借地上の建物が未登記でも売れる?登記の手順と売却の注意点

借地上の建物が未登記でも売れる?登記の手順と売却の注意点

この記事の要点

  • 借地上の建物が未登記でも売ることはできるが、買主への名義変更や借地権の主張には登記が必要になる
  • 借地権を第三者に主張するには、建物の表題登記だけでなく、所有権の登記(保存登記)まで済ませる必要がある
  • 新築した建物は、所有権を取得してから1か月以内に表題登記を申請する義務があり、怠ると10万円以下の過料の対象になる
  • 借地権を売るには、地主の承諾が必要になることが多く、承諾が得られないときは裁判所の許可を求める手続きがある

こんな方に読んでほしい記事です

  • 借地の上に建つ家を相続したが、建物の登記がされているのか分からない
  • 「未登記だと売れない」と言われたが、本当に売れないのか知りたい
  • 登記をするなら何から始めて、地主の承諾はいつ取ればよいのか順番を知りたい

借地の上の建物が未登記でも、売ることそのものはできます。ただし、買主への名義変更や、借地権を第三者に主張する場面では登記が必要になるため、多くの場合は売る前に登記を整えることになります。登記の種類は2つあり、表題登記だけでは足りず、所有権の登記(保存登記)まで済ませてはじめて、借地権を主張する土台が整います。

この記事では、登記の手順を順番に並べ、地主の承諾と費用の考え方、売り先ごとの違いまでを整理します。借地権の売却と承諾料の詳しい話は借地権の売却と地主の承諾のコラム、相続した借地権は借地権の相続のコラムで書いています。

売る前の5ステップ
図解:売る前の5ステップタップで拡大

未登記の建物は、そもそも売れるのか

建物の登記には2種類あります。1つは、建物の所在や構造、床面積を記録する表題登記(表示に関する登記)で、もう1つは、持ち主が誰かを記録する所有権の登記(保存登記)です。未登記とは、このどちらか、または両方がされていない状態を指します。

未登記のままでも、売買契約を結ぶことはできます。しかし、買主が自分の名義にするには、先に売主の名義で登記を整える必要があります。住宅ローンを使う買主は、登記のない建物を担保にできないため、融資を受けられません。買主が現金で買える人に限られるうえ、買取業者は登記の費用を見込んで価格を下げる傾向があります。

新築した建物の持ち主は、所有権を取得してから1か月以内に、表題登記を申請しなければなりません(不動産登記法第47条)。怠ると、10万円以下の過料の対象になります。長く未登記のままの家は、建てたときにこの手続きをしなかった、または増築部分だけ登記していない、というケースが目立ちます。

借地権を守るには、どの登記が必要か

借地権は、地主との契約で土地を借りる権利です。借地借家法第10条により、借地人が自分名義で登記された建物を土地の上に持っていれば、借地権の登記がなくても、第三者に借地権を主張できます(対抗力)。ここで言う「登記された建物」は、所有権の登記をした建物を指します。

表題登記だけでは、借地権の対抗力は得られないとされています。たとえば、土地が地主から別の人に売られたとき、新しい地主に「この土地を借りている」と主張できるかどうかが変わります。建物が未登記の状態で土地の持ち主が変わると、借地権を守る手段が弱くなる恐れがあります。

登記の種類と効力

表題登記 所有権の登記
記録する内容 建物の所在・構造・面積 持ち主の名義
担当 土地家屋調査士 司法書士
借地権の対抗力 得られない 得られる

※一般的な整理です。個別の事情は専門家に確認してください。

未登記の建物を売るまでの手順

実際の順番は、建物の状態や相続の有無で変わりますが、一般的な流れは次のとおりです。地主の承諾は、売る相手が決まる前に打診しておくと、あとで慌てずに済みます。

未登記建物を売る手順

  1. 現況を確かめる法務局で登記の有無を調べ、借地契約書と固定資産税の通知を探す
  2. 表題登記土地家屋調査士が現地を調べ、建物の図面を作って申請する
  3. 所有権の保存登記司法書士が、持ち主の名義で登記する(相続の場合は相続人の名義)
  4. 地主に打診する売る意向を伝え、承諾の条件と承諾料を確かめる
  5. 売り先を決める買取・仲介・地主への売却を、手取りで並べて比べる

