中央区の借地権付き建物を売る|地主の承諾・底地との同時売却・区の手続き

この記事の要点
- 借地権付き建物を地主以外に売るには地主の承諾が必要で、承諾なしに引き渡すと契約を解除されるおそれがある(民法612条)
- 地主が承諾しない場合は、引き渡しの前に借地非訟を申し立てて承諾に代わる許可を求められ、東京23区の借地は東京地裁民事第22部が担当する
- 地主が国有地の場合は、関東財務局の承認前の譲渡が貸付契約違反になるおそれがあり、底地を同時に売る同時売却も選べる
- 路線価図の借地権割合は税の評価に使う数字で、売値とは別である。買主が建て替える場合は、中央区の地区計画の届出などの確認も必要になる
こんな方に読んでほしい記事です
- 中央区の借地の上にある家やビルを売りたいが、地主が承諾してくれるか分からない
- 地主が個人ではなく、国・法人などの場合に、手続きがどう変わるのかを知りたい
- 買主が建て替える前提のとき、地主の承諾のほかに区役所で何を確認するのかを知りたい
中央区の借地権付き建物(他人の土地を借りて、その上に自分の建物を持っている状態)は、地主の承諾が得られる見通しがあれば売却できます。承諾が要るのは地主以外の人に売るときで、民法612条は、貸主の承諾なく賃借権を譲ることを認めていません。承諾が出ないときでも、地主自身に買ってもらう、底地(地主の持つ土地の権利)と一緒に売る、裁判所に許可を求める、といった別の道があります。
借地の売却の基本の流れと手取りの計算は借地権付き建物の売却のコラムにまとめています。この記事では、「売れない」と感じたときに誰に何を確認するかという質問の順に、地主の種類による違い、中央区役所の建て替え関連の手続き、売値の考え方を書きます。区の制度は2026年10月に公式ページで確認した範囲で、個別の土地への当てはまりは一軒ごとに役所で確認が必要です。

Q. 地主の承諾がないと、借地の建物は本当に売れないのですか
地主以外の人に売るなら、承諾が必要です。借地の建物を売ると、建物と一緒に借地権(土地を借りる権利)も買主に移るため、法律上は賃借権の譲渡にあたります。承諾なしに引き渡すと、地主は契約を解除できる場合があります(民法612条)。
一方、売る相手が地主自身なら、承諾という問題は生じません。底地と借地権をまとめて第三者に売る場合も、地主が売主の一人になるため、承諾料の話にはならないのが一般的です。つまり、「売れない」と感じる原因が承諾なのか、それ以外なのかを先に切り分けると、打つ手が見えやすくなります。
実際に売れにくくなる理由は、大きく次の4つに分かれます。
- 地主の承諾が得られない、または承諾料の額で折り合わない
- 買主が住宅ローンを使えない(借地の建物は担保として扱いにくい金融機関がある)
- 定期借地権で残りの期間が短い、契約に建て替えの制限がある
- 建物が古く、買主が建て替えたいのに、その承諾や区の手続きの見通しが立たない
承諾料(名義書換料)に法律で決まった金額はなく、借地権価格の1割程度と言われることが多い目安です。支払った承諾料は、国税庁のタックスアンサーNo.3255で、借地権を売るときの譲渡費用として挙げられています。領収書は確定申告まで保管してください。
Q. 地主が国や自治体、法人の場合も、同じ進め方ですか
民法の考え方は同じですが、窓口や手続きの書式が違うため、個人の地主より時間がかかる場合があります。なかでも、地主が国(国有地)の場合は、公表されている資料があります。
関東財務局の案内では、国有地の上にある借地権付き建物を売るには、建物の売買によって借地権を譲渡する手続きを経る方法のほかに、国有地(底地)を新しい借地人にあわせて売る「同時売却」が選べるとされています。国の承認を得る前に借地権を譲渡すると、貸付契約違反になるおそれがあるとも注意されています。名義書換承諾料の支払いが必要になる場合があることも、同じ案内に書かれています。
地主が国有地のときの確認点
- 01地主が誰かを登記で確認土地の登記事項証明書の所有者欄で、国かどうかが分かる
- 02承認の前に引き渡さない国の承認前の譲渡は貸付契約違反になるおそれがある
- 03同時売却の可否を確認地域や条件で対象外のことがあり、財務事務所に問い合わせる
※関東財務局の案内に基づく整理です。個別の取扱いは窓口で確認が必要です。
同時売却には、借地人の依頼に基づいて、国がホームページで借地権付き建物の購入希望者を募集する仕組みもあります。問い合わせは、借地人本人か、委任を受けた人が行う扱いです。同時売却のときの承諾料の取扱いは通達で別に定められており、承諾料をやり取りする慣行があるかどうかで変わるため、見込み額は財務事務所で確かめるのが確実です。
地主が東京都や中央区、法人、社寺の場合の取扱いは、今回の確認では公開資料を見つけられませんでした。売却を決める前に、地主の窓口に「借地権付き建物を譲渡する場合の手続きと必要書類」を問い合わせてください。
Q. 地主が承諾してくれない、または連絡が取れないときは
