台東区のペンシルビルを相続したら|税の特例・テナント・耐震助成の確認点

台東区のペンシルビルを相続したら|税の特例・テナント・耐震助成の確認点

この記事の要点

  • 賃貸していたペンシルビルは、国税庁の空き家の3,000万円特別控除の対象外で、小規模宅地等の特例や取得費加算の特例を検討する
  • 貸付事業用宅地等の小規模宅地等の特例は、200㎡までの評価額を50%減額できるが、申告期限まで貸付と所有を続ける必要がある
  • テナントがいる状態で売る場合、賃貸借契約と敷金の返還義務は原則として買主に引き継がれる
  • 台東区には、昭和56年5月31日以前の住宅以外の建物の耐震診断に、診断費用の10分の8(上限20万円)を助成する制度がある

こんな方に読んでほしい記事です

  • 台東区にある親のペンシルビル(細長い小さなビル)を相続し、売るか持ち続けるかを決めたい
  • テナントや入居者がいる状態で、相続税や売却の税金がどうなるのかを知りたい
  • 建物が古く、耐震や建て替えの費用が心配で、区の助成が使えるかを確かめたい

台東区のペンシルビルを相続したら、相続登記、税の特例、テナントとの契約、建物の耐震、土地の条件の5点を、順に確かめてから売るか持つかを決めます。特に税の特例は、申告期限(相続開始から10か月)までに売るか、持ち続けるかで、使えるものが変わります。

賃貸に出していたビルは、国税庁のいわゆる「空き家の3,000万円特別控除」の対象にならず、代わりに小規模宅地等の特例や、取得費加算の特例を検討することになります。この記事は、チェックリストの形で、確認する順番と判断の分かれ目を整理します。

売る前に確かめる5つの順番
図解:売る前に確かめる5つの順番タップで拡大

台東区のペンシルビルを相続すると、なぜ決断を急ぐことになるのか

浅草橋、蔵前、上野、浅草など、台東区には、間口が狭く奥行きのある敷地に、4〜6階建ての細長いビルが並ぶ町並みがあります。1階が店舗や事務所、上の階が賃貸や自宅という使い方が多く、相続では、事業と住まいと投資が1つの建物に重なります。

決断を急がされる理由は、期限が複数あるためです。相続登記は、相続を知った日から3年以内、相続税の申告は10か月以内、特例の売却期限も相続開始から数えます。さらに、昭和56年(1981年)5月31日以前に建てられた建物なら、耐震の問題も加わります。

当社は中央区東日本橋に事務所があり、台東区へは神田川を渡ってすぐの浅草橋が近い距離にあります。浅草橋・蔵前・鳥越エリアの売却相談はこちらから、区全体の案内は台東区のページから確認できます。

確認① 名義と相続人。相続登記は3年以内、売るなら先に済ませる

令和6年4月1日から、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請することが義務になりました。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象です。登記が済んでいないビルは、売買契約を結んでも名義を移せず、買主に引き渡せません。

ペンシルビルは、相続人が複数いる場合に、持ち続けるのか、売って分けるのかで意見が分かれやすい不動産です。賃料の収入を誰が受け取るか、修繕費を誰が負担するかも、遺産分割協議の前に整理しておく必要があります。相続人が複数いる場合の進め方は相続人が複数いる場合のページに、登記を放置するリスクは相続登記を放置するリスクのページにまとめています。

確認② 税の特例。使えるもの、使えなくなるもの

国税庁によると、貸付事業用の宅地(賃貸していた土地)には、小規模宅地等の特例があり、200㎡までの部分について評価額を50%減額できます。条件は、相続税の申告期限まで、その貸付事業を引き継いで続けていること、その土地を所有し続けていることです。

たとえば、土地の評価額が6,000万円(仮の数字)で、面積が200㎡以下なら、50%減額で評価額は3,000万円になります。ただし、申告期限の前に売ってしまうと、この特例は使えなくなります。売却を急ぐと、相続税が増える場合があるため、税理士に先に試算を頼んでください。

ペンシルビルで使える特例

小規模宅地等 取得費加算 空き家3,000万円
内容 相続税の評価を下げる 売却益を減らす 売却益から控除
賃貸ビル 対象になる 対象になる 対象外
売る時期 申告期限後 申告期限後3年 3年後の年末

