自分が借地権と建物を買い取ることを申し出られる仕組みもあります(介入権)。地主が本当は買い戻したいと考えている場合、結果として地主への売却になることもあるわけです。
この手続きは、建物を譲渡する前に借地権者側から申し立てる必要があります。弁護士への依頼が前提になることが多く、期間も数か月単位でかかるのが一般的です。
借地の家の相続から売却まで、まとめてご相談いただけます
MAIVERSEでは宅地建物取引士が直接ご相談に対応し、地主との話し合いや借地非訟が必要な場面では弁護士・司法書士と連携します。相続した空き家の売却では、遺産分割協議から相続登記・売却完了までの手続き費用を当社が全額負担しています。
借地の家を相続したら、最初の1か月で確かめておきたいこと
相続の直後は、葬儀や役所の手続きに追われて借地のことは後回しになりがちです。それでも、次の3点だけは早めに確かめておくと、後で選べる道が狭まりません。
1つ目は、借地契約書の有無と中身です。契約がいつ始まったか、借地権の種類、残りの期間、増改築や譲渡についての特約を見ておきます。契約書が見つからなくても、地代の領収書や振込記録が借地契約の手がかりになります。
2つ目は、地代がきちんと払われているかです。亡くなる前に入院などで滞っていた場合、相続人がその未払い分も引き継ぎます。滞納が続くと契約解除の理由になりかねないため、まず支払いを止めないことが先決です。
3つ目は、建物の登記と、相続人の間で「住む人がいるのか」の話し合いです。建物が未登記だったり、祖父母の名義のままだったりすると、売却の前に整える手続きが増えます。住まないと決まれば、地主との関係が良いうちに売却の相談を始められます。
相続人が複数いて話がまとまりにくいと感じたら、相続トラブルのリスク診断で今の状況を整理してみてください。相続の無料相談会でも、借地の家のご相談をお受けしています。
参考資料(2026年10月確認)
よくある質問
- Q借地上の建物が未登記だった場合はどうすればいいですか?
- Aまず建物の表題登記(建物の存在を記録する登記)をしてから、相続人の名義で所有権の登記をします。登記された建物がないと、地主が土地を売ったときに借地権を主張しにくくなるため、早めに土地家屋調査士や司法書士に相談してください。
- Q地主が亡くなった場合、借地契約はどうなりますか?
- A地主の地位は地主の相続人に引き継がれ、借地契約はそのまま続きます。地代の振込先が変わることがあるため、地主側の相続人から連絡があったら、支払い先を確認してください。
- Q借地権を兄弟で共有して相続しても大丈夫ですか?
- A共有で相続すること自体はできますが、売却や建て替えの判断には共有者全員の同意が必要になり、話がまとまりにくくなります。誰か1人が引き継ぐか、売却してお金で分けるかを、遺産分割協議の段階で決めておく方が後の負担は小さくなります。
- Q相続人申告登記をすれば、相続登記はしなくてもいいですか?
- A相続人申告登記で期限内の義務は果たせますが、建物を売るときには別に相続登記が必要です。遺産分割が成立した場合は、その日から3年以内に分割の内容に沿った登記をしなければなりません。
- Q借地の家が古くて住めません。建物を解体してから返すべきですか?
- A契約が終わるときの扱いは、契約内容や借地権の種類によって異なります。建物がなくなると、土地の上に掲示をしない限り借地権の対抗力に影響する場合もあるため、解体する前に地主や専門家に相談してください。
- Q地代が相場より高い気がします。相続を機に下げてもらえますか?
- A相続を理由に地代が自動的に変わることはありません。周辺の地代や税負担と比べて不相当になっている場合は、借地借家法11条に基づいて減額を求めることができますが、まずは地主との話し合いから始めるのが一般的です。