承諾が得られないときは、借地権者が裁判所に申し立てて、承諾に代わる許可をもらう道があります。借地借家法19条1項は、買主が借地権を取得しても地主に不利となるおそれがないのに、地主が承諾しない場合に、裁判所が許可を与えられると定めています。東京23区の借地であれば、東京地方裁判所民事第22部が担当します。
地主は、第三者への売却を承諾してくれそうですか
この申立ては、建物を第三者に「譲渡しようとする場合」にするものです。先に引き渡してしまうと使えません。東京地裁の案内では、申立ての約1か月から1か月半後に第1回の審問が開かれ、その後に弁護士や不動産鑑定士、建築士などの鑑定委員(3人以上)が現地を調べて意見書を出します。鑑定委員の費用は国が負担します。申立ての代理人は弁護士に限られます。
注意したいのは、地主の介入権(借地借家法19条3項)です。申立てがあると、地主は裁判所の定める期間内に、自分が建物と借地権を買い取りたいと申し立てられます。この裁判があった後は、申立ての取下げに当事者の合意が必要になります(同条5項)。予定していた買主には、地主に売る結果になる可能性があることを、先に伝えておく必要があります。
連絡が取れない場合は、まず土地の登記事項証明書で現在の所有者を確かめます。地主が亡くなっていれば、相続人が貸主の立場を引き継いでいます。相続人にたどり着けない、相続人が多数で意見がまとまらないといった場合は、承諾の取り方そのものを弁護士に相談する必要があります。底地側の事情は、底地の売却のコラムで地主の立場から書いています。
Q. 買主が建て替える前提のとき、承諾のほかに何が必要ですか
古い建物の借地は、買主が建て替えを前提に購入することが多くなります。建て替えには、売買の承諾とは別に、増改築の承諾が必要な契約があります。増改築を制限する特約があって話し合いがつかないときは、借地借家法17条2項により、裁判所が地主の承諾に代わる許可を与えられます。建替承諾料は、更地価格の数%と言われることが多く、売買の承諾料とは別に求められやすい費用です。
中央区では、建て替えや解体の前に、区の手続きがかかわる場合があります。手続きを行うのは建築する側ですが、買主の計画が区の手続きの対象になるかで、承諾の交渉の時期や条件も変わります。区の公式ページで確認できたものを、次の表にまとめました。
中央区の建て替え関連の手続き
| 手続き | 対象 | 時期の目安 |
|---|---|---|
| 地区計画の届出 | 地区計画の区域内の新築・増築・改築 | 着手の30日前まで、確認申請の前 |
| 中高層建築物の指導要綱 | 高さ10mを超える建築物 | お知らせ看板と説明会(確認申請前) |
| 解体工事の事前周知 | 建物の解体工事 | 看板の設置と説明会 |
| 市街地開発事業指導要綱 | 事業区域が100㎡以上 | 確認申請の前に事前協議 |
※区の公式ページで2026年10月に確認した概要です。規模や時期の詳細は各要綱で確認が必要です。
地区計画の区域は、区のページに、日本橋・東京駅前地区、銀座地区、第2ゾーン(日本橋問屋街、人形町・浜町河岸、日本橋兜町・茅場町一丁目、新川・茅場町、京橋、築地の各地区)、月島地区が載っています。自分の借地がどの区域に入るかは、区の都市整備部建築課で確認できます。
市街地開発事業指導要綱は、現行の版が令和8年12月31日までの内容で、令和9年1月1日以降は別の版が使われる予定と区のページにあります。建て替えの時期が年をまたぐ場合は、どちらの版に当たるかも確認が必要です。小さな借地の建物でも、地区計画の届出や解体の周知は対象になる場合があるため、「小さいから関係ない」と決めつけない方が安全です。
Q. 借地権はいくらで売れますか。路線価の借地権割合は売値ですか
売値そのものではありません。国税庁のタックスアンサーNo.4611では、借地権の評価は、土地を更地(自用地)として評価した額に借地権割合をかけて求めるとされています。割合は路線価図で確認でき、数字の右隣のA〜Gの記号が、Aの90%からGの30%まで10%刻みの借地権割合を表します。たとえば「215D」は、1㎡あたり21万5,000円で、借地権割合が60%という意味です。
これは相続税などを計算するための評価で、実際の売買価格とは別です。承諾が必要なこと、ローンを使いにくいこと、地代を払い続けることから、実際の価格は評価額と違う場合があります。中央区の個々の道路がどの記号かは、国税庁の路線価図で確認してください。路線価を使った更新料の考え方は、中央区の借地の更新料のコラムで計算しています。
売り方によって、手元に残る額の考え方も変わります。次の図は、更地価格が1億円と評価できる借地を想定した、考え方の例です。仲介手数料や税金は含めていません。
売り方で変わる借地人の取り分(例)
※仮定の例です。借地権の価格を更地の60%の6,000万円、承諾料をその1割の600万円とし、同時売却は更地1億円を借地人と地主で分けると仮定しています。実際の価格と配分は物件ごとに異なります。