※要件の細部は国税庁・税理士に確認してください。

取得費加算の特例は、相続で取得した土地や建物を、相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売った場合に、支払った相続税の一部を、売却の取得費に加算できる制度です。賃貸ビルでも使えますが、確定申告が必要です。

空き家の3,000万円特別控除(国税庁No.3306)は、相続の時から売却の時まで、事業・貸付け・居住のいずれにも使われていない家屋が対象です。店舗や賃貸部分があるペンシルビルは、この要件を満たしません。「空き家だから使える」と考える前に、国税庁の要件を確認してください。

確認③ テナントと入居者の契約は、買主に引き継がれる

テナントが入ったまま売る方法を、オーナーチェンジと呼びます。賃貸借契約は、建物の所有者が変わっても、原則としてそのまま買主に引き継がれ、敷金の返還義務も買主が引き継ぎます。売り主は、賃貸借契約書と家賃の入金記録、敷金の額を、買主に示せるようにしておく必要があります。

反対に、テナントを退去させてから売る、または建て替える場合は、貸主から契約を終わらせるのに、正当な事由が必要です(借地借家法28条)。更新しない旨は、期間満了の1年前から6か月前までに通知する必要があり(同法26条)、立退料が必要になる場合もあります。時間と費用がかかるため、早めに見込みを立てることが大切です。

収益物件として売る場合、買主は、年間の家賃収入から経費を引いた額を、期待する利回りで割って、価格を考えます。たとえば、年間の家賃収入が600万円、管理費や税金などの経費が150万円(仮の数字)なら、差し引きは450万円です。買主が5%の利回りを求めるなら、価格の目安は9,000万円となり、建物の修繕に大きな費用がかかると見込まれる場合は、その分が差し引かれます。

同じ建物でも、空室が多い、家賃が相場より低い、賃貸借契約が古く条件が不利、といった事情があれば、価格は下がります。売る前に、家賃の見直しや、空室の埋め方を試すかどうかは、売却の時期との兼ね合いです。相続後の期限が近い場合は、現状のまま、状況を正確に示して売るほうが、結果として早く決まることもあります。

入居者がいる場合の判断

入居者の契約を、そのまま続けてもらえる条件か?

YES収益物件として売る。契約書・入金記録・敷金の額をそろえ、買主に引き継ぐ
NO退去の交渉が必要。更新拒絶の通知の時期と、立退料の見込みを、専門家と先に整理する

※個別の契約内容で変わります。弁護士への相談も検討してください。

賃貸中のビルを売る場合は、買主が気にする書類をそろえておくと、話が早くなります。賃貸借契約書、直近の家賃の入金記録、敷金の一覧、修繕の履歴、固定資産税・都市計画税の納税通知書の5点です。書類が欠けていると、買主は価格を低めに見積もる傾向があるため、早めに集めておいてください。

確認④ 建物の耐震。台東区の助成を使うなら、契約の前に申請する

昭和56年5月31日以前に建築された建物は、旧耐震基準のため、買主が耐震性を気にします。台東区には、住宅以外の非木造建築物を対象にした耐震診断の助成があり、診断費用の10分の8(上限20万円)が助成されます。対象は、台東区内の昭和56年5月31日以前の建物で、個人または中小企業が申請できます。

大通りに面したビルは、東京都が定める緊急輸送道路の沿道建築物にあたる場合があります。台東区の案内には、浅草通り、言問通り、不忍通り、中央通り、明治通りなどが、一般緊急輸送道路として挙げられています。この場合は、診断費用の9/10(上限400万円)などの別の助成があり、診断・設計の完了と改修工事の着手は、令和13年3月31日までと案内されています。

耐震診断助成の順番

  1. 事前相談台東区の建築課(構造防災担当)に相談する
  2. 現地調査区の職員が、建物の外観と内部を確認する
  3. 助成承認申請して、承認の通知を受ける
  4. 診断の実施承認のあとに、設計事務所などへ依頼する
  5. 報告・交付完了を報告し、助成金の交付を受ける

※承認の前に診断を実施すると、助成の対象外になります。

診断を受けた結果、耐震性が足りないと分かると、売却の価格に影響する場合があります。診断を受ける前に、売ると決めているなら、診断の費用と改修の費用を、価格に反映できるかを不動産会社に確認してください。助成の締切や予算は年度ごとに変わるため、区の最新のページで確認するのが確実です。