ステップ1:現況の確認

まず、法務局で建物の登記事項証明書を取ります。登記がないときは「該当なし」となります。その後、借地契約書、地代の領収書、固定資産税の納税通知書を探してください。固定資産税は登記がなくても建物が実際に建っていれば課税されるため、通知書があっても登記されているとは限りません。

ステップ2・3:表題登記と保存登記

表題登記は、土地家屋調査士に依頼します。現地で建物の大きさを測り、建物図面と各階平面図を作って申請する流れです。建築確認の書類や工事の請負契約書、固定資産税の評価証明書が、建てた時期や持ち主を示す資料として役立ちます。書類が残っていない古い家でも、調査士が状況を見て申請できる場合があります。

続いて、司法書士が所有権の保存登記を行います。登録免許税(登記の国税)は、原則として固定資産税評価額の0.4%です。相続した家であれば、亡くなった方が持ち主として登記されていないため、相続人の名義で登記を整えることになります。費用は事務所ごとに違うため、見積りを取って比べてください。

地主の承諾は、いつ・どう取るか

借地の建物を売ると、借地権も一緒に買主へ移ります。借地権を他人に譲るには、地主の承諾が必要になるのが原則で、承諾を得ずに売ると、地主に契約を解除される恐れがあります。承諾は、書面で残すのが安全です。

承諾の際、借地人が地主に承諾料を支払うのが慣行です。法律で決まった金額はなく、借地権の価格の10%前後と言われることがありますが、地域や契約の内容で大きく変わります。次は、仮の数字で置いた考え方の例です。

承諾料の考え方(仮)

借地権の価格1,500万円
承諾料の例(10%)150万円

※仮の数字です。実際の金額は地主との話し合いで決まります。

地主が承諾しない場合は、借地借家法第19条に、借地人が裁判所に申し立て、承諾に代わる許可を得る手続き(借地非訟)が定められています。ただし、時間と費用がかかるため、まずは話し合いで進めるのが現実的です。地主に建物と借地権を買い取ってもらう、地主の持つ底地と借地権を同時に売る、といった別の出口も比べられます。

借地契約書が見つからない場合も珍しくありません。その場合は、地代の領収書や振込の記録、更新のときの書類が、契約の内容を示す手がかりになります。契約の期間、更新料の定め、建物の増改築や譲渡に承諾が必要かどうかといった条項は、地主に契約書の写しを見せてもらえるか尋ねる方法もあります。地代を滞納していると、承諾の交渉が進みにくくなるため、売る話を切り出す前に、支払いの状況を整理しておくことをおすすめします。

未登記のまま地主に承諾を求めるときの注意
建物が未登記だと、地主は誰が借地人なのか確認しにくく、話が進みにくくなります。登記を整えるのと並行して、借地契約書の名義や地代の支払い名義を確認し、相続の場合は誰が借地人を引き継ぐのかを先に決めておいてください。

相続した借地の建物が未登記だったとき、起きやすいこと

借地の家は、先代が自分で建てた、または古くに購入したまま、名義の整理がされていないことがあります。亡くなった方の名義の登記すらない場合、売るには、まず建物を登記し、そのうえで誰が相続するかを決めて、相続人の名義にする流れになります。順番を飛ばして売買契約を結んでしまうと、引渡しの直前に登記ができず、契約が止まる恐れがあります。

地代の支払い名義が亡くなった方のままになっていることも、よくある状況です。地主は、借地人が誰に変わったのかを、領収書や名義書換えの手続きで把握しています。相続人が複数いるときは、誰が借地人を引き継ぐのかを先に決め、地主へ伝えておくと、承諾の話がスムーズになります。

増築した部分だけが未登記の場合もあります。たとえば、昔の離れや庭先の部屋を足したのに、登記上の面積が増えていないケースです。この場合は、建物の表示の変更を調査士に頼むことになります。現況と登記の食い違いは、買主の融資審査や、買取価格の査定のときに指摘されやすい点です。