この例では、借地権だけを売ると、6,000万円から承諾料600万円を引いて約5,400万円です。同時売却なら承諾料は生じませんが、地主との配分が5対5になれば約5,000万円で、借地権だけを売る場合を下回ります。同時売却が有利になるかどうかは、買主が更地並みの価格で買うか、配分をどう決めるかで変わります。
もうひとつの道として、借地人が底地を買い取り、土地と建物の両方を持つ所有権の状態にしてから売る方法もあります。この場合は底地の購入資金が先に必要で、売却価格がそれを上回るかの試算が欠かせません。
Q. 区役所や東京都の窓口は、借地の売却の相談に使えますか
使える窓口はありますが、借地の売却そのものを扱うかは、窓口に確認が必要です。中央区の法律相談は、中央区在住または在勤の個人が、弁護士に無料で相談できる予約制の制度です。区のページによると、相談は1回30分で、2026年度(令和8年度)内に1人3回までです。
日時は、区役所の区民相談室が毎週金曜の午後1時から4時、日本橋・月島・晴海の各特別出張所が月に1〜2回の午後1時から4時です。予約は相談日の60日前から前日まで、区役所1階のまごころステーションが受け付けています。ただし、区のページに借地借家が相談内容に含まれるかの記載はないため、予約の際に確かめてください。
不動産取引の相談は、中央区のページでは、東京都の不動産取引特別相談室(都庁第二庁舎3階)が案内されています。平日の午前9時から11時と午後1時から4時の当日受付で、紛争の法律相談は予約制です。こちらも借地の記載はないため、対象になるかを都に確認してください。
こうした窓口は、一般的な助言を受ける場です。地主との交渉や借地非訟の代理は、弁護士に依頼することになります。
借地の建物も、地主との話し合いを含めてご相談ください
MAIVERSEは中央区東日本橋に事務所があり、中央区・墨田区・江戸川区・台東区・江東区の城東エリアに特化しています。宅地建物取引士が直接ご相談に対応し、借地非訟のように法的な手続きが必要な場面では、弁護士・司法書士・税理士と連携します。相続した空き家の売却では、遺産分割協議から相続登記・売却完了までの手続き費用を当社が全額負担しています。
中央区の地域ごとの相談は中央区の売却相談のページから、事務所のある東日本橋・馬喰町エリアは東日本橋・馬喰町エリアの売却相談はこちらから確認できます。
中央区の借地の家を売ると決める前に、手元で確かめたい5つのこと
地主に連絡する前に、次の5点が分かると、話が進みやすくなります。どれも、契約書と登記の書類があれば確認できます。
- 土地の登記事項証明書で、今の地主(個人・法人・国など)が誰かを確かめた
- 借地契約書で、借地権の種類(旧法・新法・定期)と残りの期間、譲渡や増改築の特約を確かめた
- 建物の登記名義が自分(相続の場合は相続登記済み)になっていることを確かめた
- 地代の滞納がないこと、承諾料を支払う資金の見込みを確かめた
- 買主が建て替える場合に、地区計画などの区の手続きの対象かどうかを、区の窓口で確かめた
地主に最初に伝えるのは、「売却を考えている」「まずご自身で買う意向がないか伺いたい」の2点です。売却全体の段取りは訳アリ物件の売却の流れでも確認できます。地主との関係が難しい、承諾料の提示に納得できないといった段階でも、訳アリ物件の無料相談会でお話を伺えます。
参考資料(2026年10月確認)
よくある質問
- Q建物が古いので、解体して更地にしてから売る方がよいですか?
- A借地権は、借地の上に借地権者名義で登記された建物があることで第三者に主張できます(借地借家法10条)。建物をなくした場合も、所定の掲示をすれば滅失から2年間は主張できますが、先に解体すると権利を守りにくくなります。解体は買主の建て替え計画とあわせて、地主の承諾を得てから進める方が安全です。
- Q借地権を相続したばかりで、建物の名義が親のままでも売れますか?
- A売る前に、建物の相続登記を済ませて名義を整える必要があります。相続登記は、相続で不動産を取得したと知った日から3年以内の申請が義務です。相続による承継そのものは、契約に通知の定めがなければ、地主の承諾が不要とされるのが一般的です。
- Q承諾料を払わずに売る方法はありますか?
- A地主自身に買ってもらう場合や、底地と借地権を同時に第三者へ売る場合は、地主が売主や買主になるため、承諾料の話になりにくいのが一般的です。ただし国有地の同時売却では、承諾料の扱いが慣行の有無で変わるため、財務事務所で確認が必要です。
- Q地代を滞納していても、売却の相談はできますか?
- A相談はできますが、地代の滞納は契約解除の理由になり得るため、先に精算してから承諾の話に入るのが基本です。地主が地代の受け取りを拒んでいる場合は、供託という方法で不払いの状態を避けられることがあります。弁護士に確認してください。
- Q共有名義の借地権付き建物は、一人の判断で売れますか?
- A建物と借地権をまとめて売るには、共有者全員の同意が必要です。全員がそろって売主になり、そのうえで地主の承諾を得る流れです。一部の方が反対している場合は、売り出す前に持分の扱いを弁護士や借地の取引に慣れた不動産会社に相談してください。