確認⑤ 土地の条件。間口と道路で、建て替えの可否と価格が決まる

ペンシルビルの土地は、間口が狭いことが多く、建て替えられるかどうかが、価格の大きな分かれ目になります。接道義務(建物を建てる土地が、幅4m以上の道路に2m以上接していなければならないルール)を満たしているか、前面の道路が建築基準法上の道路かを、役所で確かめてください。

前面の道路が幅4m未満の場合は、道路の中心から2mまで敷地を後退させる(セットバック)必要があり、建て替え後の面積が減ります。防火地域や準防火地域では、耐火建築物などの構造の制限もあります。地域ごとの規制は、一軒ごとに役所で確認が必要です。

再建築できないと分かった場合は、収益物件として売る、土地を隣地に売る、買取業者に現状のまま売るなど、売り先の選び方で結果が変わります。再建築不可の売却は、別のコラムで価格の目安と手取りの計算例をまとめています。

台東区のペンシルビルの相続は、状況の整理からご相談ください
MAIVERSEは中央区東日本橋に事務所を構え、中央区・墨田区・江戸川区・台東区・江東区の城東エリアに特化した買取会社です。宅地建物取引士が直接ご相談に対応し、弁護士・司法書士・税理士とも連携しています。税理士と連携して、売る時期と税金の関係を整理しながら、売却の進め方をご説明します。

台東区のペンシルビルを相続したら、10か月のあいだに確かめたい5つのこと

相続税の申告期限(相続開始から10か月)までに、次の5点を確かめておくと、売るか持つかの判断がしやすくなります。

  • 相続人と相続登記の見通しを確かめ、遺産分割協議の方針を決めた
  • 小規模宅地等の特例と、売却の時期の関係を、税理士に試算してもらった
  • 賃貸借契約書、入金記録、敷金の額をそろえ、テナントの状況を把握した
  • 建築時期を確かめ、旧耐震なら、台東区の耐震診断の助成を事前に確認した
  • 前面道路の種別と、間口・接道の状況を、役所で確かめた

家族の状況から相続トラブルになりやすい点を洗い出したい場合は相続トラブルのリスク診断を、手続きの全体像は相続の流れのページをご覧ください。個別の相談は、相続の無料相談会で受け付けています。台東区の上野・谷中・根岸の相談は、上野・谷中・根岸エリアのページからどうぞ。

参考資料(2026年10月確認)

よくある質問

Qペンシルビルを相続して、すぐ売ると相続税は増えますか?
A貸付事業用宅地等の小規模宅地等の特例は、相続税の申告期限まで貸付と所有を続けることが要件のため、申告期限前に売ると特例が使えず、相続税が増える場合があります。売却の時期は、税理士に試算してもらってから決めてください。
Q1階だけがテナントで、上の階に親が住んでいました。空き家の特例は使えますか?
A国税庁の空き家特例は、相続の時から売却の時まで、事業・貸付け・居住のいずれにも使われていないことが要件です。店舗や賃貸の部分があると、対象外になるのが原則です。個別の可否は、税理士や税務署に確認してください。
Qテナントが家賃を滞納している状態でも売れますか?
A売却はできますが、滞納の額と期間は、買主に正確に伝える必要があります。賃貸借契約書、督促の記録、敷金の額をまとめておくと、価格の交渉が進みやすくなります。滞納の解消を求めるかどうかは、弁護士に相談してください。
Q耐震診断の助成は、診断を受けたあとでも申請できますか?
A台東区の助成は、診断などを実施する前の申請が必要で、事前の申請をせずに実施した診断は対象になりません。診断の依頼を決める前に、区の建築課(構造防災担当)に事前相談をしてください。
Q相続人が兄弟で、売りたい人と持ちたい人に分かれています。どうすればよいですか?
A全員の合意がないと、売却の契約はできません。賃料収入の分け方や、修繕費の負担を数字で示すと、話し合いが進みやすくなります。折り合いがつかない場合は、共有のまま持つ、一人が取得して代償金を払うなどの方法があり、専門家に整理を頼むのが現実的です。

監修

三好 舞代表取締役/宅地建物取引士

株式会社MAIVERSE代表取締役。宅地建物取引士。中央区・墨田区・江戸川区・台東区・江東区の城東エリアで空き家・訳アリ物件の買取に携わり、再建築不可・借地権・相続空き家などのご相談に直接対応している。弁護士・司法書士・税理士と連携し、相続不動産の売却をワンストップで支援。