売り先ごとの違い(登記が整っていない場合)

登記が整っているかどうかで、売り先の選び方が変わります。買主が住宅ローンを使えない状況では、現金で買える人や買取業者が中心になります。

  • 01登記を整えてから仲介時間と費用がかかるが、買主の選択肢が広がる。借地権付きの建物は買い手が限られる点は変わらない
  • 02買取業者に現状で売る登記の費用を誰が負担するかを契約前に取り決める。価格は低めになりやすいが、手間は少ない
  • 03地主に買ってもらう承諾の問題がなくなる。条件が合えば、話が早く進むことがある

どの方法でも、登記は誰かが整えなければならない手続きです。売主が先に整えるのか、買主が整えて価格に反映するのかで、手元に残る金額が変わります。複数の見積りを並べて比べるのが近道です。

借地・未登記の物件も、状況の整理からご相談ください
MAIVERSEは中央区東日本橋に事務所を構え、中央区・墨田区・江戸川区・台東区・江東区の城東エリアに特化した買取会社です。宅地建物取引士が直接ご相談に対応し、弁護士・司法書士・税理士とも連携しています。相続した空き家の売却では、遺産分割協議から相続登記・売却完了までの手続き費用を当社が全額負担しています。

借地の未登記建物を売る前に、まず確認したい3つのこと

手順が多く見えても、最初にやることは3つです。次の確認をすれば、どの順番で動くかがはっきりします。

  • 法務局で、建物の登記の有無(表題登記と所有権の登記)を調べた
  • 借地契約書と、地代の支払い名義を確認し、地主の連絡先をつかんだ
  • 相続した場合は、誰が借地人を引き継ぐのかを、相続人の間で決めた

相続が絡むときは、先に相続の流れのページで全体を確認してください。相続登記を放置するリスクは相続登記を放置するリスクのページで案内しています。家族の状況からトラブルになりやすい点を洗い出したい場合は、相続トラブルのリスク診断をご利用ください。借地や権利関係の相談は訳アリ物件の無料相談会で受け付けています。

参考資料(2026年10月確認)

よくある質問

Q固定資産税の通知が届いていれば、建物は登記されているということですか?
Aいいえ、別の話です。固定資産税は登記がなくても、建物が実際に建っていれば課税されます。法務局で登記事項証明書を取り、建物が登記されているかを確かめてください。
Q借地の建物が、亡くなった親の名義のままか未登記か分かりません。どこで調べますか?
A法務局で、建物の所在地を伝えて登記の有無を調べられます。未登記なら、土地家屋調査士に調査と表題登記を依頼するのが一般的です。固定資産税の納税通知書に載った所有者名も、手がかりになります。
Q地主の承諾料は、どのくらいかかりますか?
A法律で決まった金額はなく、借地権の価格の10%前後と言われることがあります。借地権の価格が1,500万円なら150万円程度という計算ですが、地域や契約の内容で大きく変わるため、あくまで一つの目安です。
Q地主が承諾してくれない場合は、どうなりますか?
A借地借家法には、地主が承諾しないときに、借地人が裁判所に申し立てて、承諾に代わる許可を求める手続きがあります。ただし時間と費用がかかるため、弁護士に相談しながら、地主への売却や底地の同時売却など別の道も比べてください。
Q未登記のまま、現状で買い取ってくれる業者はありますか?
A買取業者によって対応は分かれます。未登記のまま買う場合でも、引渡しまでに誰が費用を出して登記を済ませるかを、契約の前に取り決める必要があります。

監修

三好 舞代表取締役/宅地建物取引士

株式会社MAIVERSE代表取締役。宅地建物取引士。中央区・墨田区・江戸川区・台東区・江東区の城東エリアで空き家・訳アリ物件の買取に携わり、再建築不可・借地権・相続空き家などのご相談に直接対応している。弁護士・司法書士・税理士と連携し、相続不動産の売却をワンストップで支援。